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【悲報】東京のJK、妖精と青春中に“想いのスキル”発動したので恋愛とバトル開始します。-シーズン1-  作者: 新発田 怜
3章 - Kapitel Ⅲ - 国民国家の幻想 編

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第11話:黒の妖影

 その頃、陽菜たちは森の中にいた。戦闘終了の報は、まだ敵兵には届いていない。

 薄暗い木々の隙間を抜け、三人は一人の米特殊部隊員の目前に姿を現した。


「Civvy... a kid??(民間人……子供か?)」


 最初に姿を現した陽菜を前に、米特殊部隊員は銃を下ろした。民間人だと思ったのだ。


「グッド・イブニーング♪」


 陽菜が笑顔で微笑む。

 だが、背後からエレナが瞬時に突進し、米特殊部隊員の首を締め上げる。


「ぐぐぐ……!」


 米兵はそのまま気絶した。


「ごめんなさい」


 陽菜はポツリと呟く。それを見た、別の米特殊部隊の隊員が気づいて自動小銃を構えた。

 だが、今度は彩華が白い矢を放つ。 矢は胸を正確にとらえ、衝撃だけを叩き込んだ。米特殊部隊員は後方へ吹き飛び、木に激突すると、そのまま地面に崩れ落ちた。

 

 だが、敵だけじゃなく見方も潜んでいるはずだ。下手に動けば、誤って自分たちが撃たれてしまう危険もある。

 彩華は警戒を滲ませ、低く呟いた。


「カッコよく出てはみたものの……あまり暴れまわると、撃たれちゃいそうね」


 エレナも頷き、耳を澄ます。


「銃声っぽい音も……止んだみたいだし」


 陽菜が黙って頷くと、心の中で呟いた。


(蓮……無事でいて……)


 その時だった。森の奥深く、闇の中で、三つの人影がぬるりと動いた気配がした。


 陽菜が息を呑む。


「いま……なにか、動かなかった?」


 エレナと彩華は互いに視線を交わす。


「特に、何も……」


 そう答えながら、エレナは陽菜の方を振り返ると、はっと息を呑んだ。


「陽菜っ!!」


 その矢先、黒い影の一体が地を蹴り、陽菜に向けて一直線に突進してきた。風を切る異様な音。人間離れした速さ。


「っ……!」


 黒い影が腕を振り下ろす。刃のような一撃を、陽菜は反射的に白い帯を展開して受け止めた。

 衝撃で腕が痺れ、足元の土が抉れる。


「なに、コイツ……」


 エレナが鋭く叫ぶ。


「人間じゃない!!」


 彩華の目が細まった。


「……妖か!」


 そう言う間もなく、黒い影が陽菜から離れ、宙に浮いた。そして、そばに倒れている米特殊部隊員の自動小銃を自在に操る。

 その自動小銃は、静かに宙を舞ったのち、陽菜たちへ向かってフルオートで乱射を開始した。


 パパパパパッ!!


 消音器を通した乾いた銃声とともに、鋭い弾丸の雨が陽菜たちを襲う。

 エレナがとっさに結界を開いた。だが、貫通力は想像以上で、結界は弾丸の猛威に抗えず、数発だけ持ちこたえたのち、粉々に粉砕された。


「無理っ!」


 三人は瞬時に弾丸を避けるよう散開する。銃声は激しさを増すが、突如として止まった。弾丸が尽きたのだ。

 そして、再び静寂が訪れた。三人は黒い影と向き合う。


 陽菜は声を張り上げた。


「いきなりとは、ずいぶんと乱暴ね。ほかの二体と一緒に、自己紹介しやがれっ! クソがっ!!」


 言い終えるや否や、陽菜は想願空虚を展開した。

 それは陽菜の心の姿。夕焼けの色を映した砂浜、その向こうの海には、無数の光ファイバーのような束が広がり脈打つように輝いていた。


 そこに現れたのは三体の妖だった。

 後方から二体が、陽菜を襲った黒い影に付き従い、その左右に立つ。


 妖は三体ともに鳥の顔をし、大きな翼が背中にあった。

 陽菜を襲った中央の妖は、まるで鴉のようで、黒く艶めく羽毛に包まれている。白と黒の山伏装束のような出で立ち、赤い(くちばし)が光を反射する。琥珀色の瞳が冷たく輝いた。


 左の妖は鳩のような白い顔を持ち、白と赤の山伏装束。青い嘴と琥珀色の瞳が、どこか静かな威圧感を漂わせている。


 右の妖は鴎のような白い顔。黄色い嘴と琥珀色の瞳を持ち、灰色の山伏装束。左の妖同様、不気味な威圧感を放っていた。


 三体の妖は砂浜に沈黙を落とす。やがて、中央の鴉が口を開いた。


「まずは挨拶と、とらえてもらおうか。だが、まさか防がれるとはな……ケケケケ。しかも、他のふたりにも気づいていたとは。なかなかだね、アンタ……いや、王気のおかげかな。」


 彩華が構えながら怒声を吐く。


「名前くらい言えよ、焼き鳥野郎がっ!!」


 中央の妖が低く笑って答える。


「俺の名は、鴉焔(あえん)


 左の妖が静かに口を開く


「我の名は、鳩宇(きゅうう)


 右の妖が重く告げる。


「手前の名は、鴎弩(おうど)


 三体の妖の名が、夕焼けの砂浜に冷たい余韻を残した。


 彩華が睨みながら言う。


「それで、クリスマス前に、フライドチキンになりに来たの?」


 鴉焔が低く、大きく笑う。


「ケーケケケケ……。あんた、面白いね。もちろん、君たちを倒しにきたんだよ」


 陽菜が眉をひそめる。


「なんでウチたちを倒すんだよ。イミフだな」


 鴉焔は声を震わせて笑う。


「ケーケケケケ……。わかってるだろ。鴉にとって、アンタ達が邪魔だからだ」


 陽菜が強く返す。


「いや。全く意味がわからん!」


 エレナと彩華も同時に頷く。


「「まったくわからん!」」


 鴉焔はきょとんとした声で言う。


「アンタたち、なにも知らないのか? ケーケケケ!! こいつぁお笑いだぜっ! アンタたちは裁定者の資質があるんだよ。だから、いられたら困るのさ。」


 陽菜が眉をひそめる。


「ますます、意味がわからないです」


 エレナが言う。


「でも、一つだけ分かったことがあるよ」


 彩華も続ける。


「そうだね。こいつらは敵だってことがね」


 三人は頷き合った。


 鴉焔が低く、不気味に笑い声を漏らす。


「ケーケケケ! そうだね。だから、もうお話は終わりだっ!!」


 そう言うと、鴉焔の鋭い爪の付いた手元に淡い黒い輝きが現れた。それは刀の形を浮かび上がらせ、輝きが凝縮し、実体を得ると同時に冷たい鋼の光を放つ。

 鋭い切っ先が、冷たく光を反射しながら、陽菜へと向けられた。


「キェェェェーーー!!」


 鴉焔は砂を蹴散らし、滑空するように陽菜へと突進すると、陽菜に刀を振り下ろした。陽菜は瞬時に白い帯を刀のように展開し、鴉焔の攻撃を受け止める。


 攻撃を受け止めたまま、陽菜が口を開く。


「ウチはね、”なんとか者”には興味ないんだよ。ただ普通に暮らしたいだけ。でもね、エレナや蓮たちを傷つけるなら、ぶっ潰す!」


 鴉焔が低く返す。


「その威勢、どこまで持つかな」


 陽菜は鋭い目つきで言い返した。


「ここは、ウチのホームグラウンド。アウェーのアンタに負けてたまるかよっ!」


 鴉焔はさらに低く笑うように声を響かせた。


「いいね~。その目つき」


 エレナが叫ぶ。


「陽菜っ!!」


 エレナは陽菜を援護しようと前に踏み込んだ。

 だが、その瞬間、鳩宇が鋭い羽音を立てながら割り込み、彼女の進路を遮った。


「お前の相手は、こっちだ!!」


 鳩宇は鋭い爪をぐっと突き出し、エレナに斬りかかる。爪先が空気を裂く音が鋭く響くと、エレナはとっさに身を翻し、地面を蹴って斜め後方へ回避する。

 爪先は彼女のすぐ後ろで砂を削り、鋭い衝撃と砂埃だけを残した。


「ぼんじりめっ!」


 エレナは手を前に突き出し、構えを取った。


 陽菜は構えながら視線を横に向ける。彩華の元にも魔の手が迫っていた。


「陰陽師の娘は手前が相手いたす!」


 鴎弩が轟くような叫びを上げ、鋭く突進した。

 刀を二刀流でクロスさせ、その切っ先が陽光を受けて鋭く光を反射する。


 シュッ!


 空気が鋭く裂ける音が響き渡った。彩華は咄嗟に地面を蹴り、後方へ跳び退く。

 刀が通過した瞬間、強烈な風圧が頬を打ち、細かな砂塵が舞い上がった。

 彩華は間一髪で攻撃をかわす。


「まとめてパーティーバーレルにしてやるっ!!」


 彩華は足元で砂を蹴り上げ、低く唸りながら構えた。


 その瞬間、三人三様の死闘が始まった──。


 --------


 ──別荘の一室。モニターには、陽菜たちの様子が映し出されていた。

 自衛官のオペレーターが眉をひそめ、声を上げる。


「なにか、不審な動きがあります」


 黒羽と藤堂が画面を凝視する。

 藤堂が低く口を開いた。


「きっと、あの子たちだ」


 その声に反応し、蓮と竜司、そして時女がモニターに視線を集める。

 時女が小さく、しかしはっきりと呟く。


「あれは……鴉、もうここまで……」


 蓮と竜司が互いに視線を交わす。

 蓮が問いかける。


「からす……?」


 時女が蓮の言葉に答える。


「妖の一族のことだよ……」


 その直後、モニターの画面が僅かに揺れ、映像から陽菜たちの姿が忽然と消えた。

 オペレーターが焦り声で報告する。


「……映像から対象者が消えました……」


 時女が静かに言った。


「帳に入ったのね……」


 その言葉に、蓮と竜司は一瞬視線を交わし、無言で頷きあうと、拳銃(Glock17)を手に取ってすぐに駆け出そうとした。


 だが、時女が両手で蓮と、竜司の腕を掴む。


「待って。帳は想い次第で変わる。時間も歪む。行っても間に合うとは限らないのよ」


 その言葉が響くと、蓮と竜司が身につけるブレスレットの宝玉が淡く光を放つ。それに呼応するように、二人の瞳が琥珀色へと変わった。

 蓮は、宝玉の輝きを見て、口を開く。


「時女さん……、行ってみます」


 竜司も静かに頷く。


「なんか、間に合いそうな気がするんです」


 そう言い切ると、ふたりは躊躇なく走り出した。

 藤堂はそれを見て慌てて、声を張り上げる。


「ちょっと! ふたりともっ!」


 だが、ふたりはその声を無視し、陽菜たちのいる森へと全力で走り出した。

 時女はモニターに映る光景をじっと見据え、低く呟く。


「これは……本当に、彼女たちにとって試練になるんだね……」


 その言葉には、時女にいいしれぬ不安が宿っていた──。

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