第5コーラス目「勧誘!」その2
新連載「Nコン!」第5話目です。お読みいただきまして、ありがとうございます。
煌輝真湖は、小学校を卒業したばかりの中学1年生。従兄妹の翔平が果たせなかった、合唱部で全国大会に出場するという夢を果たすべく、合唱部に入部を希望していた。ところが、合唱部は2年前に廃部になっており、指導する先生もすでに他界していた。
前途多難の船出にもめげずに、放送局を占領して、全校放送で合唱部入部希望者を募る。現先輩に呼ばれて、合唱部員募集を止められたにも関わらず勧誘を続ようと……。
皆様の感想などお待ちしております!
結局朝のうちに、5名の入部確認ができて、ホクホク顔の真湖と乃愛琉がクラスに戻ってきたのは、ホームルームが開始される直前だった。
「遅かったな。どうしたんだ?」
阿修羅が少し心配そうに乃愛琉に訊いた。乃愛琉は大まかな話だけした。もちろん能力の部分はぼかして、去年のメンバーを職員室で聞いたらしいくらいで言っておいたのだが。
「あのバカ……これ以上目立つマネしたら……いや、まあ、真湖らしいっちゃあ、真湖らしいんだけどな……。ただ、あんまり変なことにならなきゃいいんだが……」
阿修羅の悪い予感が早速当たったのは、昼休みのことだった。
「ちょっと、煌輝さん!」
昼休み突入と共に、1年3組に表れたのは、現だった。
「現先輩?」
真湖はケロっとして、呼ばれるままに廊下に出た。
「2年生のとこに勧誘に行ったんですって? どうして、わたしの忠告聞いてくれなかったの?」
「だってー、やってみなきゃ分からないじゃないですか? で、どうしてもダメだったら、あたしも諦めますけど」
現は手を目に当てた。なんて言ったらこの子は納得するんだろうかと真剣に悩んだ。
「あのー。先輩」
そこに、1年3組の教室からぶらりと顔を出したのは、阿修羅だった。なんともやる気のなさそうな顔つきで現に声をかけた。現は怪訝な顔つきで阿修羅に答える。
「あなたは?」
「剣藤っていいます。こいつの幼馴染みで。こいつ、昔っから、思い込んだら徹底的にやらないと気が済まないタイプなんですわ。迷惑かけてすんません」
「あっしゅは引っ込んでてよ」
真湖が阿修羅を教室に押し込もうとした。
「俺も、詳しくは聞いてないんでわかんないっすけど、何もしないで手ぇこまねいているより、とにかく色々やってみるってのもいいんじゃないですかね? 何もしなかったなら、何も起こらんでしょ」
自分を説得するために出てきたのかと思ったら、現の説得を始めた阿修羅を見て、真湖は目が点になった。
「まあ、一所懸命すぎて困るとこもあるんですけどね」
阿修羅はくすりと笑った。現は何と言っていいのか迷って、しばらく黙っていたが。
「分かった。わたしの負け。もう止めないわ。けど、3年生の誰かに声かけるなら、その前にわたしに言って。絶対声かけちゃダメな人もいるから。それだけはお願い」
「あ、いえ。その……あたしも、勝手なことして、ごめんなさい。でも、助かります。ありがとうございます」
真湖もさすがに殊勝な顔つきで頭を下げた。
「ところで、どうして、如月さんとかが去年のメンバーだって、知ってたの?」
現は、当然疑問に思うところを真湖に尋ねた。
「あ、あー。それはですねー。えっと、去年の活動日誌みたいなのを、図書館でみつけましてー」
と、真湖は適当な答えで誤魔化そうとした。
「あ、そうなの」
現はそれで納得したようだったが、阿修羅はひっかかりを覚えた。確か乃愛琉は先生に聞いたと言っていたような。しかし、取り立てて聞き直すまでのことでもないように思ったので、それ以上は詮索しなかった。
「先輩、早速ですけど、山咲先輩って、声かけてもいいんですか?」
「山咲くん? 野球部のってこと?」
「はい、そうです。3年生で、声掛けたいんですけど」
「山咲先輩も誘うっていうのか?」
阿修羅も驚いた。
「山咲先輩も去年参加されてるんですよね?」
「うん、まあ。でも、本当に助っ人ってだけで、練習には全然来られないわよ、野球部と掛け持ちだったから」
まさか野球部員に合唱助太刀する先輩がいたとは、意外だった。先日乃愛琉の家で調べた時、Nコンの予選時期は確か夏休み終わり頃で、野球部も秋の大会に向けて忙しい時期だと思っていたからだ。
「でも、人一倍大きい声ですよね!」
真湖は阿修羅と一緒に野球部の下見をしに行った時のことを思い出していた。グランドの端から端まで響き渡る声の持ち主であったのが印象的だったのだ。
「まあ、たしかに。それなら、わたしから話しておいてあげるわ。彼は協力的だから」
現はクスっと笑って請け負ってくれた。
「これで、もう13人になりましたよ!」
真湖は、指折り数えた。真湖、乃愛琉、翔、現、栗花落、保家、如月、外園、射原兄弟、山咲と、数えてから、
「阿修羅と、灯。で、13名です!」
「だから、俺はやんねぇって……」
阿修羅は真湖のポニーテールをグイっと引っ張った。が、真湖はめげない。
「あと、7人で20人ですよ!」
「剣藤くんのことは別として、12人ね。大変なのは、これからよ。そこから集めるの大変なの。……でも、あなたのことだから、やっちゃいそうだけど……」
すっかりこの子のペースにはまってしまったものだと現は思ったが、何故か嫌な気分ではなかった。
「これから、1年生の勧誘を始めようと思うんです。きっと、歌うの好きな人いるはずですから」
阿修羅のみぞおちに肘鉄を食らわせてから、髪を戻しながら真湖はそう現に言った。現はそこは任せると言い、とにかく3年生には気をつけるように付け加えた。真湖が2年生に勧誘に行ったことは現だけでなく、他の3年生にも伝わっていた。煌輝先輩の従姉と知れば、恨みに思う者もいるかも知れないのでと、しつこいくらいに言い残して、現は自分の教室に戻った。
「なしたの?」
現が離れた頃、廊下のドアに立つ二人に翔が訊いた。




