第18コーラス目「衝撃!」その6
「Nコン!」第18話最終パートです。
煌輝真湖は、小学校を卒業したばかりの中学1年生。従兄妹が果たせなかった、合唱部でNコンの全国大会に出場するという夢を果たすべく、合唱部に入部を希望していた。ところが、合唱部は2年前に廃部になっており、指導する先生もすでに他界していた。
前途多難の船出にもめげずに、色々障害がありつつも、現先輩の協力もあり、なんとか新入部員も集まり、顧問も決まった。
ようやく、夢への第一歩を踏み出した真湖であった。
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飛び出してきた女の子は、真湖たちと同じくらいの年頃だろうか。ドレスのようなひらひらの洋服を着ている。一見すると、ゴスロリコスプレに見えなくもない。
「ちーちゃん。久しぶり」
神宮は飛び出して来たその子をそのままだっこして受け止めた。まるでそれはお姫様を迎える王子様の様で。乃愛琉はその様子を見て面食らった。
「あ、皆さん、紹介します。ボクの従兄妹で、神宮千衣子っていいます」
「神宮千衣子です、よろしくー」
さすがに札幌の子。垢抜けた感じの子だった。神宮にだっこされたまま、満面の笑顔で皆に挨拶した。
「お兄様、新栄中見学されたんですって?」
「行ってきたよ。うん、上手かった」
「へえ、そうなんだぁ。実はわたしもね、合唱部入ったのよ?」
「へえ、女子校にも合唱部なんてあるんだ?」
「ええ、中高合同ですけどね。中等部は今年からNコンも出ることにしたのよ」
千衣子はそう言って、真湖達に視線を送った。真湖と乃愛琉はきょとんとした。
「だから、お兄様も頑張って北海道ブロックに出てきてくださいませ」
「へえ。札幌地区で金賞取るつもりかい?」
「もちろん」
千衣子は自信満々の表情でそう答えた。
「まあ、いいや。皆さん、どうぞ、お入りください。自分の家だと思って寛いで」
奥の部屋に通されると、中はVIPルームらしく、シャンデリアに飾られたヨーロッパ風の小部屋だった。ロココ調の内装と家具が千衣子のドレスを違和感なくさせていた。むしろ、制服の真湖達の方が浮いていた。
自分の家だと思うにはかなり無理があるなと真湖も乃愛琉も思った。
「どうぞ」
しばらくして、給仕のスタッフが刺繍の入ったテーブルクロスの上に重箱に入ったお弁当を持ってきた。中を開くと、洋食のセットだったが、気を遣ってなのか、お箸で食べられるメニューだった。真湖はほっとため息をついて安心した。
「みなさん、知毅お兄様をよろしくお願いしますね」
会食の間、千衣子は何度もそう言った。その度に、真湖と乃愛琉への牽制にも似た目線を送り続けていた。
会食は1時間程度で終わった。部屋の雰囲気に圧倒された一同は最初は無口で過ごしたが、次第に慣れてきたのか、神宮と千衣子の会話に混じっていった。千衣子が真湖たちと同じ中一であること、札幌でもお嬢様校と名高い中高一貫の女子校に通っていること、千衣子も生まれは石見沢であったが、両親の仕事の都合で札幌に移り住んだことなどを聞いた。
「では、次にお会いするのは、Nコンの会場ですわね」
真湖たち合唱部の一同にそう言って、千衣子は最後に神宮に向かって、
「お兄様は次はいつ札幌にいらしていただけるの?」
「どうかなぁ。ボクも今年受験生だからね。去年までみたいに、しょっちゅうって訳にいかないかも」
「千衣子寂しいですわ。じゃあ、今度わたしが石見沢に遊びに参りますわ!」
千衣子は手をぽむと叩いて、そう言った。どうやらNコン前にどこかで会う予感をもった真湖であった。
一行はそのままJRで石見沢に戻る。石見沢駅に着いた頃にはすでに薄暮の時間だった。
「じゃあ、今日はお疲れ様。また明日」
雅の号令でそこで解散した。
「あ、あれ?」
雅、現達と別れた直後、真湖が変な声を上げた。乃愛琉と翔が真湖の指した方向を見ると、見かけたことのある顔が。
その男子生徒三人は、間違いなく公園で真湖に因縁をつけてきた、あの三人だった。特徴のある顔立ちなので、乃愛琉も翔もはっきりと判別できた。
「あ、あの人たち……。でも、変じゃない?あの制服、うちの中学のじゃないよ。多分……高校の制服……石農のじゃないかな」
「え? なんで?」
真湖たちは頭を捻った。




