第10コーラス目「始動!」その2
お待たせいたしました。ひさしぶりに更新です!
「Nコン!」第10話です。
煌輝真湖は、小学校を卒業したばかりの中学1年生。従兄妹の翔平が果たせなかった、合唱部で全国大会に出場するという夢を果たすべく、合唱部に入部を希望していた。ところが、合唱部は2年前に廃部になっており、指導する先生もすでに他界していた。
前途多難の船出にもめげずに、放送局を占領して、全校放送で合唱部入部希望者を募る。3年生に脅されたり、色々障害がありつつも、現先輩の協力もあり、校長先生に条件付きながら、合唱部の創部を認められた。さあ、頑張るぞ!
ところが発声練習のやり方さえ知らない真湖たちに、現もがっかり。さて、どうなることやら…?
皆様の感想などお待ちしております!
「ところで、あの、野球部の子って、仲いいのね?」
真湖たちが着替えしているところに、突然現が聞いた。
「あっしゅですか?」
真湖の手がぴたりと止まったのを現は見逃さなかった。
「剣藤くんって言ったっけ?あっしゅって呼ばれてるの? 煌輝さんとは?」
現は曖昧な聞き方をしてきた。現の意図を計りきれなくて真湖が言葉にするのを躊躇った。乃愛琉が代わりに答えた。
「幼なじみです。わたしたち、小1からずっと一緒のクラスで。煌輝さんのお隣さんなんです、あっしゅくん」
「へぇそうなんだ。中央小だっけ?」
「はい、そうです」
「じゃあ、近所なんだね。いいなぁ。わたし、元北小だから、通うの遠くてね」
乃愛琉と現のやりとりを黙って聞いていて、真湖は少し安堵した。現の質問に対して変な勘ぐりをしてしまったのだと、自分に思いこませようとしていた。女子としては恋愛に奥手気味の真湖だが、入学以来、翔の「好き好き攻撃」のおかげで、かえって阿修羅のことが気になり始めていた矢先だったからだ。
「栗花落<<つゆり>>先輩も北小なんですか?」
すかさず乃愛琉が現のカレシを名指しした。恋愛ネタは乃愛琉のごちそうである。乃愛琉が話題を変えてくれたので、真湖はほっとした。
「蒼斗<<ひろと>>は西小だったみたいよ」
「じゃあ、いつからカレシなんですか?」
「んと、去年のクリスマス後だったかな」
「どちらから告白したんですか?」
「どっちだったかなぁ。よく覚えてないなぁ」
「じゃあ、相思相愛だったってことですね! いいなぁ!」
ずけずけと聞く乃愛琉とあっけらかんと答える現に、真湖は心中タジタジだった。
「ほら、もう良いでしょ、制服そこ置いて。行くわよ」
さすがの現も頬を染めて、ちょっと大声になった。実のところ、現と栗花落の付き合い始めたきっかけというのは、曖昧で「よく覚えてない」というのも嘘ではなかった。なんとなくどちらからともなく、そんな感じになったというのが正直なところで。相思相愛と言われるとかなりくすぐったい感覚を覚えた。
「はーい」
恋バナを聞けて満足げの乃愛琉と、逆に恋バナから解放された真湖が声を揃えた。
「エンリコくん、着替え終わった?」
音楽室から、「とっくに着替え終わってますよ」との翔の返事があると、現は扉を開き、3人で音楽室戻った。
「さて、行きますか!」
現は照れ隠しとも取れる空元気っぽい、大きな声を上げた。意外にかわいいところがあるんだなと、乃愛琉は内心思った。初対面の印象は冷たいというか、「クールビューティ」のイメージだったが、つきあってみると、案外中身はサバサバしていて、後輩の面倒見が良い。栗花落が何故カレシなのかが、少し分かったような気がした。このカップルは現でもっている、そう思うのだった。
「ね、何話してたの?」
音楽室を出ると、翔がこっそりと真湖に聞いてきた。
「べ、別に。大した話してないよ」
「え。だって、結構かかってたじゃん。ボク、ずいぶん待ったんだよ」
「ふ、普通に、世間話してただけだよー」
「ふーん。そうなんだ」
翔は、頭の後ろに両手を回して、いかにも納得してませんという顔つきをしたが、まーいいかと呟いてそれ以上は追求はしなかった。
真湖にとっては、さっきの話を要約するほどの経験値を持っていなかったので、それ以上問われても返答に困るだけだった。あっさりと諦めてくれる翔がありがたかった。
(あっしゅだったら、しつこいくらいに聞いてくるんだろうなぁ…)
思わず阿修羅と比較してしまう。そんな妄想を、真湖は頭をブンブンと振って忘れようとした。そんな姿を目の端でちょっとだけ不思議そうに見る翔だった。




