表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
【悲報】東京のJK、妖精と青春中に“想いのスキル”発動したので恋愛とバトル開始します。-シーズン1-  作者: 新発田 怜
2章 - Kapitel Ⅱ - 陽菜と九尾の狐 編

この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

65/99

第23話:いざ、那須へ

「ぬおぉぉぉぉぉぉぉぉ! ハメやがってー!!」


 本日も陽菜は絶好調だった。

 その叫びが、電車内の個室ルームに響き渡る。


「そんなルール、公式にはねーぞっ!!」


 陽菜の抗議を完全にスルーして、彩華は腹を抱えて笑う。


「バーカ! 旅の勝負はローカルルールがすべてなんだよ! ぎゃははは!!」


 陽菜、エレナ、蓮、彩華、竜司、そして沙耶の一行は那須にいる玉藻を目指していた。

 とはいえ、すっかり”鉄道旅行”になっている。


 個室を予約した一行は、流れる車窓など見向きもせずUNOで勝負していた。


 蓮と竜司の男子組はその勝敗を眺めている。

 当初は参加していたのだが、旅館の部屋割りで揉めた女子組は、UNOの上り順で部屋を決めたいらしい。

 そのため、今は傍観者だ。


(どの部屋も変わらねーーじゃん……)


 それがふたりの率直な感想ではあるが……。


 目の血走っている陽菜を見ながら、沙耶は缶ビールを転がしつつニヤニヤしている。


「陽菜ちゃん、そんなに殺気立ってたら、読まれちゃうよ~」


 そう言いながら、沙耶はカードを出した。


「ドロ-4、赤」


 エレナの番だ。エレナはウホウホのウキウキ気分で笑みを浮かべながらカードを出す。


「ドロー4、赤」


 そして、彩華の番。

 彩華は究極に、にやけながらカードを出した。


「ドロー4、青!!」


 陽菜は青ざめた。

 そして、視線を一瞬ぐっと落とし、呆然とした声を上げた。


「……ない」


 そして、一瞬の間をおいて再び叫んだ。


「ざけんじゃねーーーぞ! クソがぁぁぁぁ!!」


「ぎゃははははは!!」


 彩華はもちろん、エレナも沙耶も大笑いする。

 その様子を蓮と竜司が冷静に見守る中、彩華は追い打ちをかけるように言った。


「はよ取れや、十二枚♪」


「取ればいいんだろが! 取れば!!」


 陽菜は、彩華を睨みつけると、勢いよく十二枚のカードを乱暴に取った。


 その様子を男子組は、青ざめた顔で見つめる。

 蓮は、目の前の光景を思わず頭の中で整理した。


(状況的には、いわゆる“ハーレム”要素のはずなのに……全然、ハーレムじゃない……)


 竜司がこっそりと蓮に耳打ちする。


「たしか、あのふたりってスローライフするとか言ってたよな?」


 その言葉を聞き、蓮の頭には記憶がよみがえった。

 それは、ユーチューブの撮影からの帰り道、陽菜と彩華がふたり並んで歩きながら口をそろえた言葉──


「ウチたち、想いを届けるスローライフをするんだ!」


「日々の暮らしは平穏に……でも、想いや妖が出たら対応する、これがウチのスローライフ」


 彩華もにやりと笑いながら続けた。


「そうそう、危険と日常が絶妙に混ざり合うのが理想よね。スローライフ……というより、ちょっと刺激的なスローライフ?」


 その時のふたりの姿は、笑顔でありながらも底知れぬ強さを感じさせるものだった。

 こう言うところはなぜが意気投合するふたりに、蓮と竜司は笑いながらも、内心ではドン引きしていた。


(……スローライフって趣味とか、のんびり系だから……)


 現在の状況を思い返す。

 目の前には、最強の想い使い、驚異の女陰陽師、玉藻を宿した妖精、そして飲んだくれの唯一無二の魔法使い。

 笑いながらも強烈な破壊力を秘めた女子組の勢いに、蓮と竜司はただただ青ざめるばかりだった。


(付き合わされている俺らは、完全にファストライフだ……)


 その心の声は、当然のごとく女子組には届かない。

 そのとき、沙耶が白いワイルドカードを取り出した。


「ほいっ!」


 カードをテーブルに叩きつけながら、沙耶はにやりと笑う。


「彩華ちゃん、ノリダーのものまね♪」



 --------



 日光からさらにバスとタクシーを乗り継ぎ、一行は目的地へと移動した。


「森羅ふんふん~♪ ピースピース~♪」


 陽菜は鼻歌まじりに座席に揺られている。


「音痴」


 彩華が挑発的に陽菜に言った。


「テメーよりは、うまいわっ!」


「つーか! うぉい、ノリダー!  言葉使いちげーだろ!!」


 そのやり取りを見て、沙耶とエレナは笑い出す。


「んだと、殺すぞ こらぁ!!」


 彩華が言うと、陽菜は余裕の笑みを浮かべて指をさした。


「ぶっとばすぞぉ~ だろが!」


「ぎゃははははは!!」


 陽菜はそう言うと、指をさして笑った。

 その声に、彩華以外のメンバーも大笑いする。

 車内には明るい雰囲気が広がった。


 そんな笑いの中、エレナが少し控えめに声をかけた。


「陽菜、ご機嫌だね~」


「だって、いよいよ玉藻と対戦だしね~」


 その言葉に、エレナは少し俯いた。

 陽菜はすぐに気づき、彼女に向き直る。


「やっぱ……エレナは知りたくない? 自分の出生のこととか」


 エレナはしばし黙ったままだった。

 陽菜は優しく続ける。


「彩華は“前に進めない”って言ってたけど……。知りたくなければ、そのままでもいいんだよ」


 しばらく考えたあと、エレナは首を振った。


「んーん。……わたしも知る必要があると思う。それにね……」


 小さく息を整え、彼女は微笑む。


「最初の時と違って、もう玉藻のことを怖いとは思わない」


 たしかに最初に玉藻が現れたとき、エレナは震えるほど怯えていた。

 しかし、廃墟で再会したときは、落ち着いて彼女に向き合うことができていた。


 その記憶を思い返しながら、陽菜は静かに言う。


「たぶん……怖かったのは玉藻じゃなくて、エレナ自身の秘密だったんだと思う。向き合う覚悟ができたから、怖くなくなったんかも」


「……そうかもしれない。でもね、陽菜と一緒なら大丈夫!」


 そう言ってエレナは陽菜に微笑んだ。

 陽菜も笑みを浮かべ、ヨシヨシとエレナの頭を撫でた。


 一行はバス停を降り、観光地”殺生石”を通り抜け、さらに道路沿いを歩く。

 そのとき、陽菜とエレナの身体がふいに淡く輝き出した。


「……こっちだって、本体が告げている」


 エレナの言葉に、陽菜も迷いなく頷く。


「ウチの欠片も、そう言ってる」


 まるで導かれるように、一行は山林の奥深くへと歩を進めていく。

 朝に出発したはずなのに、太陽はすでに高く昇り、時刻は午後三時に差しかかろうとしている。


「こんなんだったら、玉藻に来てもらえばよかったー!!」


 陽菜が息を切らしながらぼやく。

 道は険しく、足場もごつごつとしている。


「イノシシとか猿とか出てきたらどうしよう~」


 エレナも不安そうに声を震わせた。


「バカ言え。出てきたら蹴散らすだけだろ」


 彩華は涼しい顔で言い放ち、落ちてきた枝を杖のように振ってみせる。

 それを見た陽菜は、茶化すように口を開いた。


「さすがノリダー! ぶっ飛ばしてくれ!!」


 彩華は眉をひそめ、怒りをにじませて言う。


「その前にテメーをぶっとばす!」


 陽菜も負けじと声を張り上げた。


「んだと! クソがぁ! 巻いて巻いて手巻き寿司にしてやろーか!?」


 すると今度は、彩華が余裕の笑みを浮かべ、挑発するように言った。


「そんなことよりさー、早く歩けよ。おっぱいが “ちびノリダー”」


 陽菜の顔が真っ赤になり、むきになって叫んだ。


「んだとコルァァァ!!」


 そんなとき──


「ふふふふふん~、ふふふんだったり、するんだろ~ね~♪」


 唐突に木立に鼻歌が響きわたり、陽菜と彩華は思わず顔を見合わせた。

 そして、続けざまに──


「アリガトウゴザイ~ますっ♪」


 目の前をふさぐように、一人の男が仁王立ちしていた。

 年の頃は四十代後半、腕を組み、こちらを見下ろすように立ちふさがっていた──。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
ツギクルバナー
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ