第17コーラス目「逢引!」その3
「Nコン!」第17話です。
煌輝真湖は、小学校を卒業したばかりの中学1年生。従兄妹が果たせなかった、合唱部でNコンの全国大会に出場するという夢を果たすべく、合唱部に入部を希望していた。ところが、合唱部は2年前に廃部になっており、指導する先生もすでに他界していた。
前途多難の船出にもめげずに、色々障害がありつつも、現先輩の協力もあり、なんとか新入部員も集まり、顧問も決まった。
ようやく、夢への第一歩を踏み出した真湖であった。
皆様の感想などお待ちしております!
「じゃあ、今日は解散。お疲れ様でした。
あ、煌輝さんは残って」
廊下から戻って現はすぐに皆に声を掛けた。
「え? あたしですか?」
「ちょっと話があるの」
「はーい」
女子はそのまま準備室で着替えを始める。男子はジャージのまま帰る者もいれば、その場でいきなり着替え始める者もいて、主に如月がきゃーきゃー騒いでいた。
「じゃあ、わたし、先に行ってるね」
乃愛琉が真湖に声を掛ける。翔と一緒にいつもの辻で待ち合わせすることになっている。日曜日のダブルデートの計画を立てなければならない。
「うん、わかったー。追っかけ行くから」
音楽室から部員がいなくなると、現の方から話を始めた。
「煌輝さんって、日曜日何か予定入ってる?」
「日曜日ですか? えっと……午前中にちょっと……」
ダブルデートは昼に終わらせるつもりでいたので、そう答える。あの件については、現は反対だったようなので、詳しく説明することは避けた。
「あ、そうなの。それじゃ仕方ないわね。次の週にでも替えてもらうように言おうかしら……」
「何かあったんですか?」
合唱部の話であればみんなの前で話しするだろうし、自分だけ残された事情だけは聞いてみたかった。
「うん、実はね……」
現は先ほど雅に言われた内容をそのまま伝えた。
「え! 全国レベルの合唱部ですか! 行きたいです、絶対行きたいです!」
「じゃあ、翌週にでも替えてもらう?」
「ちょ、ちょっと待ってください!」
真湖は考え込んだ。これはもしかして、チャンスかも知れない。神宮とのデートをそっちに切り替えてしまえば、一石二鳥ではないか。しかも、同伴者付きとなれば、神宮も滅多なことはできないだろうし。
ただ、問題は現が同行することである。神宮との約束を果たすことがバレてしまう。
「ああん。どうしようかな……」
「もしかして、神宮くんの件?」
現はすぐに察した。さっき神宮と乃愛琉が話をしているのを見て、そんな気はしていたから。
「あ、バレてました?」
「って言うか、合歓さんにも忠告しておこうと思ってたのよね。ちょうど良かったわ。
あの神宮って人ね、ああ見えても3年の中では結構人気あってさ。街中でデートなんてしようものなら、翌日絶対に虐めにあうから、やめときなって言ってあげようと思ってたとこなの」
真湖はさっと血の気が引いた。そんなこととは露知らず、お茶を濁すどころか、やぶ蛇になるところだったのだ。
「本人に直接言うのもなんだから、煌輝さんに伝えるつもりでいたのよ」
「あ、ありがとうございます。すみません」
これを不幸中の幸いという。
「そしたら、神宮くんと日曜日約束したの?」
「はい、そうなんです」
「あなたが言ってた、ダブルデートってことで?」
「はい、そうです」
真湖はすっかり小さくなった。
「もう行き先決めたの? デートの」
「いえ。まだ決めてなくって、神宮先輩にはこちらにお任せしてもらうって」
「あら、そうなの」
現は少し間を空けて、
「じゃあ、札幌に連れて行っちゃう?」
悪戯っ子の顔をした。どうやら、真湖と同じことを考えたようだ。
「い、いいんですか?」
「元々神宮くん連れてきたのわたしだから、責任の一端はわたしにあるわけだし。騙し討ちになっちゃうけど、嘘ではないし、いいんじゃない?」
現の責任。阿修羅もそんなこと言ってたなと思いつつ。
「札幌に連れて行けば、石見沢で目撃されることないし、一石二鳥でしょ?」
現はそう言って、神宮の真似してウインクした。




