第3コーラス目「告白!」その3
新連載「Nコン!」第3話目です。続けてお読みいただきまして、ありがとうございます。
煌輝真湖は、小学校を卒業したばかりの中学1年生。従兄妹の翔平が果たせなかった、合唱部で全国大会に出場するという夢を果たすべく、合唱部に入部を希望していた。ところが、合唱部は2年前に廃部になっており、指導する先生もすでに他界していた。
前途多難の船出にもめげずに、放送局をハイジャックして、全校放送で合唱部入部希望者を募る。クラスメートの塩利己翔が第一希望者を名乗り出るのだが、代わりに付き合って欲しいとみんなの前で告白する!そして、真湖は……?
皆様の感想などお待ちしております!
1時間目の終わり、真湖は意を決したように立ち上がり、翔の元に向かった。
「エンリコくん」
「なんだい? 真湖ちゃん?」
翔はにこやかな笑みをたたえながら、真湖に向かった。彼女が来るのを予測していたかのように。
「さっきの話なんだけど、ごめんなさい、お断りします」
真湖は、勢いよく深く頭を下げた。ポニーテールが翔の鼻先をかすめた。
「えー。そうかい。残念だなぁー」
と、全く残念がる様子もなくそう言った。
「じゃあ、仕方ないや、合唱部にだけ入ろうかな」
「あの……合唱部もできるかどうかまだ分からないし」
「でも、つくりたいんだろ? 協力はするよ」
「あ、あの……気持ちはありがたいんだけど……」
「合唱部やりたいってのは、本気だよ? あ、もちろん、真湖ちゃん好きだっていうの本気だけどね。一部員として、部員集め手伝うよ。それならいいだろ?」
「あ、うん…」
「それとは別に、俺は真湖ちゃんのことは諦めないからね」
「だから、それはことわ……」
翔は真湖に皆まで言うなと、手で制した。
「うん、今はね。今は」
そう言って、翔は立ち上がり、
「次、教室移動だよ」
教科書を持って教室を出た。
「いけすかねぇ野郎だな……」
翔が出て行った後に、心配そうに阿修羅と乃愛琉がやって来た。
「あ、あっしゅ、さっきはありがとね」
「いや、別に……。次の教室行こうぜ」
「うん」
阿修羅は照れ隠しに、踵を返して先導するようにして、教室を出た。
「真湖ちゃん、あの人大丈夫かな?」
「ん? エンリコくん? 悪い人ではないと思うんだけどなぁ……」
「それはそうだけど……なんか、部始まった後、もめ事にならなければいいんだけど」
「でも、あたしは来る者拒まず、去る者食わずだから」
「去る者追わずでしょ?」
「あ、そっか」
二人して見合って笑った。
「それより、真湖ちゃん、どうなの? エンリコくんのこと?」
「どうって、だって、昨日会ったばっかりなのに、分かんないじゃん」
「まあ、そうだけどね。でも、ちょっと格好よくない?」
「え? 乃愛琉、タイプなの?」
「ううん。全然。でも、うちのクラスの女子は気にしてる子多いみたいよ。ほら」
乃愛琉が指さす先に、翔が女の子たちに囲まれながら、廊下を歩いている様子が見えた。
「ねえ、エンリコくん、どうして、煌輝さんなの?」
その時、翔は遠慮しない女子達に質問攻めにあっていた。けれど、全く動じる様子もなく
「俺はね、行動的な女の子が好きなんだ」
「ねーねー。札幌の小学校だったんでしょ?その時ガールフレンドいたの?」
「どうして石見沢に来たの?」
行動的な子が好きと言われて、我先に自己主張しようとする女子達に、さらにもみっくちゃにされていく。
「けっ。なーにが、行動的な女子が好きだって」
男子の一部は、エンリコのあけっぴろげな所に嫌気がさしていたし、その他の男子はただ呆気にとられているだけだった。どちらにしろ、もし彼と同じように気になる女子ができたところで、自らああいう風に、人前で告白しようなんてできやしないと思っているのだった。
そういう意味では、今日の出来事は彼らには全くの新境地であり、アニメや小説で見聞きはしたことはあるが、まだ自分たちでは体験したことのない、青春の扉が開いた瞬間であった。




