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序章

推して参る!!



「我は願う!!我は望む!!この混沌とした世界に救いの手を求めん!!」



 とある世界に遥か太古より栄えし王国があった。その王国は長い年月を掛け、幾多の戦いを潜り抜けながら世界を統一し、平和を手に入れた。世界は平和で豊かになり、民は一人残らず笑顔だった…。



「我らに仇名す闇の軍勢を打ち払う剣を!!」


「断罪の光を!!」


「浄化の炎を!!」



 しかし、その平和は突然に終わりを告げた。地の果てに出現し、開かれた冥府の門。そこから現れたのはかつて先代の国王、そして騎士達が地獄へと送りつけた闇の軍勢。平和に慣れてしまった王国は為す統べなく蹂躙され、瞬く間に滅亡寸前にまで追い詰められてしまった…。



「全てを救いし神の御使いを今ここに!!」



 それでも尚、王国は首都といくつかの都市を残しながら闇の軍勢を相手に抵抗を続けていた。限りない絶望に抗い、幾度となく訪れた劣勢を覆しながら王国の民は今日と言う日を迎えることが出来た…。


―――世界の希望、勇者召喚の儀式の日を



「聖なる都、エイシェント王国の御名において命ずる!!」


 エイシェント王国に代々伝わりし伝説…。世界が滅亡の危機に晒された時、圧倒的な力を持ち、神の導きによってこの世界に遣わされ人々の平和と笑顔の為に戦う、まさに物語の英雄。


 その勇者の召喚を行う為の準備にはそれなりの手順と準備が必要であり、その間は自分達の力であの闇の軍勢と戦い続けなければならなかった。だが、それも今日までだ。後は王国専属の巫女と神官たちによる儀式によって召喚される勇者に任せておけば全て解決する。その為だけに今まで戦ってきたのだ…




「我らの呼び掛けに応じよ勇者メルシアス!!」



 

 今までの日々を思い出しながら、今日を迎えれた喜びを噛みしめながら、召喚の義を現在進行形で行っている巫女は様々な思いと感情を篭めて最後の詠唱を唱えた。その高らかで美しい呼び掛けに応えるかのように、王城の地下に急遽設置された儀式上に魔法陣が出現し、目も眩むような閃光が儀式上を満たす。


 やがて魔法陣から溢れた閃光が納まり巫女たちの視界が戻った時、魔法陣の中心にはひとつの人影が佇んでいた。良く見ればそれは、黒髪黒目で黒装束な十代半ば程の少年であった。巫女は自分と大して年の変わらない事に、神官たちは想像以上に若い勇者に驚いた。


―――だが、何よりも驚いたのは…




「あ、あのう……勇者様、ですよね…?」



「……。」



「もしもし?」



「……は、はは…」



「勇者様…?」



 何故か召喚された勇者はナイフを手に持っており、生気の無い虚ろな瞳で乾いた笑いを漏らした。その様子に若干戸惑ったものの気丈な巫女はその勇者に話し掛けた。が、返って来たのは乾いた笑みだ…。


 その場に居合わせた者達は、自分達は何か別の者を召喚してしまったのではと…儀式を失敗してしまったのではないかという不安に駆られたが次の瞬間、それどころじゃなくなってしまった……。




「そうか、今度は勇者か…」



「ちょ、勇者様!?何を!?」




―――なんと勇者は、その手に持ったナイフを自分の心臓目掛けて振りかぶったのだ



 もしかしたら勇者でも何でも無い者を招いた可能性もあるが、流石に目の前で自殺を試みられて黙ってられるほど太い神経は持っていなかった。巫女を含め、その場に居た者達は一人残らず彼を取り押さえてナイフを取り上げた。だが、大勢の人間に組み伏せられ、地に押さえつけられても尚、彼はまるで死人のように光を感じさせない目のまま自身の死を求めた…



「頼む…もう、死なせてくれ……」



「何を仰いますか!?貴方には生きてやって貰わねばならない事があるのです!!」



「そうですぞ勇者様!!」



「どうか我らをお救い下さい!!」



「世界を脅かす闇の軍勢を滅ぼして下さい!!」



 本当に世界を救う為に呼ばれたの疑わしくなるくらい弱々しい声で発せられた懇願は、鬼気迫る巫女と神官たちの言葉によってあっさりと断られてしまった。その状況に彼の表情は一層の絶望に染まってしまったが、遂に抵抗をやめた。それを巫女たちは彼が世界を救う決心をしてくれたのかと勘違いし、安堵の溜息を吐きながらその場に脱力してへたり込んでしまう……依然として勇者は拘束されたままだが…



―――故に彼女たちは、今にも消えそうな小さい声で呟かれた彼の言葉に気付けなかった…

















「……僕はいったい、幾つの世界を救えば終われるの…?」





―――勇者、英雄、救世主…喚ばれた先々で、彼は様々な呼ばれ方をした……



―――そしてその呼び名に恥じぬ精神力と行動力を持ってして、訪れた世界を救い続けてきた…



―――世界の命運と人々の期待を一身に背負い、その心が壊れるまで…



―――これは人知れず六つの世界へと旅立ち、その世界を救うために命を懸けて戦い続けた…そして今この瞬間、七回目の異世界召喚を経験した一人の少年が終わりを迎える物語……



彼が何でナイフなんか持っていたのかは…結構、重要な意味があったり…

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