ご馳走様でした。パンダ豚の串刺し。
亜熱帯のジャングルのような茂みの中で少女は獲物を探していた。ところどころ破れたセーラー服を纏い、ポニーテールの頭には一輪のハイビスカスの花が挿してある。つぶらな瞳に整った鼻で愛くるしい顔立ちだ。
「やっと狩りの時間ね。あのパンダ豚をやっつけるわ。ファイトよ。あやめ!」
少女は自分の名をつぶやき、獲物を倒すべく気合を入れる。
パンの木にしがみついているパンダ柄の大きな豚。手足はゴリラのようだが、顔も胴体も豚。あやめは小石を拾い上げるとパンダ豚に向かって投げつけた。小石は見事に豚に命中し、豚は悲鳴を上げながら木から落ちた。あやめが落ちたそばに近づいてみると豚は泡を吹いて絶命していた。
「自分で言うのもナンだけど、脅威的な命中率と威力ね。小石は豚の心臓を貫通しているわ。力を加減しないといろいろと危険ね」
あやめは巨躯のパンダ豚を軽々と持ち上げると、自分のねぐらである洞窟に向かって歩き始めた。
洞窟に向かう途中、あやめは森の中の大きな平石の前で立ち止まり、パンダ豚を地面に下ろした。
「それにしてもお腹、空いたわね。早速、焼いて新鮮なお肉を堪能するとしますか」
あやめはポケットから木製のケースに入った黒曜石のナイフを取り出し、パンダ豚の解体を始めた。
「しっかり血抜きしないと美味しくないのよね。面倒だけど」
少しおぼつかない様子だが、あやめは、なんとか肉を裁いていく。
「うーん、いい感じに出来たわね。そろそろ焼いてみようかしら」
あやめは大きく深呼吸すると、口から燃え盛る炎が吐き出された。解体され、平石の上に置かれたパンダ豚の肉は途中ひっくり返されながら、こんがりと焼き上がった。
「この肉、なかなか美味しいわ。でも、火加減が難しいわね。それに、体力使うし、枯れ木の枝、薪が必要ね」
串刺しにしたパンダ豚の肉の塊を頬張りながら、あやめはつぶやいた。