第19コーラス目「憂鬱!」その6
「Nコン!」第19話です。
※(2017/8/6)前エピソードを挿入したため、その5をその6に変更いたしました。内容はほぼ以前のその5と変わりません。その5をお読みになってから、こちらをお読みください。
煌輝真湖きらめき まこは、小学校を卒業したばかりの中学1年生。従兄妹が果たせなかった、合唱部でNコンの全国大会に出場するという夢を果たすべく、合唱部に入部を希望していた。ところが、合唱部は2年前に廃部になっており、指導する先生もすでに他界していた。様々な障害がありつつも、幼なじみの乃愛琉や先輩達の協力もあり、再び合唱部を創ることができた。
いよいよ全国を目指すための第一歩として、全国大会常連校である札幌の新栄中学を見学し、衝撃を受けた西光中学合唱部の面々。
そして、その帰り道……。
合唱部に賭ける、青春ドラマです!
翌朝。
珍しく、阿修羅が真湖を迎えに来た。
「どしたの?」
「いや、別に」
と誤魔化した阿修羅だが、実は昨日の夜、乃愛琉から真湖に内緒でと連絡があり、朝迎えに行ってやってほしいと言われてたのだ。昨日の今日で乃愛琉はちょっと心配だったのだが、ここは阿修羅の方が良いだろうとの乃愛琉の機転からだった。阿修羅は何も言わなかったが、真湖には何か感じるものがあった。
もちろん、先生たちの記憶を読み取ったことは阿修羅には内緒だった。
「で、どうだった、翔とのデート?」
「デートじゃないし。遠征だし。見学だし」
「はいはい、遠征ね。どうだった、全国レベルの見学結果は?」
「うん、全然上手かった」
「だろうなぁ」
阿修羅は鞄を背負いながら空を見上げた。自分も果てしない上の上を見てはいるが、多分そこに届くことはないだろう。
「だから、言ったじゃん、全国って甘くねぇぞって。ホントお前って、世の中舐めてるからな」
と、散々な言い方をしても、真湖からの反論がなかった。いつもの手応えがない。
「どした? よっぽどショックだったんか?」
「ん。まあ、たしかに、あっしゅ言う通り。いかにあたしが色んなこと知らないかってのは分かったし」
どうやら図星だったらしい。珍しく殊勝な言い方をする真湖が阿修羅には意外だった。なるほど乃愛琉が心配になった理由がようやく分かった。
「まあさ、まだ合唱部も始まったばっかだし、コンクールのある夏までは時間あるし、あとは頑張って練習するしかねーんじゃね?」
「だよねー」
ただ上の空に相槌をうつ真湖。歩きながらぽんぽんと鞄を蹴りながらのんびりを登校する。小学生からずっと一緒だったが、こんなしおらしい真湖は初めて見た。そう見てみると、真湖もまんざらでもなく。いつもは走り回ってばかりいる印象が強くて、あまり落ちついたところを見たことがなかったが、クラスでも、顔立ちは良い方なんだよな、などと思いつつ。
しかし、一瞬で我に返り、首を振って、
「あー、何考えてるんだ、俺」
真湖に聞こえないように呟く。
しかし、エンリコ翔が真湖に告白した一件も思い出したり、クラスの小林が真湖のことを気にしているらしいなんていう風の噂もあったりで、どうしても気になってしまうのだ。
「あっしゅ、あのさ。嫉妬ってしたことある?」
「はぁ!? なんだ、急に」
まるで心の中を読まれたようなタイミングで問われ、阿修羅の心臓が飛び出たようになった。
「ねぇよ、そんなの。ある訳ないだろ?」
「だよねー。あたしもわかんないんだー」
「おまえ、何言ってんだ、訳わかんねー」
「わかんないよね。ホント、大人って難しいわぁ」
「おとな? はぁ?」
いよいよ真湖が何を言いたいのか分からなくなってきたところ、前を歩いていた真湖が急に振り向いてぶつかりそうになった。
「!?」
「あんまり考えるのヤメタ! 悩んだって、前に進まないもんね!」
かろうじて衝突を回避した阿修羅は面食らった。真湖はいつもの表情に戻っていた。
「ようし! 今日から練習頑張るぞ!」
真湖は阿修羅の心の裡を知ってか知らずか、必要以上に元気な声を出して、エイエイオーした。
「まあ、いいんじゃね」
阿修羅は一つため息をついてから、真湖に頷いた。
「残り走っていこーぜー!」
と言ったかと思うと、真湖は一人さっさと走り出してしまった。
「お、おう」
阿修羅は後を追いながら、やっぱり、真湖は元気な方がいいと思った。




