第18コーラス目「衝撃!」その2
「Nコン!」第18話です。
煌輝真湖は、小学校を卒業したばかりの中学1年生。従兄妹が果たせなかった、合唱部でNコンの全国大会に出場するという夢を果たすべく、合唱部に入部を希望していた。ところが、合唱部は2年前に廃部になっており、指導する先生もすでに他界していた。
前途多難の船出にもめげずに、色々障害がありつつも、現先輩の協力もあり、なんとか新入部員も集まり、顧問も決まった。
ようやく、夢への第一歩を踏み出した真湖であった。
皆様の感想などお待ちしております!
「お待たせ」
しばらくして、雅が戻ってきた。
「見学オッケー。但し、そんなに長い時間じゃないから、しっかり聴いておくんだよ」
「はい!」
雅を先頭に音楽室に入ると、すでに合唱部の生徒たちはきっちりと整列していた。35、6人はいるだろうか。ようやく20人を越えたばかりの西光中とは大差がある。
「石見沢西光中の合唱部の皆さんです。今日は私たちの練習を見学されたいそうです。はい、挨拶」
指導の先生がそう言うと、
「よろしくお願いします」
と、一同に揃って挨拶した。こんな挨拶でさえ、息が揃っている。
「あ、こちらこそ……よろしくお願いします」
対して、真湖たちはてんでばらばらの挨拶で、さらに大きな差を見せつけられた。
「では、1曲やりましょうか」
すでに練習曲は決まっているらしく、指導教師がタクトを振ると、伴奏者がピアノを弾き始めた。
真湖たちは、その場で黙って聴き始めた。
曲は数年前にNコンの課題曲になった「虹」。森山直太朗がNコンのために書き下ろした曲であり、今でも人気の高い合唱曲の一つである。
射原兄弟のどっちかが好きな曲に挙げていたなと、真湖は思い出した。
彼らの合唱は、発声、音程、ハーモニー、どれをとっても素晴らしかった。抑揚、強弱の付け方、感情表現、歌詞に対する思いの深さ。それを聴く者に伝えようとする姿勢。同じ中学生とは思えない。
このままNコンに出ても優勝するのではないかというくらいの完成度だと、現でさえも感じた。テレビやネットを通して聴くのとは全く次元の違う世界。ましてやまだ4月。少なくとも去年主力だった3年生はいない、もしかすると新入生も含まれているかも知れないのにだ。現は完全にノックアウトされていた。
「こんなのに勝てるはずない」
合唱の間に何度この台詞を言おうと思ったか。しかし、雅のおかげでせっかく見学が許されたのに、そんな愚痴をここで言うべきではないと思うのと同時に、やっぱり負けたくはないという気持ちも相まって、への字口は開くことはなかった。
合唱が終わると、真湖たち西光中合唱部全員が一斉に拍手をした。新栄中合唱部はそれに会釈で応える。その姿勢さえ、ほぼ同時に同じ角度に保たれている。
「いやぁ、素晴らしい。さすが常勝校」
雅が賛辞の言葉を述べた。
「お恥ずかしい。まだまだこれからですわ。なんとか来年のコンクール目指してまとめていきたいとこなんですけど」
指揮をしていた担当の指導教師が頭を下げた。その物言いに真湖は何かひっかかった。
「色々と気になる点は多々ありますよ。雅先輩ならお気づきかとは思いますが」
それから、生徒達に気遣うように小さい声で、そっと雅に囁く。
「とんでもない。この時期にこれだけの完成度なら申し分ないですよ」
雅は新栄中の生徒に聞こえるように大仰に言った。
「良いものを聴かせてもらいました。
みなさん、ありがとうございました」
雅は新栄中の生徒に向かって頭を下げた。




