第15コーラス目「創部!」その5
「Nコン!」第15話です。
煌輝真湖は、小学校を卒業したばかりの中学1年生。従兄妹の翔平が果たせなかった、合唱部でNコンの全国大会に出場するという夢を果たすべく、合唱部に入部を希望していた。ところが、合唱部は2年前に廃部になっており、指導する先生もすでに他界していた。
前途多難の船出にもめげずに、色々障害がありつつも、現先輩の協力もあり、校長先生に条件付きながら、合唱部の創部を認められた。
仮部員の先輩達と一所懸命練習の末、新入生歓迎会での発表も終わり、なんとか新入部員をゲットしたが、目標には届かなかった。さて、真湖たちはどうするのか?
皆様の感想などお待ちしております!
「え……?」
乃愛琉は一瞬硬直した。そんなこととは露知らずあんな言い方を。
「あ、今の、俺が言わなかったことにしてくれないか? 美馬も、俺には何も言ってないし。ただ、俺が気がついたっていうか。悪い」
「うん。分かった」
乃愛琉もかなり動揺していた。そう言うのが関の山で。
「それに、俺も……さ」
急に小林の滑舌が悪くなった。
「俺、も。なにさ?」
翔がツッこんだ。
「いや、なに……その、エンリコも、人が悪いやつだな……あのな……」
それに、小林が紅くなって、翔の耳元に内緒話をした。
「そっかー! 小林くんも真湖ちゃんが好きなんだね!」
「こらー!エンリコ、それじゃあ、内緒話の意味ねーじゃねぇか!」
小林は、翔の首根っこを腕でがっしりと捕まえて、ネックホールドの体勢。
「ちょ……」
今度は真湖が紅くなった。
「そ、そっかー、じゃあ、またライバル増えたね!」
翔は小林にがっしりと掴まれたまま、そう言った。
「また?」
小林の力が少し抜けた。
「あれ? 知らないの? 真湖ちゃん人気あるんだよ」
「誰よ?」
「剣藤阿修羅」
「ちょ、エンリコくん! あっしゅは違うって!」
慌てて真湖は否定した。
「え、剣藤って、野球部の? あれが、煌輝の? うわー。マジー? 強敵ー!」
小林は冗談とも本気ともつかない言い方をした。
「違うって、違うって。あっしゅはただのお隣さんだし!」
真湖は両手をブンブン振って、全力で否定しようとする。その反応で小林も悟ったらしい。
「そっかー」
「でも、いいんじゃなーい。みんな真湖ちゃん好きなんだし。オープンでいこうよ? 人を好きになるって素晴らしいことじゃないか。何故隠すことがあるんだい?」
翔は軽くそう言った。
「もう、なに言っての、本当にもう! オープンとか、もうやめてよね。告白って、そんな簡単にするもんじゃないでしょ?」
美馬の乃愛琉への想いが小林からバラされたかと思うのと、今度は真湖へ、小林からの激白だったり。乃愛琉も真湖も心の中で右往左往していた。
「まあ、とにかくさ、そんなことだから、今の美馬のことは多目にみてやってくれないか?」
「で、でもさ! それって……」
真湖がいきなり冷静になった。
「つまり、乃愛琉に気があったから、合唱部に入ろうとしたってこと? 下心あったってこと? それじゃあ、神宮先輩のこと言えないじゃない?」
「そんなんじゃねーよ。俺たち確かに歌は好きだし。ただ、そこにおまえ達がタマタマいただけって話だよ。バカにすんなよな。じゃ、俺、美馬追っかけるから。したっけ、明日」
そう言って、小林は美馬の後を追いかけた。
「なんなの一体?」
「小林も素直じゃないなー。じゃ、ボクも空気読んで先に帰るね」
そう言って、翔も小林を追いかけるようにして大通りを先に曲がって行った。
すっかり、ドタバタの中に取り残された真湖と乃愛琉だった。
そんな風に真湖たちが甘い春の入り口を経験している時、石見沢西光中学校の職員室は重苦しい雰囲気に包まれていた。
黒板に書かれた議題は「合唱部の創部について」だった。




