第21コーラス目「後悔!」その1
「Nコン!」第21話です。
煌輝真湖は、小学校を卒業したばかりの中学1年生。従兄妹が果たせなかった、合唱部でNコンの全国大会に出場するという夢を果たすべく、合唱部に入部を希望していた。ところが、合唱部は2年前に廃部になっており、指導する先生もすでに他界していた。様々な障害がありつつも、幼なじみの合歓乃や先輩達の協力もあり、再び合唱部を創ることができた。
全国大会常連校の練習を見学し、衝撃を受けた真湖たちだが、なんとか練習も開始し、Nコン出場のためにGWに合宿を実施することになった。
合唱部に賭ける、青春ドラマです!
<主な登場人物>
煌輝真湖:本編の主人公
中学1年生。従兄弟のお兄さん(煌輝翔平)に憧れて合唱部員を目指して中学に入学する。好奇心旺盛。黒髪長髪ポニーテール。
合歓乃愛琉
真湖の親友。真湖と一緒に合唱部に入部。
紺野灯
真湖の幼馴染み。長髪黒髪の美人。真湖と一緒に合唱部に入部。
剣藤阿修羅
真湖の幼馴染みで家が隣同士。野球部。
塩利己翔
真湖のクラスメート。札幌から引っ越してきた。イタリア人とのハーフ。母子家庭。真湖と一緒に合唱部に入部。
雅洋平
合唱部顧問。西光中用務員。
現瞳空
中学3年生。廃部前の合唱部にいたことがある。真湖に合唱部創部を諦めさせようとしたが、逆に創部に力を貸すことに。合唱部部長に就任。
栗木蒼斗
現と同じく元合唱部。現瞳空と付き合っている。合唱部副部長。
神宮知毅
キザな3年生。去年もNコン参加。合唱部に入部。
如月友夏
外園諒子
保家寿
射原 悠斗・悠耶
中学2年生の合唱部員。
小林一馬
美馬義人
同じく新歓で入部を決める。真湖たちのクラスメート。
吉祥寺 櫻
御前崎愛
同じく新歓で入部を決める。特別支援学級。
小島洋子
佐々木緑
伊藤玲
中島次郎
田中猛
中学1年生の合唱部員。新歓で入部を決める。
煌輝翔平
真湖の従兄弟で、大学1年生。札幌の大学(北大)へ進学。真湖に合唱部を薦めた張本人。
雅が校長室を出て行った後、教頭が少し目を丸くして言った。
「しかし、校長も大胆な決断をされましたね。合宿とは」
「ボクはねネ、後悔してるんだよネ」
「何をですか?」
教頭は首を捻った。
「合唱部を一年でも、廃部にしてしまったことだネ」
「でも、それは、校長のせいじゃありませんよね」
校長と教頭として彼らがこの学校に赴任してきたのは2年前。前身の合唱部が最後の活動をした年だ。翌年、合唱部の入部希望者が集まらずに廃部になった。確かに、教頭の言う通りで、希望者がいないというのは、校長という立場では如何ともしがたい事態ではあった。しかし、今を思えば何かできたのではないかと悔やむこともある。
「むしろ、せめてものと思って、雅くんを呼び寄せておいてよかったじゃないですか」
そう、実は、雅を呼び寄せたのは校長その人だった。
「あの事件の後、宛なくしていたのですから...」
「けど、それでさえ、良かったのかと迷うこともあるよネ。かえって、彼に重荷を背負わせてしまったようにも思えるしネ」
「いえ、それはないと思いますよ。彼が初めてここに来た時の表情を、わたしはよく覚えてます。まるで捨て犬みたいに生きる気力のない目をしていた。今はどうですか。イキイキとしてますよ」
教頭は、初めて雅に会った時のことを思い出した。流れ流れて、故郷に戻ってきた彼は、何もかもをなくしたようだった。音楽教員にという校長の申し出を固辞して、用務員に成り下がった。それでも、ここ1年の間にようやく普通の表情に戻ったところだった。多分、去年だったら、この話は受けなかっただろう。そういう意味では、今年が最大のチャンスだったと言えなくもない。
「ならいいんだけどネ」
「合唱部の伝統をわたしたちの手で潰すには惜しいです」
「そう、だからこそ、1年というブランクが惜しいと、後悔するのですよネ。もし、廃部にせずに、なんらかの形で存続していれば、もう少しなんとかなったんじゃなかったかと。これだと、0からの出発、いや、むしろ、マイナスからの出発になってしまったネ。それを彼らに強いることになってしまったのだからネ」
そう言って、校長は天井を仰いだ。
「それでも、Nコンには連続出場してます。ないよりはマシでしょう」
「あれも、OBの子の提案だったよネ」
「煌輝翔平。煌輝真湖の従兄妹らしいです」
「そうだったネ」
「それも、めぐり合わせですな」
何かにつけて心配性な校長と、若干、世の中を達観している教頭。この組み合わせでいろいろなことを乗り越えてきた二人だった。学生の時分から仲の良い二人だったが、何故か赴任先が被ることが多く、遂には校長と教頭と相成った。これも不思議な縁である。そして、定年まであと2年となった今年に合唱部の大きな分岐点に関わることになった。これも何かのめぐり合わせと言えるだろう。
「三越先生のお導きかも知れないネ」
長年、西光中学合唱部を指導してくれていた、三越の顔を思い出す。
「そうですなあ」
「めぐり合わせと言えば、知ってたかい?これ」
そう言って、校長は合唱部員の名簿を差し出した。校長の指は、合歓乃愛琉の名前を指していた。
「合歓って、まさか?」
「多分、そうだと思うネ」
「それは、奇遇。本人は知ってるのでしょうかね?」
「どうでしょうかネ?祖父のことを知ってるかどうかはわかりませんが、何かやってくれそうな気がするんですよネ。何せ、あの方の家系なのですから」
「伝説の先輩が...そうなのですか...」
合歓家と言えば、大昔、彼らも幼少の頃は、石見沢の大地主として有名だった。今はほとんどが開発されてしまっているが、元々駅裏地域はほとんどが合歓家のものだったのは、彼らの世代では有名な話だった。
「何か起こるかも知れませんね」
「だといいですネ」
春うららな日差しを浴びながら、二人はソファから立ち上がって、校長室の窓から外を眺めた。




