第16コーラス目「顧問!」その4
「Nコン!」第16話です。
煌輝真湖は、小学校を卒業したばかりの中学1年生。従兄妹の翔平が果たせなかった、合唱部でNコンの全国大会に出場するという夢を果たすべく、合唱部に入部を希望していた。ところが、合唱部は2年前に廃部になっており、指導する先生もすでに他界していた。
前途多難の船出にもめげずに、色々障害がありつつも、現先輩の協力もあり、校長先生に条件付きながら、合唱部の創部を認められた。
仮部員の先輩達と一所懸命練習の末、新入生歓迎会での発表も終わり、なんとか新入部員をゲット。ようやく合唱部活動開始?と思いきや……?
皆様の感想などお待ちしております!
「あ、あの!」
真湖が大声を上げた。
「合唱好きなんですよね? だから、この前も玄関先で声かけてきて! 新歓見てくれたですよね! そうですよね!?」
真湖は直感でそう言ってみた。新歓の日に玄関先で声を掛けてきた時、『合唱部頑張って』と彼は言った。自分たちが合唱部であることを知っていた。多分新歓の舞台を見ていたのだろう。きっとこの人は合唱が好きなんだ。だから、隠れてあの舞台を見ていたに違いない。
「いや。ボクは、その……素人だから」
合唱が好きということは否定しなかった。やっぱり、あの舞台を見てくれていたんだ。この人は合唱が好きなんだ。そう真湖は確信した。
「お願いします! 顧問になってください!」
真湖はソファから降りて、土下座した。栗花落もそれを見て、慌てて隣で土下座した。
「お願いします」
二人が土下座を始めると、雅はおどおどし始めた。
「いや、ふたりとも、そんな、こと、やめてください。起きてください」
「嫌です! 用務員さんが顧問になってくれるまで、やめません!」
真湖は強情にそう言った。雅は立ち上がって、真湖の腕を掴んで、立ち上げさせようとした。
「起きてください。そうじゃなと、ボクは……」
その瞬間、雅のイメージが真湖に流れ込んだ。
大ホール。
石見沢では見たことないくらいの大ホールだ。
そこには数え切れないほどの大勢の生徒たち。その中に彼はいた。まちまちの制服の生徒達は一斉に同じ曲を奏でていた。何千人という生徒たちが同じ歌を歌っているのだ。何千という声が渾然一体となって大ホールに渦巻く。
それは以前、従兄弟の翔平から受けたイメージにそっくりだった。
そして、その曲は……。
腕を掴まれたまま、真湖はされるがままに立ち上がった。
「あそこに連れて行ってください!」
立ち上がったと思うと、雅にそう行った。
「え?」
雅は呆気にとられた。
「あの場所に行きたいんです。お兄ちゃんが教えてくれたんです。全国に行ったら、すごい体験ができるって。用務員さんも、行ったんですよね? あそこに?」
「え、全国って、Nコンってことかい?」
「そうです。Nコンです! あそこに行って、みんなで『大地讃頌』を歌うのが夢なんです!」
雅は一瞬言葉を失った。
「Nコン全国ときて、大地讃頌ですか。参ったな……」
雅は真湖の腕を掴んだ手を離した。
「君、いいとこ突くねぇ。
あれはね……」
雅は黒縁眼鏡をきゅっと上げてから、ふふっと笑った。自虐の笑みとでも言うのか、悲しみの含まれた笑いだった。
「……泣くよ」
そう言って、雅は真湖に微笑んだ。




