第7コーラス目「呼出!」その3
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「Nコン!」第7話です。
煌輝真湖は、小学校を卒業したばかりの中学1年生。従兄妹の翔平が果たせなかった、合唱部で全国大会に出場するという夢を果たすべく、合唱部に入部を希望していた。ところが、合唱部は2年前に廃部になっており、指導する先生もすでに他界していた。
前途多難の船出にもめげずに、放送局を占領して、全校放送で合唱部入部希望者を募る。現先輩に呼ばれて、合唱部員募集を止められたが、なんとか説得できたかと思いきや、今度は恐い3年生に呼び出され……。どうなる、真湖?
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「失礼します」
中から『どうぞ』という声がして、真湖は扉を開けた。扉を開けると真正面に少し恰幅の良い壮年の男性が座っている。入学式の時に挨拶していたので覚えがあるが、この人が校長だろう。その横に入学式の時にまさに音楽室で出会った老年の教師が立っていた。さらに、手前の席には栗花落と現が先客として座っていた。室内の人物配置は校長室前にたむろっている阿修羅達の目にも入った。
「あれ? あれって、栗花落先輩と現先輩……だよね?」
「うん」
真湖が校長室に入り、扉が閉じられると、翔と乃愛琉が顔を見合わせて頷いた。ということは、校長室に呼び出されたのは確実に合唱部のことであることは間違いない。どんな話になるのか興味津々な阿修羅と翔は扉に耳をつけて中の様子を伺おうとした。
「ちょっと、やめなさいよ」
灯が注意しようとするが、阿修羅は『しっ』と口に人差し指を当ててそれを制止した。
「煌輝真湖くん、すまないねここまで呼び出してネ。まあ、お座りなさい」
校長は席に座ったまま真湖を現の隣に招いた。
「はい。……こんにちは」
真湖の会釈に栗花落と現も応える。
「先輩たちどうしたんですか?」
「うん、まあ」
彼らの囁き声に、校長は失笑のような息を漏らした。
「まあ、緊張しなくてもいいよ。あ、こちら、教頭。知ってるよネ?」
校長は席を立ちながら、隣の老年の教師の肩を軽く叩きながらそう言った。現はすぐに頷いた。確かに入学式の時に司会をやっていた人。教頭だったのかと真湖は言葉を飲み込んだ。二人は向かいに並んで座った。
「実はね、ボクたちはこの学校の出身で同期なんだネ」
どうみても教頭の方が年上に見える。白髪交じりで細身の教頭に対して、恰幅がよく肌の艶もいい校長では、とても同年代に見えなかった。
「ボクたちは、いわゆる『竹馬の友』というやつでネ」
意味は理解できたが、もちろん真湖にも現にも竹馬に乗った経験はない。
教頭は数年前からこの学校にいるのだが、校長は今年異動でこの学校に赴任したばかりだという。それは、栗花落と現も知っていた。
「入学式の時のキミの放送聞いたネ。すごく元気だネ。でも、この学校は自主的に部の創設は認めていないネ。担任からは聞いたと思うけどネ。昨日、キミの先輩達がボクのところに陳情に来たんだよネ。どうしても合唱部を創りたいってネ」
「え、そうなんですか?」
まさか現たちが校長に直談判に来たとは思いも寄らなかった。真湖はそれを聞いて感激した。
が、昨日と言えば、真湖があの3年生に脅されていた時のことだ。これでますます昨日のことは現には言えなくなったなと少し困惑もしてはいたのだが。
「わたしたちは、今年で終わりだけど、あなた達はこれから3年間あるのだもの。せっかくやるならずっとやっててほしいし、部員募集にいつまでもあなたの一本釣りに頼るわけにもいかないでしょ?」
「先輩……」
本当は現はすごく後輩思いの、優しい先輩だったのだと。一時は酷い先輩だと思っていた真湖は自分を責めた。




