第7コーラス目「呼出!」その2
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「Nコン!」第7話です。
煌輝真湖は、小学校を卒業したばかりの中学1年生。従兄妹の翔平が果たせなかった、合唱部で全国大会に出場するという夢を果たすべく、合唱部に入部を希望していた。ところが、合唱部は2年前に廃部になっており、指導する先生もすでに他界していた。
前途多難の船出にもめげずに、放送局を占領して、全校放送で合唱部入部希望者を募る。現先輩に呼ばれて、合唱部員募集を止められたが、なんとか説得できたかと思いきや、今度は恐い3年生に呼び出され……。どうなる、真湖?
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昼食時の席配置は、入学3日目にしてほぼ固定化された。中央小組に翔が加わり、阿修羅と乃愛琉の席に集まるという具合だ。そして、何故か毎回翔と真湖の間に灯が割って入るという構図まで一緒だった。
「でもさ、校長っていうのが解せないんだよな」
昼食時の話題はやはり、真湖の校長室呼び出しの件だった。阿修羅脳味噌温度は沸点からは下がったけれど、未だに高い温度を保っているようだった。
「それに、合唱部の件なら、乃愛琉とエンリコとかが呼ばれるのが当たり前じゃないか?」
「だったら、昨日の件だって、俺と乃愛琉ちゃんは一緒だったからね。同じじゃないか?」
「それは、その用務員が乃愛琉とエンリコのことを知らなかっただけかも知れないじゃん。真湖はもう有名人だからな」
「有名人じゃないし!」
「いや、少なくとも、職員室ではお前のこと知らない先生はいないはずだべ」
「でも、もし、怒られるんだったら放課後まで待つかしら? この前の放送室ジャック事件のように、その場で呼ばれるか、朝一番に呼ばれるんじゃない?」
「そうよね、そうよね?」
灯の理屈が最も説得力があった。真湖は積極的にそれに同意する。
「だからと言って、いい話になるとは限らないけれどね」
それでは何の呼び出しなのかというと今度はさっぱりな訳で、余計な期待を持たせないところが灯らしい。
昼休み中色々話し合いしても結局は堂々巡りで結論は出なかった。ただ、結論が出たからと言って、状況に変化はないことは皆知ってはいたのだけれど。
そうこうしているうちに、その実中身がオリエンテーションである午後の授業も終わり、ようやく中学での学校生活のスタートラインに着いたような心地を皆が持ち始めた頃、真湖は学校長に謁見するという大役に挑むべく心の準備を始めた。両の頬をぺちぺち叩くと、前の席の翔が振り返って微笑んだ。
「真湖ちゃんでも緊張することあるんだ?」
「そりゃそうよ。校長先生って言ったら、この学校で一番偉い人でしょ。緊張するに決まってる」
小学校時代に学校長に直接面談されたことはない。何度か阿修羅の悪戯のせいであおりを食って教頭に叱られたのが記憶にある程度。昔から大人に対する免疫は多少あったため、職員室自体は嫌いではなかったが、校長室となるとまた話は別である。
「真湖ちゃん、鞄持ってようか?」
乃愛琉と阿修羅がやってきて真湖の鞄を持った。灯もなんとなくその後ろに着いて来て、なんとなく5人揃って教室を出た。校長室は職員室の隣にあり、1年生の教室と同じ階だから、廊下をまっすぐ歩けばすぐに目に入る。右手が校長室でその向かいが音楽室になっている。入学式の日に見学で音楽室に来たときにも4人でここに来ていた。その時には向かいが校長室であることには気付いていなかった。
「真湖ちゃん、がんば」
乃愛琉が気合いを入れた。これからオリンピックの大舞台に出るスポーツ選手のように、大仰なポーズで校長室の扉に向かい、期待と不安の混じった観客を背に扉を叩いた。




