第17コーラス目「逢引!」その2
「Nコン!」第17話です。
煌輝真湖は、小学校を卒業したばかりの中学1年生。従兄妹が果たせなかった、合唱部でNコンの全国大会に出場するという夢を果たすべく、合唱部に入部を希望していた。ところが、合唱部は2年前に廃部になっており、指導する先生もすでに他界していた。
前途多難の船出にもめげずに、色々障害がありつつも、現先輩の協力もあり、なんとか新入部員も集まり、顧問も決まった。
ようやく、夢への第一歩を踏み出した真湖であった。
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一方、就任を決めた途端に雅は本気モードに入っていた。最初現の指導には口を挟むことはしなかったが、練習を始終見て、おのおのの特徴を捉えるべく、時々独唱を指示したりしては、メモに何か書いていた。
そして、練習が終わった後、現を廊下に呼び出して、相談を持ちかけた。
「煌輝さんから聞いたんだけど、Nコン全国出場目指すって言ってたけど、君は本気なのかい?」
雅の目が真剣だった。
「あ、いえ……その、本気ではあります。ありますけど、今のメンバーだと……」
「まあ、ほぼ無理だね、今のままだと」
雅はまっすぐだった。
「ですよね」
「ただ、原石はいる。磨けばうまくなる要素はある。そして、どうやって一体感を育むかじゃないかな」
原石も磨かなければただの石ころである。まさに、石ころだらけの合唱部なのが今の現状。
「可能性はありますか?」
「あとは、意識の問題だろうな。今の調子だと、地区大会だって賞をとれるかどうか」
「意識付けですか。そこまでなるとわたしにも分かりません」
「まあ、そこは指導者たる顧問の仕事だからね。……どうしようかな……ちょっと現実を見せた方がいいんじゃないかと思うんだけど」
「現実……ですか?」
現はきょとんとした。
「煌輝さんたちは1年生だから、当然Nコンに出たことないだろ? 他の学校がどれだけ上手いかとか知らないんじゃないか?」
ああ、と現は頷いた。なんとなく雅の言っている意味が分かったような気がした。
「多分、ボクが思うに、この合唱部の要はあの子だと思ってる。もちろん、言い出したのが彼女だっていうのもあるけれど、なんていうのかな、人をぐいぐい引っ張っていこうとする力があるっていうのか」
「わたしも、引っ張られっぱなしですけどね」
現は苦笑しながら同意した。
「要となる子が現実を知らないと、どうしても手を抜くし、高い目標がないと頑張れない」
「高すぎても、ですけど」
「だって、全国目指すんだろ。高くて結構。それで諦めるくらいなら、最初からやらない方がいい」
「先生って、厳しいんですね、見かけによらず」
「そうかい、そんなに頼りなく見えるかい?」
「いえ、失礼しました」
「こう見えても、三越先生の直弟子でね。この学校に来られる前の話だけど」
「ああ、それで……」
三越先生も厳しい人だった。その愛弟子だったということは、それなりに覚悟しておく必要があるのだろう。校長先生もそれを知っていて、雅を合唱部顧問にしたのだろうか。にしても、最初は固辞していたと聞く。教員免許を持ちながら、用務員として就任するなど、不思議な人である。
「ボクの知り合いに、札幌の新栄中学の合唱部顧問がいるんだよ。見学させてもらうくらいはできると思う」
「新栄中って、あの……?」
新栄中は北海道地区優勝の常連校である。合唱部は全国制覇も何度もしている全国トップレベルの実力をもっている。
「いきなり、新栄中ですか。それは確かに高い目標ですね」
全道大会にさえ出たことのない現は、新栄中の合唱を見たことがない。何度かテレビ越しでNコンの発表を見たことがある程度。直接見られるなら自分も見てみたいと思った。
「全国目指すなら、全国レベル見ないと。札幌はここからも近いし。どうだろうか」
「でも、札幌までとなると、保護者が必要ですね」
「もちろんボクが引率するよ。明後日の日曜日とかどうだい? 部長と副部長も一緒に行けるなら」
「また、急ぎですね。わたしは大丈夫ですけど。ひろ……副部長も大丈夫だと思います」
「善は急げっていうじゃないか。煌輝さんには部長から聞いてもらえないかな」
「分かりました」




