第3コーラス目「告白!」その4
新連載「Nコン!」第3話目です。続けてお読みいただきまして、ありがとうございます。
煌輝真湖は、小学校を卒業したばかりの中学1年生。従兄妹の翔平が果たせなかった、合唱部で全国大会に出場するという夢を果たすべく、合唱部に入部を希望していた。ところが、合唱部は2年前に廃部になっており、指導する先生もすでに他界していた。
前途多難の船出にもめげずに、放送局をハイジャックして、全校放送で合唱部入部希望者を募る。クラスメートの塩利己翔が第一希望者を名乗り出るのだが、代わりに付き合って欲しいとみんなの前で告白する!そして、真湖は……?
皆様の感想などお待ちしております!
そして、昼休み。
阿修羅と乃愛琉が前後の席だったので、そこに真湖と灯が集まった。学生生活初のお弁当である。もちろん小学生の時も、何かの行事の度にお弁当をつくってもらったことはあったが、これからは毎日がお弁当になるのだ。真湖の母も今朝は早くから起きてお弁当作りに精を出していた。今日のお弁当は昨日リクエストしておいた、ハンバーグとウインナーが入っているはず。
「阿修羅のお弁当箱、おっきいね!」
机の上に並べられた弁当箱は、阿修羅のが明らかに大きかった。一番小さい灯のお弁当箱の2倍はあったろうか。
「育ち盛りだからな!」
阿修羅がわははと大笑いしながら、弁当箱を開ける。ご飯たっぷりの海苔弁当だった。
「ご飯、おっきいねぇ」
と、そこに翔がやってきた。
「なんだよ?」
阿修羅が敵意を見せる。
「一緒させてもらってもいいかい? なんか、みんな出身校で固まってるからさ。俺、行き先なくてさ」
と、言いつつも、その翔の行動を見つめながらウロウロしている女子が数名いるのを阿修羅は見逃さなかった。
「向こうに、一緒に食べたがってそうなのがいるけどねぇ」
「そんなに邪険にしなくてもいいだろ? お邪魔します」
修羅をすっかり無視して、隣からイスを持ってきて座ろうとした。
「こちらにどうぞ」
灯が素早く移動して、乃愛琉と自分の間を開けた。翔は明らかに真湖の隣を狙っていたようで、一瞬止まってから、開いたところにイスを置いた。
「ありがとう」
やっぱり変わらずの笑顔で、灯の隣に座った。
「えっと、あけび……ちゃんだっけ?」
「あかり。紺上灯」
灯は翔の顔も見ずにそう言った。ちょっと語気に力が入っていた。
「ごめん、ごめん、あかりちゃんね。あと、ノエルちゃんだったよね」
翔は乃愛琉にも愛想を振りまいた。
「ノエル……これ、なんて読むの? がっしょう?」
翔は乃愛琉の胸についた名前札を指した。
「合歓って読むの。合歓の木って知らない? 北海道では生えないけど」
「へえ。これでねむって読むんだ。でも、ノエルの方が覚えやすいから、ノエルちゃんでいいよね? 俺は、エンリコ翔。よろしくね」
翔は皆と一緒に弁当箱を広げた。中にはサンドイッチが入っていた。若干不格好だが、あんまり見たことのないハムとかが挟まっている。
「わー。サンドイッチだー。いいなぁ。お母さんが作ってくれるの?」
真湖がそれを覗き込む。
「そんなんで足りるのか?」
阿修羅は顎肘ついてそう言った。
「足りるよ。これは、俺の自作。うち、ママーが働いてるからさ。朝時間なくて、自分で作ってる」
「そういえば、エンリコくんって、札幌から越してきたって?」
「うん。今はおじいちゃんの家に住んでる。3人暮らし」
翔は相変わらずニコニコ顔で、サンドイッチに口をつける。
「おとう……」
「真湖!」
真湖が口を開こうとして、灯が制止した。
「あ、全然気にしなくていいよ。そそ、パパはいないんだ。離婚してね、イタリアに帰っちゃった。だから、ママーと二人暮らしだったんだけど、地元に戻ってきたってわけ」
少し沈黙が流れた。
「部活。剣藤くんは、なにやるのさ?」
最初に翔が口火を開いた。
「あ、俺? 俺、野球部」
「あっしゅは、地元のリトルリーグでは有名だったんだよ。4番ショート」
真湖が補足した。
「へー。道理で体格いいわけだ。あっしゅって呼ばれてるの?じゃあ、俺もアッシュって呼ぼうかな」
「どうぞ、ご勝手に」
阿修羅と呼ばれるよりかはマシかと思い、それは断らなかった。
「あかりちゃんは?」
「わたしは、帰宅部」
「ノエルちゃんは?」
「わたしは……真湖ちゃんと、合唱部……の予定です」
「そっか、じゃあ、一緒だね!」
翔はそう言って、隣の乃愛琉の手を取った。乃愛琉はすぐにその手を引っ込めた。
「そっか、じゃあ、もう3人までは決定なんだね。ところで、何人くらいいれば、合唱部できるんだろうね?」
「一応、10人くらいは集めたいなって思ってるんだけど」
真湖は当座の目標をそれくらいで考えていた。それくらいいれば、先生にも交渉できるのではないかと思って。
「じゃあ、あと7人だね」
「煌輝さんっている?」
その時、乃愛琉の後ろのドアから、声がした。みんなが振り返ると、一人の女子生徒が立っていた。胸元の名札を見ると、3年生のようだ。
「はい、あたしです!」
「ちょっといいかな?」
その先輩は、真湖を手で呼びつけた。
「はい」
真湖は箸を置いて、立ち上がり、廊下に出た。残りの4人はその様子だけ目で追った。
「入部希望かな?」
「かな」
真湖が廊下に出ると、その女子生徒はまず名乗りあげた。
「わたしは、現瞳空。3年2組。昨日の全校放送聞いたんだけど、あなたが合唱部つくりたいって言ってたのよね?」
「はい! そうです! 先輩も入ってくれるですか?」
真湖は、満面に笑みを浮かべた。早速入部希望者が現れた!
「そのことなんだけど……」
現はそこで息継ぎをした。
「合唱部はつくらない方がいいわ。いいえ、つくらないでちょうだい」
「え?」
真湖は硬直した。




