表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
【悲報】東京のJK、妖精と青春中に“想いのスキル”発動したので恋愛とバトル開始します。-シーズン1-  作者: 新発田 怜
2章 - Kapitel Ⅱ - 陽菜と九尾の狐 編

この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

68/99

第26話:記憶と歓喜

「もう、陽菜たちのところに戻れない……」


 それは、エレナの心の奥底からの叫びだった。

 陽菜は白い帯を高くかざし、その帯を媒介にしてエレナの心の中に入り込む。

 そこは、二人の想いが交錯する空間――光と光が重なりあう世界だった。


「そんなことない!!」


 陽菜は優しく微笑み、強く声をかける。


「はやくおいで、エレナはエレナでしょ!!」


 だが、エレナは顔を背け、拒絶した。


「ありがとう……陽菜。でも、わたしは人を殺めるために生まれた存在……」


「もう、人の世界にはいちゃいけないの……。だから、あの時、玉藻は帰ろうって言ったんだ……」


 陽菜はきっぱりと言い返す。


「だったら! これからもウチたちを助けてよ!!」


 そして陽菜は、ひとつの記憶をエレナに差し出す。

 それは円い玉の中に詰まった、エレナの中に存在する記憶の断片だった。


「ねぇ、見て。これ、ウチが見つけたエレナの記憶の断片……ほら、こういうのもあるんだよ。覚えてるでしょ?」



 ――それは冬の空。雨上がりの日だった。

 

 エレナが、ぽつりとつぶやく。


「ここ、どこ? なんでここにいるんだろ……」


「翅も消えて……長い間の記憶がない……思い出せない……」


「はやく朝廷に帰らないと……え、それってなんだろう……妖精の世界?」


 ひとり言のように続けるエレナ。小さく震える声に、寂しさが混じっていた。


「さむいなぁ……あ、ここ見つけた……」


 そう言うと、どこからか男の声が聞こえる。


「……君、誰?」


 ふと顔を上げると、そこには高校生が座っていた。

 それは公園のベンチでの出会いだった。


「君こそ、誰? 人間の子……だよね?」


 エレナは不思議そうにその高校生を見つめる。高校生は屈託のない笑顔で微笑んでいた。


「エレナ……私は、エレナ。翅のない妖精、だよ……」


 少年との言葉をつなぐために、咄嗟に口にした名前――エレナ――は、偶然にもその公園に放置されていた看板、パチンコ屋の名前だった。

 カタカナだけは、彼女の記憶にかすかに残っていた。



 ――次の場面。高校生の少年、エレナ、そして一人の女子高生は、街をぶらぶらしていた。


 ケーキ屋に入り、買ったケーキを持って三人でベンチに座る。


「はい、エレナ。想像でいいから」


 ベンチでその女子高生がエレナにケーキをスプーンに乗せて見せる。


「うん……おいしい気がする……」


 屈託のないエレナの言葉に、女子高生は微笑んだ。


 ――そう、これは陽菜の父・康太と、母・結衣とのかけがえのない記憶……想い出だった。


 陽菜は力を込めて言った。


「エレナには、お父ちゃんとお母さんとの想いだって、ちゃんとあるんだよ!!」


「それに……」


 そう言うと、陽菜はもう一つの記憶の玉を差し出した。



 ――それは、引っ越し直後の一戸建てでの出来事。荷物を片付けているときだった。


「わあ……ちっちゃなおんなのこだ!」


 映し出されたのは、五歳の陽菜だった。


「うん、あなたは陽菜ちゃんだね」


 幼い陽菜は屈託のない笑顔を浮かべて答える。


「うん、そうだよ。キラキラしてるね」


 その言葉に、エレナは優しく微笑みながら言った。


「わたしはエレナ……また会えたね!!」


 幼い陽菜は少し首をかしげ、不思議そうに見つめたが、すぐに屈託のない笑顔で返した――

 その瞬間、エレナの心の声が聞こえた。


(ただいま……)


 鮮明に蘇るエレナの記憶が、陽菜の目にも映る。

 陽菜は、エレナに言った。


「前に、美佳さんが言ってたでしょ。”今の気持ちを大切にして”って」


 それは、夏の海辺で出会った”想いの女性”との会話。

 その声色や、潮の匂いまでが、ありありと蘇ってくる。


 エレナは思わず目を伏せ、そして玉の中に浮かぶ光景を見つめた。

 次々と現れる小さな記憶の玉――笑い合った日々、涙を分け合った瞬間、抱きしめた温もり。

 そこには、自分と陽菜、そして出会いを重ねてきた人々の姿が、柔らかな光となって織り重なっていた。

 それはまぎれもなく、繋がりの証だった。


「うまく言えないけど……今を大切にするんだよ!!」


 陽菜はそう言いうと、真っ直ぐに手を差し伸べた。


「それに、今はウチたちがいるじゃん!」


 陽菜の言葉に、エレナの心が少しずつほぐれていく。エレナの瞳が揺れ、わずかに涙が光る。

 だがその瞳には、恐怖や絶望はなく、希望だけが宿っていた。


「……うん、陽菜……ありがとう」


 陽菜の言葉で、エレナは自分がどんなときも孤独ではないことを改めて知る。いつだって、陽菜が味方でいてくれる。

 そしてエレナも、陽菜に手を差し伸べた。二人の手が触れ合うと、二人の光が重なり、閃光のように輝いた。


「今度は、ウチたちがアイツを倒す番だ! 逃げずに、ウチと一緒に行こう!!」


 陽菜の言葉に、エレナは力強く頷いた。


「うん!!」


 ――そして、二人は再び想願空虚へ戻り、玉藻と対峙した。

 それだけではない。蓮も、彩華も、竜司も――今は皆が揃っている。


 玉藻は静かにつぶやいた。


『記憶に触れ、想いを共有できたか……。それでよい』


蜻蛉羽(あきづは)よ。揺らぎは消えたな』


 微笑む玉藻を前に、陽菜は気合を込めて言う。


「次はウチたちの番だ!」


 玉藻が答える。


『来い!!』


 その声と同時に、陽菜とエレナは玉藻に向かって突進する。

 陽菜は意識をエレナ、蓮、彩華、竜司と共有する。

 彼らそれぞれの“想い”が重なり、一つの光景として彼女の頭の中に広がった。

 いや、エレナ、蓮、彩華、竜司たちにも同じ光景が映った。


「見える!」


 彩華が声を上げ、力強く玉藻に向かって突進する。


 玉藻は圧縮した空気の気弾を二人に放った。

 だがエレナは手をかざし、素早く空間を操作して気弾を軽々と弾き返す。


『いいぞ! 蜻蛉羽!!』


 蓮と竜司が玉藻の背後に回り込み、蓮は心で陽菜に伝えた。


(右だ!!)


 陽菜は帯を繰り出し、玉藻の腕を抑える。


『……くっ!!』


 一瞬、玉藻の動きを封じた陽菜は、すかさず懐に入り腹部に手をかざす。

 瞬間、青白い球が玉藻に放たれた。


 その勢いはすさまじく、玉藻は吹き飛ばされる。


『ぐう!!』


 玉藻が唸る。

 蓮が、今度はエレナに心で伝えた。


(正面!!)


 すかさずエレナも青白い球を放つ。玉藻は体制を立て直し、これを避ける。


 竜司は彩華に向かって心で伝える。


(今度は頭上だ!!)


 彩華が高く飛びあがると上空から白い矢を放った。


「脳天がら空き!!」


 玉藻は大きく後退し、かろうじてそれを避けた。


『さすが、陰陽師の娘。呑み込みがはやい……』


 その隙に、陽菜はすぐさま次の攻撃に移った。

 帯を素早く旋回させ、玉藻の脚元を刈り取るように打ち込む。


『うっ……!』


 玉藻の体勢が崩れた瞬間、エレナはその背後に飛び移る。

 両手をかざし、青白い球を二連続で放った。

 玉藻はとっさに跳躍して回避するが、その間も陽菜と彩華は連携を止めない。


「行くよ、彩華!」


「了解!!」


 陽菜の声に呼応するように、彩華が高く跳躍し、再び白い矢を連射する。


『くっ……!!』


 玉藻は吹き飛ばされながらも、砂浜に着地し空気を裂く気弾を放つ。

 だがエレナは瞬時に手をかざし、気弾をかわしつつ逆方向に跳ね返す。


「まだだ、玉藻を追い込む!!」


 陽菜の声に、蓮も竜司も玉藻の隙を探り、適宜指示を繰り出す。

 玉藻が後ろに後退しようとして一瞬バランスを崩した。


『しまった!!』


 玉藻が叫んだ。自分でも足がよろけてしまったことに驚きを隠せない。

 陽菜は、それを見逃さなかった、その瞬間、帯を強く巻きつけ、玉藻を拘束した。


「エレナ!」


「うんっ!!」


 陽菜の言葉に、エレナが青白い球を放つ。玉藻の体が光に包まれ、思わず後退した。

 彩華も白い矢を次々に射出し、玉藻の視界を遮る。


『なかなかの連携、天晴である!』


 玉藻は尾を繰り出して、帯を切り裂いて後退する。

 必死に体勢を立て直そうとするが、五人の連携攻撃に押され、徐々に後退を余儀なくされる。


『……まだ……だが、悪くない……!!』


 玉藻の声は焦りを帯びながらも、どこか興奮にも似た響きを持っていた。

 ――この瞬間、戦局は完全に陽菜たちに傾きつつあった。


 陽菜は間髪入れずに叫びながら突進する。


「あははは!! 第2ラウンド開始!!」


 それは、仲間たちとの力を確かめる瞬間でもあり、陽菜の戦いへの歓喜でもあった――。

エレナの記憶の断片シーンは「翅を失い余命を抱えた異世界の妖精<エレナ>と僕たちの小さな奇跡」と一部リンクしております。ご了承ください。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
ツギクルバナー
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ