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【悲報】東京のJK、妖精と青春中に“想いのスキル”発動したので恋愛とバトル開始します。-シーズン1-  作者: 新発田 怜
3章 - Kapitel Ⅲ - 国民国家の幻想 編

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第6話:時女の作戦

「第一回・時女杯! 大ボーリング大会ぁぁぁっ!! いえーーい!!」


 時女(ときめ)の大声に、周囲の客がざわつきはじめる。


「……い、いえーい……」


 一同は恥ずかしさを隠せず、気の抜けた声で返すしかなかった。


 陽菜がおずおずと手を挙げる。


「あ、あの……?」


「はいっ!! 佐藤陽菜さんっ!!」


 勢いよく指差す時女。


「これ……ほ、本当に作戦なんっすか……?」


 陽菜は呆れ気味に尋ねた。


 本日、一行はなぜか都内のボーリング場に来ていた。玉藻や翅脈と同じく、時女も瞬時に移動できる能力を持つ。

 そのため、東京の佐藤家近くのボーリング場で集まっていた。  

 彼女の服装は、以前の花魁姿とは打って変わって、ゆったりしたジーンズにトレーナーというラフな格好だった。


 時女の説明によれば──


「動画を撮ってアップすることで、敵にこちらの行動を“わざと”見せる」


 さらに、


「行動予定を事前告知すれば、敵の出方も把握できる」


 らしい。だが、一同からすれば、どう見ても再生数稼ぎの企画にしか思えなかった。


「ではチーム分けを発表します!」


 時女が勢いよく口を開く。続けて宣言した。


「チーム玉藻 → 陽菜ちゃん、エレナちゃん、玉藻ちゃん!

 チーム時女 → 彩華ちゃん、翅脈ちゃん!、時女

 撮影係は蓮と竜司の二名! お前ら頼んだぞっ!!」


 蓮と竜司は同時にぼやいた。


「「今回も、俺らだけ呼び捨て……」」


 翅脈は(しみゃく)胸を張り、人間化した姿で答えた。


「大丈夫! アタイが全部倒すので!」


 彩華も声を上げ、エールを送る。


「おうよ! 翅脈!! スクラム組んだら、ボールをパスして!!」


 蓮と竜司は小声で呟く。


「「こいつら、ルール知らねーだろ……」」


 もちろん、そんな声は届かず、勢いのままにボーリング大会は始まる。


 本当はサッカーか野球の予定だった。

 だが人数不足と怪我の心配で、急きょ変更されたのだ。


 ──それは一時間前の会話だった。


「サッカーも野球もダメ! ウチら美人にケガは禁物なのだ!」


 陽菜が主張し、彩華も同意する。


「そうそう、顔が資本なんだから!」


 こういう時だけふたりは妙に気が合う。


「それに、ウチは“玉転がし”苦手なの!」


 陽菜がぼやくと、彩華は勝ち誇ったように笑う。


「あら、あたしは得意よ。最近、いろんなところで転がしてるわよね、竜司?」


 竜司は無言で頷く。陽菜も負けじと声を張った。


「んだと!? ウチだって蓮と放課後にいっぱい転がしてるわ! ねーー、蓮!」


 蓮は困惑しながらも、曖昧に頷きつつ呟いた。


「……え、何の話?」


 そのやり取りに彩華が即反応。


「はぁ!? 付き合って半年そこらの初心者が玄人ぶんな!」


 陽菜はムッと頬をふくらませ、すぐ言い返す。


「ウチは彩華と違って、蓮の“あんな願い”も“こんな願い”も聞いてあげてるわ!」


 彩華は負けじと言う。


「はぁ?あたしだって、竜司のリクエストで外でチャレンジしたり、ノーパン通学だったりしてるわ!」


 その言葉にエレナは、なぜか深く頷いて言った。


「んー、たしかに、ノーパンは彩華の勝ちだね~」


 そんな変態じみた会話を堂々としていると、周りの客がざわめき出す。

 しかし、ふたりはまるで気にせず、顔を突き合わせて言い合いを続けていた。


 見かねた玉藻が、氷のような眼差しで一言。


「……下品な。クソが」


 その視線に射抜かれ、ようやくふたりは口をつぐんだ。

 陽菜が小声でぼやいた。


「玉藻さん……現代語使うとマジで怖いっす……」


 彩華もビクビクしながら、しどろもどろに謝る。


「さ、さーせん……」


 エレナは、まるで他人事のように腕を組んで頷いた。


「まったく、ふたりとも」


 それを聞いた陽菜が、エレナの頭をげんこつグリグリしながら言う。


「エレナもノーパンのくだり、入っただろが!」


 ──そんなやり取りが一時間前に繰り広げられた末、ボーリング大会が始まったのだった。

 もちろん、これが作戦だと事前に知らされていれば皆、他の案を提案していたことだろう。


 ということで、1フレーム目の結果。


【チーム陽菜】

 陽菜の1フレーム目 → ガーター

 エレナの1フレーム目 → ガーター

 玉藻の1フレーム目 → ガーター


【チーム時女】

 彩華の1フレーム目 → ガーター

 翅脈の1フレーム目 → ガーター

 時女の1フレーム目 → ガーター


 蓮と竜司は顔を見合わせると、蓮は絶叫した。


「全員ガーターかよーーッ! ありえねーぞ、こいつら!!」


 彩華が指を突きつけて笑い出す。


「おめーら! めっちゃ下手くそやんけ!」


 すかさず陽菜が噛みついた。


「テメーも、ウチらと変わらんやろが! クソがっ!」


 エレナも指を突きつけて噛みつく。


「そうだそうだ! 彩華の方がよっぽど下手っぴ!!」


 竜司は、ため息をついて呟いた。


「……いや、彩華も大概だろ」


 2フレーム目に突入した──


 「うぉりゃぁぁぁ!」


 勢いに反して陽菜の投げたボールは、ひょろひょろと力なく転がっていく。

 おそろしく遅い。見ている誰もがガーター確定と思ったその瞬間──

 突然、陽菜の背中から白い帯が伸び、ボールの進路を無理やり修正した。


 それをみた彩華が即座に叫ぶ。


「きったねーぞ!」


 だが、陽菜はにやりと笑い、余裕の口調で言い放つ。


「勝ちゃいいんだよ、勝ちゃぁ~」


 帯に操られたボールは急加速し、見事ストライクを決めた。


「おっしゃぁぁぁ!!」


 陽菜は飛び跳ねるようにガッツポーズをし、大喜びする。


「……え? マジ? めっちゃピュアに喜んでる……」


 蓮は思わず呟いた。


 次は彩華の番だった。

 投げられたボールはやっぱり、ひょろひょろ……ガーター直行コース。

 こちらもおそろしくクッソ遅い。


「ちっ……」


 彩華は舌打ちすると手をかざし、白い矢を放った。

 ボールの転がりに関係なく、白い矢がピンを射抜く。当然、ストライクだ。


「きったねーーぞ! 卑怯者!!」


 陽菜が逆ギレするように叫ぶ。

 彩華は振り返り、同じ笑みで返した。


「勝ちゃいいんだよ、勝ちゃぁ~。……そうなんだろ?」


 陽菜はぎりっと唇を噛み、怒りをこらえるしかなかった。


 次はエレナの番だった。

 ボールを持ち上げると、そのまま勢いよく振りかぶって──


「ふんっ!!」


 投げたというより、まるで砲弾のようにボールが飛んでいく。

 ピンを粉砕する勢いで、見事ストライクを出した。


「どんだけばか力なんだよっ!!」


 竜司は思わず叫んだ。


「やったぁぁぁ!!」


「エレナ、カッコいい! いえーい!」


 エレナはガッツポーズで飛び跳ね、陽菜と勢いよくハイタッチを交わす。

 だが、一同がさらに驚いたのはそのボールは、陽菜たちのレーンではなく、隣のレーンでストライクを叩き出していたのだ。


 蓮がツッコミを入れる。


「どこ投げてんだよ!!」


 彩華も同様のツッコミだった。


「隣投げてるだろっ!!」


 だが、本人はふたりのツッコミなど、まるで気にしていなかった。


 次は翅脈の番。

 手をかざすと、魔法陣がパッと浮かび上がる。すると三つのボールが宙にふわりと舞い上がり、ピン目掛けて一直線に飛んでいった。

 もちろん、結果はストライク。機械が壊れそうな勢いである。


「蓮様! アタイもストライクなので!!」


 翅脈は笑顔で蓮にハイタッチを求める。蓮は顔を青ざめさせながらも、しかたなく応じた。


「いや、ボール触ってもねーし……」


 蓮の呟きと同じくして、陽菜が翅脈に向かって叫んだ。


「西洋の術は卑怯だろ!!」


 彩華も頷きながら同意する。


「うんうん。ここ、日本だしな……」


 翅脈は慌てて、目を大きく開いた。


「え? 彩華姐さんは、味方っすよね!?」


 そして、主将である玉藻と時女の出番となった。

 しかし、ふたりはもうボールを持つ様子すらない。


 先行の玉藻が手をかざす。


風息(ふそく)よ……」


 そう言うと、空気の気弾を勢いよく放った。もちろんストライクである。


 彩華が思わず叫ぶ。


「めちゃくちゃじゃねーか! せめてボールは使えっつーの!!」


 陽菜も負けじと反論する。


「いいじゃねーか! ストライクはストライクなんだよ!」


 彩華と陽菜は歯ぎしりしながらいがみ合い始める。

 その様子を見ながら、竜司が呟く。


「これじゃー、勝負は同点だな……」


 蓮も頷いた。


「うんうん。こりゃ勝敗決まらんな」


 その声を聞いた玉藻が小さく呟いた。


「そうなのか……」


 そして、最後に時女の出番となった。

 同じく、時女も手をかざす。


風息(ふそく)よ……」


 そう言うと、空気の気弾が勢いよく飛び出す。当然、ストライクになるはずだった。

 しかし、レーン途中に張られた結界がそれを阻んだのだ。


「えええぇぇぇぇぇぇ!?」


 全員が叫ぶ。

 時女が横を見ると、玉藻が手をかざしていた。結界を張って阻止していたのだ。


「な……なにするんじゃ。ぼけがぁぁ!!」


 時女が叫ぶ。


「うむ。勝負が決まらないのであれば、時女には負けてもらう」


「順序として、時女が負ける以外に勝負は決まらない。それに、わらわは勝たねば嫌じゃ」


 その言葉に、蓮は衝撃を受ける。


「いやいや、理論的には間違ってないけど……」


 竜司も思わずツッコむ。


「絶対に言ってることがおかしい……子供かよっ!」


 その瞬間、空気が一気に張り詰めた。

 俯く時女の拳に力が入り、全身を黒いオーラが包む。稲妻のような光が走り、一同は驚愕する。


「玉藻ちゃんは、そうやっていっつも僕の邪魔をするんだ……」


 床がみしみしと軋み、この建物を破壊しそうな勢いだ。

 玉藻もそれに呼応したのか、無意識に戦いの構えを見せた。


 その時、お店の店員がやってくる。


「すいません。ほかのお客様のご迷惑になるので……」


 その言葉を聞くや否や、陽菜と彩華は玉藻を、エレナと翅脈は時女を羽交い締めのようにして店から引っ張り出した。


「なにをする」


 玉藻が叫ぶと、時女も負けじと声を上げる。


「ちょ、ちょっと……」


 蓮と竜司は店員やほかの客に平謝りしながら一行を連れ出す。

 周囲の視線が一斉に注がれ、場内は騒然となった。


 --------


 正直、“撮れ高”はさっぱりわからない。

 だが、ボーリング大会は無事?に終了した。


 時女もご機嫌を取り戻しているようだ。

 そんな時女が口を開く。


「よし! これであとは動画を編集してアップする。そして、次回予告として、別荘でBBQ大会を告知するのだ」


 エレナが小声で心配そうに言った。


「それで、本当に大丈夫かな……?」


 時女が自信たっぷりに答える。


「大丈夫! あとはドローンとか駆使して、敵が勝手に見つけてくれるよ。それにね、その日は日米合同演習があるの。恰好のターゲットになるんだ」


 竜司が納得したように頷く。


「なるほど、どさくさまぎれってわけか」


「そういうこと。日本のお偉いさんも、一役買ってくれるから心配無用だよ。僕に任せて!!」


 時女の言葉に、今度は玉藻が口を挟む。


「時女は占術以上の予言じみたことが出来る。心配する必要はない」


 陽菜がエレナに声をかける。


「エレナ、あとは時女さんに任せよう」


 時女は自信満々に胸を叩いた。


 --------


 そして、動画がユーチューブにアップされた。

 今回も前回同様、彩華の家のリビングで鑑賞会が行われる。


 言うまでもなく、コメントを見た陽菜と彩華は、徐々に不機嫌になっていった。



 <玉藻さん今回も美人w>


   :

   :


 <エレナかわいいw好きww>


   :

   :


 <翅脈って子、ロリ系にはヒットするだろw>


   :

   :


 <時女さんは安定の可愛さだなw>


   :

   :


 <この四人のコラボもっと見たいwww>



 陽菜が叫ぶ。


「くそがぁぁぁあああああああ!!」


 彩華も負けじと叫ぶ。


「ああああああああーーやってらんねーーー!!」


 ふたりの絶叫は、今回もいつも通りのご機嫌ぶりを示していた。

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