第3コーラス目「告白!」その2
新連載「Nコン!」第3話目です。続けてお読みいただきまして、ありがとうございます。
煌輝真湖は、小学校を卒業したばかりの中学1年生。従兄妹の翔平が果たせなかった、合唱部で全国大会に出場するという夢を果たすべく、合唱部に入部を希望していた。ところが、合唱部は2年前に廃部になっており、指導する先生もすでに他界していた。
前途多難の船出にもめげずに、放送局をハイジャックして、全校放送で合唱部入部希望者を募る。クラスメートの塩利己翔が第一希望者を名乗り出るのだが、代わりに付き合って欲しいとみんなの前で告白する!そして、真湖は……?
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ホームルームの最中は始終クラス内、こそこそ話。もちろん主に真湖と翔の話で盛り上がっていた。女子の一部では、止めに入った阿修羅との三角関係疑惑に花が咲いていたり。当の本人である、真湖は赤い顔が治らず、ずっと下を向いたまま。阿修羅は翔を睨んだままだったが、その翔はというと、変わらず飄々(ひょうひょう)とした顔で、隣の女の子と軽口を叩いていた。
英美先生は時折、
「はいー、静かに-」
と声は掛けるものの、淡々をホームルームのお知らせを読み上げて、時間通りに切り上げた。
ホームルームの時間が終わると、今度は女子が真湖の周りに集まった。
「ねーねー、どうするの?」
「剣藤くんって、真湖ちゃんの幼なじみなの? カレシじゃないの?」
「ねー、どっちの方が好み?」
と、ワイドショー並の取材攻撃が開始された。
「あ、いや、その……」
赤い顔がとれずに、ただオロオロする真湖。超気になる気配をみせる阿修羅だが、今度は女子相手なので、手が出せずに遠目に見ながら、ヤキモキするだけだった。
そこに、
「ちょっと、真湖、トイレ付き合って」
と、灯が女子の輪に入って行って、真湖の手を引っ張った。
「ちょ、っと……灯ちゃん?」
突然手を引っ張られて、真湖はびっくりしたけれど、されるがままに灯に連れられて、教室を出た。
「あんた、ばっかじゃない!?」
トイレに駆け込んだ途端に、灯が真湖を罵倒した。それから、鏡に向かって髪を整えるフリをしながら続けた。
「なに、あんなヤツにへらへらしてんのよ!」
「いや、あたしは……そんなつもりじゃ……」
「だったら、ちゃんと断りなさいよ。そもそも、あんた隙だらけなんだから、昔っから」
狼狽する真湖に灯は容赦なかった。灯はポケットから取り出した櫛で、腰まで伸ばした長い黒髪を梳いた。髪質は真湖とあまり変わらない、ツヤのある黒髪。ポニーテールにしている真湖と違って灯はそのままストレートにしている。顔立ちが通っていて美形なのだが、性格がクールすぎるため、小学校ではむしろ『怖い子』のイメージが強かったらしい。ただ、真湖は灯のことを怖い子とは思ったことはないのだけれど。
「そんなんだから、あんなヤツに変に声かけられるんだから。いい?ちゃんと断りなさいよ、合唱部に入るのも。
大体、入部する代わり付き合えとかって、あり得ないから!」
「あ、そうだね……」
灯にそう言われると、真湖の頭もかなり冷静になった。確かに灯の言う通り、入部する代わりにという条件付けなんかするあたり、彼の言うことはおかしい。
「そういうことに気付いてないんだから、本当にあんた、頭弱いんだから!」
灯は櫛をポケットに戻すと、顔を伏せてから続けて、
「それからね、あっしゅにはちゃんとお礼しておくのよ!」
と言った。
「うん」
真湖は大きく頷いた。
「あ、灯ちゃん」
「なによ?」
「ありがとね」
クラスの女子からの取材攻撃から抜け出せたのも、突然の出来事に頭が混乱しているのを冷静にしてくれたもの、灯のおかげだった。
「もう授業始まるから戻るわよ!」
灯はそれには答えず、トイレを出て教室に向かった。真湖は鏡に向かって両の頬をペチペチと叩いてから灯の後を追った。




