第11コーラス目「部員!」その1
「Nコン!」第11話です。
煌輝真湖は、小学校を卒業したばかりの中学1年生。従兄妹の翔平が果たせなかった、合唱部で全国大会に出場するという夢を果たすべく、合唱部に入部を希望していた。ところが、合唱部は2年前に廃部になっており、指導する先生もすでに他界していた。
前途多難の船出にもめげずに、色々障害がありつつも、現先輩の協力もあり、校長先生に条件付きながら、合唱部の創部を認められた。
与えられた課題である校歌を練習するために、現部長(仮)のシゴキが始まった!
皆様の感想などお待ちしております!
<主な登場人物>
煌輝真湖:本編の主人公
中学1年生。従兄弟のお兄さん(煌輝翔平)に憧れて合唱部員を目指して中学に入学する。なんにでも興味を示す、好奇心旺盛。興味津々、支離滅裂。血液型B型。黒髪長髪ポニーテール。
合歓乃愛琉
真湖の親友。真湖と一緒に合唱部に入る予定。
紺上灯
真湖の幼馴染み。長髪黒髪の美人。帰宅部。
剣藤阿修羅
真湖の幼馴染みで家が隣同士。野球部。
塩利己翔
真湖のクラスメート。札幌から引っ越してきた。イタリア人とのハーフ。母子家庭。真湖と一緒に合唱部に入る予定。
現瞳空
中学3年生。廃部前の合唱部にいたことがある。真湖に合唱部創部を諦めさせようとしたが、逆に創部に力を貸すことに。
栗花落蒼斗
現と同じく元合唱部。現瞳空と付き合っている。
如月友夏
外園諒子
保家寿
射原 悠斗・悠耶
中学2年生。去年、各クラス割り当てで、Nコンに出場している。
入学式から怒濤の5日間が過ぎ、初めての土曜日。真湖は布団の中で深いまどろみの中にいた。
「まーこちゃーん!」
夢か現か曖昧な境界線の中で、真湖の名前を呼ぶ声がしたような気がした。何とか返事をしようとするのだけれど、眠気には勝てなかった。元々朝の弱い真湖。昨日の夜にしっかりと土曜日は昼まで寝るんだ! と心に決め、目覚ましのベルもスイッチを切り、準備万端だった。閉じた瞼から窓の外の光を何となくは感じているような気はした。多分朝なのだろう。でも、まだ昼ではないなと勝手に予想。そう、今日は昼まで寝ると決めたのだから、初心貫徹、寝ると決めたら寝るのだ!
「まーこちゃーん!」
ああ、この呼び方は、きっと、乃愛琉<<のえる>>だな。とは心の中で思いながらも、惰眠を貪る欲求には勝てなかった。だって、あの現<<うつつ>>先輩のシゴキを耐え、5日間を乗り越えたんだから。まだ腹筋がジジンする。きっと筋肉痛よね。足も何だかダルい気もするし。だから、今日は静養するんだから。そう、これは明日のため、Nコン出場のためなんだから。などなど、とにかく寝ていることを正当化する理由をあれこれ描いた。
と、ドアのノックする音がして、乃愛琉の甘い声に変わって、母の厳しい声が響いた。
「まこー! 乃愛琉ちゃん、さっきから呼んでるでしょ! 早く起きなさい!」
「んー。もうちょっと寝かせてって、乃愛琉に言ってー」
布団にくるまったまま真湖は答えた。乃愛琉も乃愛琉よね、何も土曜日のこんな早い時間に呼びに来なくてもいいのに。と、今度は乃愛琉に逆恨みだった。
「学校行くんでしょ? 乃愛琉ちゃん、制服着て来てわよ」
「え?」
真湖は、血の気の引く音を聞いた。
「あ、あれ?中学って、土曜日、学校あるんだっけ?」
がばっと、布団から起き上がって、ドアの向こうの母に聞いた。
「知らないわよ。あんた、学校で時間割もらってきてないの?」
慌てて、真湖はベッドの上から勉強机に覆い被さるように飛びついた。学校に持って行っている鞄が載っていた。鞄からわさわさと学校のプリント取り出す。
「時間割、時間割」
バサバサとプリントを投げながら、時間割を探す。あった。月曜日から……金曜日までの時間割しかない。次は、来週の月曜日の予定だ。月曜日は、朝からレクリエーションで……。
「あれ?」
何度読んでも、今日は授業はない。別のプリントを見ても、土曜日日曜日は休みとはっきり書いてある。
「おかーさーん、今日って土曜日だよねー?」
「土曜日よ。とにかく、乃愛琉ちゃん、玄関先に待たせるのも悪いから、あがってもらうわよ」
「あー、うん。あ、うん」
低血圧の頭に一気に血が上ったせいで、ぐわんぐわんしている脳髄のまま返事する。そのまま、しばらくぼーっとする真湖。
「おじゃましまーす」
と、玄関先で乃愛琉の声がする。階段を上る音がなんとなくして、とんとんと、優しいノック。さっきの母のとは全然違う。
「まこちゃん、起きた?」
なんとなく、控えめな乃愛琉の声。
「あー、うん。起きた。入っていいよ」
明らかに寝起きの声で真湖が返答すると、乃愛琉がドアを開けて部屋に入ってきた。確かに制服を着ている。対して、ベッドから机に半分寄っかかったままの真湖はパジャマのまま。頭は寝癖で大変なことになっている。
「あれー?乃愛琉、なんで制服着てんの?」
「え?だって、学校行くなら、一応、制服着た方がいいんじゃない? 一応、ジャージは持ってるけど。ジャージのままの方が良かったかな?」
ジャージの入っていると思われる大きめのポーチを指さしながら乃愛琉は遠慮がちに言った。
「え、だって、今日、学校休みだよね?」
真湖は、手に取った時間割を乃愛琉に差し出した。
「え、うん、学校は休みだよ」
「じゃ、なんで、制服着てんの? なんで学校行くの?」
惰眠を邪魔された恨み節も込みで。
「え? だって、合唱部の練習でしょ?」
「え?」
真湖の目がまん丸に見開いた。




