第14コーラス目「勝負!」その2
「Nコン!」第14話です。
煌輝真湖は、小学校を卒業したばかりの中学1年生。従兄妹の翔平が果たせなかった、合唱部でNコンの全国大会に出場するという夢を果たすべく、合唱部に入部を希望していた。ところが、合唱部は2年前に廃部になっており、指導する先生もすでに他界していた。
前途多難の船出にもめげずに、色々障害がありつつも、現先輩の協力もあり、校長先生に条件付きながら、合唱部の創部を認められた。
仮部員の先輩達と一所懸命練習の末、新入生歓迎会での発表も終わり、なんとか新入部員をゲットしたが、目標には届かなかった。さて、真湖たちはどうするのか?
皆様の感想などお待ちしております!
「よ。どした、元気ないな?」
途中、阿修羅が追いついてきた。ユニフォームをドロドロにしたままだった。
「わぁ、あっしゅ、汚い! 大丈夫よ、元気よ。いきなり背後から声かけないで、びっくりするから」
それでも、気にせずに阿修羅はそのままついてきた。
「あれ?翔のやつは?」
「エンリコくんなら、用事があるって、先に帰ったよ」
「ふーん。で、どうよ? 新入部員? 何人かは入ってきたか?
やはりそこが気になるらしい。
「今日だけで7人入りました。ありがとうございます」
「お、すげーじゃん、じゃああと3人か。すぐ集まんじゃね?」
「あっしゅんとこはどう?」
「うち? うち、15人入ってきたわ。これでレギュラー争い激しくなるわー」
なんとも楽しげに言った。合唱部の倍以上の入部員だった。部活動の花形だから当然と言えば、言えるのだが、やはり妬ける。
「せいぜい頑張ってくださいな」
「お、そんな言い方ないんじゃない? 秋に手伝ってやんねーぞ」
「え? 手伝ってはくれるの?」
「このまま10人集まんなくって暫定のまんまだったらさ、人数あわせで各クラスから割り当てくるかも知れないじゃん。そうなったら、手伝ってやるよ」
「いーえ、結構です、自力で集めますから、絶対10人以上にしてるやるんだから!」
勢いでそうは言ったものの、ジト目で阿修羅を振り向き、
「10人集まっても、あっしゅには、Nコンには出てもらうからねー」
「なんだよ、その、都合のいい話は」
と、阿修羅は苦笑いをした。
「まあ、いいや。じゃあ、校長との勝負に勝ったら、俺と勝負だな」
「なによ、勝負って?」
「まあ、まずは合唱部がだな、新入部員無事10人揃ったとしてな」
「揃うから!」
「まだ揃ってねーだろ、揃ってから言え」
真湖もぐうの音も出なかった。
「調べたんだが、俺がNコンに出るには二つの条件がある。一つは俺がこの夏にレギュラーをとれること。それから、新人戦で地方大会で負けること。さすがに今年の夏までにレギュラーは無理だろうけど、夏大会が終われば、1年、2年にレギュラーが回ってくる。俺は、2年生を差し置いてでも、レギュラーになる。そして、新人戦では全道に行く。全道に行ったら、Nコンには出られない」
「へ?」
意味の分かっていない真湖に構わず、阿修羅は続けた。
「逆に、真湖たちは、Nコンは最低全道に出ること。俺は、新人戦地方選に出るから、Nコンの地方大会は出られない。もちろん、レギュラーになればの話だけどな」
「ああ、なるほど」
乃愛琉は意味が分かった様子。
「え、どゆ意味?」
「つまり、まずはあっしゅくんは、レギュラーをとることが勝負の最初。わたしたちは、全道に出ること。で、わたしたちが全道に出たとしても、あっしゅくんが全道に出たら、わたしたちと一緒には行けない。逆に、地方選で負けたら、一緒に全道に出るってこと。でしょ?」
阿修羅は頷いた。
「ふーん。いいわよ、勝負してやる」
しかし、乃愛琉は知っていた、この勝負、かなり阿修羅には分が悪い。第一に1年生で新人戦でレギュラーを取るのがどれだけ大変なことか。リトルリーグでは突出して活躍していた阿修羅だが、それでもかなり難しいだろう。しかも、西光中学の野球部は過去にも全道に出るほどの強豪ではなかったはず。二重に高いハードルなのだ。
なんだかんだ言っても阿修羅は真湖のことが心配なんだろうなとは乃愛琉の心にしまっておくことにした。
「ほう。じゃ、負けんなよ。ってか、とりあえず、1年生10人揃えろよな」
「負けないもん!」
「じゃ、俺、あとダッシュして帰るから。じゃな」
と言うが早いか、阿修羅は駆け足で真湖達から走り去った。途中の曲がり角でいつもと反対の方に走って行く。明らかにこのことを真湖に伝えるために後を追ってきたのだろう。練習を抜け出してきたのか、それとも一度家に帰ってからまた戻ってきたのか。どちらにしても、本当に阿修羅って可愛いと乃愛琉は思った。
「何あいつ、何しに来たのよ。そんなの明日クラスで言えばいいのに」
そんなことは人前では言えないっていうのが真湖には分からないのだろう。真湖は一人でぶーたれていた。
「でもいいな、真湖とあっしゅくんて」
ぼそりと乃愛琉が呟くと、
「え? なにが? なにが?」
まるっきり乃愛琉の言っていることが理解不能な真湖だった。




