第19コーラス目「憂鬱!」その5
「Nコン!」第19話です。
※(2017/8/6)その5を変更いたしました。前エピソードを挿入したため、以前のその5がその6に変更になりました。大変失礼いたしましたが、こちらを読みになってからその6をお読みください。
煌輝真湖は、小学校を卒業したばかりの中学1年生。従兄妹が果たせなかった、合唱部でNコンの全国大会に出場するという夢を果たすべく、合唱部に入部を希望していた。ところが、合唱部は2年前に廃部になっており、指導する先生もすでに他界していた。様々な障害がありつつも、幼なじみの乃愛琉や先輩達の協力もあり、再び合唱部を創ることができた。
いよいよ全国を目指すための第一歩として、全国大会常連校である札幌の新栄中学を見学し、衝撃を受けた西光中学合唱部の面々。
そして、その帰り道……。
合唱部に賭ける、青春ドラマです!
札幌遠征から帰宅した夜、真湖は夕食もそこそこに自室に入った。
たった一日だったのに、なんだか色々なことが起こって、頭の中がいっぱいいっぱいだった。
「疲れたー」
部屋に入るなり、ベッドになだれ込んだ。けれど、頭ははっきりしていて、全く眠い感じはしない。ただ、頭の奥底でジンジンするような、痺れるような感覚が続いていた。帰りの電車内でウトウトしていたのとは正反対だ。
「何だったんだろ、あれ...」
乃愛琉に話た通り、何故か今日は三人もの人の心の中を読んだ。読んだと言っても、今回は皆イメージみたいなものだった。現の心を読んだ時のように、具体的な人の名前や顔を思い出す心の中を読むのとは違っていた。人の気持ちや、過去の漠然とした内容だと、とても抽象的なイメージにしかならないのだ。しかも、三人の持つイメージが混ざりあってしまっていたため、もう真湖には誰が何を考えていたのかを区別することができなくなっていて、さっきさっき気絶していたときに見たイメージがそれだった。
ただ、新栄中のあの一年生のイメージはドス黒く、多分、言っていた言葉と気持ちが違っていたのだろう。つまり彼女は嘘をついていたことになる。
雅先生のイメージも何か奥底に秘めた思いがあったように見えた。過去に新栄中の顧問や、あの先生達と何かがあったのかも知れない。だとすれば、その過去を押して無理してでも、自分たちをあそこに連れて行ってくれたのかも知れない。
あと、エンリコ翔。札幌に残してきた記憶。「パパのこととか思い出しちゃう」と言っていた。その気持ちに繋がるようなそんな寂しい気持ち、だったような気はする。
乃愛琉にも伝えなかったのは、皆それぞれに持った過去であり、あまり触れてほしくはないと思われたからでもあったが、彼らの複雑な気持ちの塊をなかなか言葉にすることができなかったという理由もある。
「なんかなー」
なかなか寝付けないというのもあったが、心の中のモヤモヤが増えていくことに、何かしらの不安が募っていった。
おもむろに、真湖はベッドから立ち上がり、カーテンを開け、窓越しに隣の家を覗いた。阿修羅の部屋は電気がついていなかった。もうすでに寝たのか、それともまだ居間にいるのか、風呂にでも入っているのか。多分、こんな時に話したい相手は阿修羅なのだろう。もちろん、詳しい話はできないけれど、言いたいこと言って、気分を晴らせるとすれば彼しかいないのだった。
五分位、そのまま待ってみたけれど、電気がつく気配はなかった。真湖は諦めて、またベッドに潜った。
やっぱり、寝付けないなと思いつつも、やはり疲れたのだろうか、いつの間にかすーすーと寝息を立てて、深い眠りについた。




