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Nコン!  作者: mofmof
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第1コーラス目「合唱!」その3

いつももふもふの作品をお読みいただきまして、ありがとうございます。


新作アップいたしました!

題名は「Nコン!」

中学生の主人公が合唱部に入って、NHK合唱コンクール(通称Nコン)で全国出場を目指すお話です。

皆様の感想などお待ちしております!

 卒業式終了後、真湖たち4人はゆっくりと帰宅の途についていた。真湖と阿修羅は隣同士で、乃愛琉と灯も同じ方向なので、特に示し合わせているわけではないのに、いつもなんとなくこの4人で帰宅することが多かったのだ。小学校からの一緒の帰りはこれで終わり。

「ねえ、あっしゅは、中学入ったらやっぱり野球部入んの?」

 阿修羅は地元リトルリーグに所属していて、4番でショートを守っている。

「ああ、もちろん。真湖はなんかやんのか?」

「うん、あたしは合唱部入んの」

「合唱部?」

 阿修羅の声に合わせて乃愛琉と灯も意外そうな顔をした。

「翔平にいちゃんが中学の時合唱部だったんだ」

「へぇ、翔にいがね。意外」

 翔平というのは真湖の従兄で、同じく阿修羅もよく相手してくれた。乃愛琉と灯も面識がある。

「乃愛琉も一緒にやるよ。ねー?」

 乃愛琉には前々からそう誘っていた。二人とも唄が大好きだから。

「灯もやんない?」

「私は塾で忙しくなるから」

「なーんだ。つまんないの」

「灯、塾行くの? 中一から?」

 阿修羅が少し驚いた。

「学校だけの勉強じゃ足りないって。今の塾でもそう言われてるし」

 確かに灯は小学生のうちから塾通いしていた。一部では札幌の私立中学を狙うのではと噂されてきたが、結局は地元の中学を選んだらしい。

石東せきとう狙うならね」

「灯、石東狙ってるんだ。すげーな」

 『石東』とは、石見沢東高校のことで、空知管内ではダントツの進学校である。東大、北大その他の国公立大学を志す者も多い。

「石東って、翔平にいちゃん今年卒業したとこだよ」

 と、真湖は軽々と言うが、その言葉の重みはまだ分かってない。

「翔にい、頭よかったもんな」

「じゃ、わたし、ここで。またね」

 最初に乃愛琉が自宅前で手を振った。

「したっけ。次は入学式か」

 阿修羅が卒業証書の筒を振って返事した。灯は黙って手を振るだけ。

「だね」

「乃愛琉、明日ね」

「うん、また明日」

 二人は明日中学の制服を一緒に注文しに行く約束をしていた。

 次に灯が角を曲がって別れ、最後は阿修羅と真湖だけになる。

「翔にいは札幌に行ったんだべ?」

「うん、先週」

 翔平は今年めでたく北大に合格し、つい先日札幌に旅立ったばかりである。

「すげーな、北大かぁ」

「だね」

 阿修羅と真湖からすれば、北大なるものは雲の上の存在である。

「真湖は、従妹なのに、なんで頭悪ぃんだべな?」

「うっせぇ、あっしゅに言われたくない」

 小6の成績でいうと、二人はドングリの背比べで、クラスの平均を超えることはなかった。翔平は親戚一同の中でも珍しく飛び抜けて成績が良かったから、むしろ突然変異は翔平の方だった。

「俺はできないんじゃなくって、やらないだけ」

「はい、はい。阿修羅様」

「その呼び方すんなって言ってるべ!」

 阿修羅は自分の名前が嫌い。だから、同級生には『あっしゅ』とあだ名で呼ばせるか苗字で呼ばせている。

「あ、じゃね」

 真湖は舌を出しながら玄関先に飛び込んだ。

「ああ、したっけ……。……あ、あのさ」

「ん?」

 阿修羅は少し躊躇う仕草を見せる。

「俺たち、中学生なんだな?」

 少し恥ずかしそうな言い方をする阿修羅に、真湖は特に気にしない様子で、

「そうだね。楽しみだね。じゃね!」

 手を振って家に入って行った。それを背後から眺めながら、阿修羅は深い溜息をついた。

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