第9コーラス目「家族!」その2
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「Nコン!」第9話です。
煌輝真湖は、小学校を卒業したばかりの中学1年生。従兄妹の翔平が果たせなかった、合唱部で全国大会に出場するという夢を果たすべく、合唱部に入部を希望していた。ところが、合唱部は2年前に廃部になっており、指導する先生もすでに他界していた。
前途多難の船出にもめげずに、放送局を占領して、全校放送で合唱部入部希望者を募る。3年生に脅されたり、色々障害がありつつも、現先輩の協力もあり、校長先生に条件付きながら、合唱部の創部を認められた。さあ、頑張るぞ!
ところが発声練習のやり方さえ知らない真湖たちに、現もがっかり。さて、どうなることやら…?
皆様の感想などお待ちしております!
一方、阿修羅の家。野球部の練習から帰ってきたばかりの阿修羅が居間に顔を出す。全身泥だらけである。
「ただいまー。今日のご飯なにー?」
「ちょっと、外でちゃんと服ほろってから入ってきなさいね! ユニフォームにまだ泥ついてるわよ!」
妹たちにご飯を食べさせながら、母は怒鳴った。
「へーい」
「今日はとんかつだよ」
「やっほーい!」
「先にお風呂入ってきなさいね。用意できてるから」
「ほーい」
阿修羅は言われた通りに、一度玄関を出る。母は苦笑した。
「本当に、お兄ちゃんったら、困ったもんでしゅねー」
と、双子の妹達にご飯を順に食べさせる。阿修羅の妹たちは3歳になったばかりでまだまだ手がかかる。近所では肝っ玉母さんで通っているこの母も、ここ数年は妹たちの世話で手一杯だった。それでも、心優しい長男は手が空いていれば妹たちの世話を自主的に行うのがせめてもの救いだったのだが、野球少年の業というか、年中練習に明け暮れているため、夏の間はなかなか時間が取れないのが玉に瑕。なにより、洗濯物の量が年々増えているのが苦労の元であった。
阿修羅は脱衣所で泥だらけになったユニフォームを脱ぎ、風呂場に飛び込んだ。ざっとだけ掛け湯をかぶり、湯船に浸かった。
「ふー」
深い溜息をついた。練習の疲れもあったのだが、気になるのは合唱部の動向だった。いや、正直に言うと、真湖の動向というのか。いやいやいやと否定しようとも思うのだが、結局思い至るのは、あのハーフの転校生、塩利己翔なのだ。
「べ、別に、真湖のことがなんだっていう訳じゃねーから……」
と、口では言ってみたものの、心の中では忸怩たるものがあった。阿修羅自身としては、幼馴染みを特別な関係とは思っていない。ただ、たまたま隣に住んでたってだけの話だ。真湖が好きとか嫌いとか、そういう次元でもないと自分では思っている。確かに真湖は良いヤツだが、それ以上の感情があったかというと自分でも分からない。あの時言った、『一応幼馴染み』という言葉は、そういった、自分の中でもまだはっきりしていない部分をさらけ出してしまった結果だった。けれど、自分たちが一緒に過ごした時間をすっかり飛び越えてこの輪の中にすっぽりと入ってきた翔のことを認める気にもなれない。そんな複雑な感情をまだ整理できずにいたのだ。




