第6コーラス目「障害!」その2
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「Nコン!」第6話です。
煌輝真湖は、小学校を卒業したばかりの中学1年生。従兄妹の翔平が果たせなかった、合唱部で全国大会に出場するという夢を果たすべく、合唱部に入部を希望していた。ところが、合唱部は2年前に廃部になっており、指導する先生もすでに他界していた。
前途多難の船出にもめげずに、放送局を占領して、全校放送で合唱部入部希望者を募る。現先輩に呼ばれて、合唱部員募集を止められたが、なんとか説得できたかと思いきや、今度は恐い3年生に呼び出され……。どうなる、真湖?
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その頃、学校近くの公園の隅で、真湖は3年生と思われる上級生に囲まれていた。そこは周り三方を民家に囲まれた小さな公園で、大した遊具も揃っていないためか、子供の姿は全くない。雪解け間もないため、日陰になっているところにはまだ残雪が残っていた。公園の隅には小さな木々が生えていて、そこに立つと通りからは死角になる。
「な、なにか用ですか?」
「用があるから、呼んだんだろが」
毅然とした態度で臨む真湖に、脅しをかける上級生。真湖はきっと目をつぶって、歯を食いしばった。膝がガクガク震えているのが分かる。相手は大柄な3年生男子3人。強がってはいるけれど、それは口先だけにしか過ぎなかった。
ここに連れられてくる間も、隙をみて走れば逃げられたとは思うが、少し確認したこともあったため、黙って着いては来たものの、やはり3対1では分が悪い。
「なに、震えてるんだよ、こら」
一人が、真湖のおでこをつついた。まるで小動物か昆虫を虐める小学生のように、おもしろがっているのが良く分かる。細面で笑うと前歯が出るので、真湖は心の中で『サンマ』と名付けた。
「やめてください!」
手を振ってサンマの手を振り払ってから前髪を直した。
「煌輝って、卒業した煌輝の妹なんだろ?」
リーダ格の男子生徒が翔平にいちゃんの名前を持ちだした。やはり、翔平にいちゃんのことらしい。ということは、現が気にしていた『絶対声かけちゃダメな人』は彼らのことなのだろうか。体は震えていたが、何故か頭は冷静だった。
「妹じゃありません。従妹です」
「どっちでも構わねぇ。とにかく、気に入らねぇんだよ」
「翔平にいちゃんを知ってるんですか?」
「知らねぇよ」
「バカ、黙ってろ」
小太りの3年生が思わず真湖の質問に答えてしまい、リーダーがをそれを叱咤した。小太りは『マツコ』と命名。マツコはリーダーに平謝りに謝っていた。
(あれ? どうして、翔平にいちゃんのこと知らないのにあたしに絡むの? それに、リーダーが怒るのってなんで?)
「んなぁこと、どーでもいいんだ。とにかくな、合唱部つくんの止めろ。でないと、痛い目に逢うぞ。それだけだ、言いたいのは」
リーダーが思いっきりドスをきかせて言い放った。
「どうして、合唱部つくっちゃダメなんですか?」
「どうしてもだ。とにかく、気に入らねぇからだって、言ったべ」
『お前が余計なこと言うからだ』『すんません』と小声でやりとりがあり、リーダーがマツコを小突いた。少なくとも、マツコは翔平にいちゃんのことを知らないらしい。おかしい。
「あ、あそこです!」
「こらぁ! そこでなにしてる!?」
そこにようやく翔と作業着姿の教師らしき大人が飛び込んできた。
「やべ、行くぞ」
リーダーが合図して散会しそうになった。決死の思いで、真湖はリーダーの手を取った。
「待って! 誰に頼まれたの?」
一瞬の間があった。その瞬間、真湖の脳裏にリーダーの記憶が流れ込んでくる。
(『芳田瑞穂』先輩? 卒業生?)
「うるせぇ、誰にも頼まれてねぇよ! いいか、合唱部つくるんじゃねぇぞ。分かったな!」
その手を振りほどいて、リーダーはその場を走り去った。
「大丈夫だったかい?」
作業着の男性に声を掛けられて、真湖はその場にへたりこんだ。腰を抜かすという経験を初めてした。




