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【悲報】東京のJK、妖精と青春中に“想いのスキル”発動したので恋愛とバトル開始します。-シーズン1-  作者: 新発田 怜
2章 - Kapitel Ⅱ - 陽菜と九尾の狐 編

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第21話:異変

「蓮! 大丈夫!? ごめん……ウチなんかのために……!」


 陽菜は倒れた蓮に駆け寄り、抱きしめるようにその肩に触れ、優しく問いかけた。

 蓮は苦しげに息を吐きながらも、無理に立ち上がろうとする。


「大丈夫だ……それより、逃げろ!」


 しかし陽菜も立ち上がり、俯いたまま小さく首を振った。

 その声には、揺るぎない決意が宿っていた。


「ウチは。ふたりを守る。だから逃げない」


 続けざまにエレナへ振り返る。


「エレナ、手は出さないで。蓮を見てあげて」


「……うん。わかった。でも、大丈夫なの?」


 エレナの声には不安がにじんでいた。


「問題ナッシング」


 陽菜は軽く笑い飛ばしてみせると、今度は男たちへと視線を鋭く向けた。


「おい。ウチを前と同じだと思うな」


「ダーリンを怪我させた罪は重い。死に値する」


 その凍りつくような声音に、エレナでさえ思わず息をのんだ。

 傍にいるスプリガンはくすくすと笑い、にやけ顔で陽菜を見る。


「おーーー、怖いので」


 スプリガンは余裕を崩さぬ態度だった。


 スプリガンが見えない男たちはその様子を見て苛立ち、怒声を上げた。


「てめぇ、どこ見てやがる!」


「さっきの白いヤツはなんだっ!」


 陽菜は小馬鹿にしたように口角を上げた。

 その笑みは、どこか壊れている。


「そっか。おまえら凡人クソ野郎には見えないんだっけ……ふふっ」


 エレナはなぜか楽しげに微笑む。だが、蓮の胸には不穏な違和感が募っていく。


(……陽菜。やっぱり、違う)


 その時、帯で弾き飛ばされていた二人の男が立ち上がった。

 苛立ちを募らせた一人が、陽菜へ殴りかかる。


「舐めやがって! 礼はさせてもらうぞ!!」


 瞬間、白帯が閃いた。男の腕を正確に叩き抜く。


「ぐぁぁぁぁ!!!」


 骨が砕けるような鈍い音と共に、男は地面に崩れ落ちた。


「あらあら、お痛はだめだよ~♪ お仕置きだよ~♪」


 陽菜は頬に手を添え、子供のような満面の笑みを浮かべる。

 しかし、次に口を開いた時には冷酷な声音に変わっていた。


「すぐ料理してやる。少し待ってろ」


 男たちに言い放つと、陽菜は視線を再びスプリガンへ向けた。


「姐さん、そんな顔じゃモテないですので。彼氏さんも驚いてますぜ」


「言いたいのはそれだけ? サイドテールポンコツ妖精」


 スプリガンの軽口を受け流しながら、陽菜の口元には余裕の笑みが浮かんだ。


「ふふ……お前の“想い”は送り届けない。ここで塵になるまで刻んで焼却してやる」


「この世に居た痕跡すら残せない。完全な“無”だ」


 スプリガンは笑みを崩さず応じる。


「いや~、そいつは困りましたので。でも、アタイはそこまで弱くはない……」


 言葉を言い切る前に、白帯が刃となって走った。

 スプリガンの身体を真っ二つに裂く。


「え……!?」


 青ざめる表情。額から汗が噴き出す。

 切断された下半身は、瞬く間に帯で切り刻まれた。黒く淡く輝くその破片は、宙に散るように儚く消えていく。


「こ……こんな力……!」


 逃げようとするも、陽菜の帯がすでにその身体を捕らえていた。


「この前みたいに逃げられないぞ。あははは」


 その笑みは、もう陽菜ではない。

 蓮は唾を飲み込み、ただ見ているしかない。確かな恐怖が胸を締めつけた。

 一方のエレナは、まだ事態を理解しておらず、無邪気に声を弾ませた。


「すごい! 陽菜、もっとやっつけちゃえ!」


 周囲で構えていた男たちもざわめき出す。腕を叩かれた者は呻き、残りの者たちも動揺を隠せない。


「なんか……コイツ、やばくねぇか……」


「ああ……」


 陽菜はスプリガンを見下ろし、不敵に笑った。


「お前にも、人間の“死”ってやつを教えてやる。……その前に」


「お前の“想い”を見せてもらおうか」


「いやだ……やめて……」


 スプリガンは必死にもがき、逃れようとするが、身動きがとれず逃げられない。

 必死の叫びも虚しく、陽菜の手のひらがスプリガンの頭上に覆いかぶさる。

 直後、強烈な稲光が弾けた。


「お……犯され……る!!」


「ぐぁぁぁ! いやだ!! や……やめ……て、ぐぁああああ!!」


 スプリガンの涙と絶叫が辺りを震わせた。

 蓮が叫んだ。


「陽菜! もうやめろ!!」


 この時になってようやく、エレナも異常に気づいた。


「陽菜……陽菜なんだよね……?」


 陽菜は鋭く睨み返す。その目つき、表情はもはや彼女のものではなかった。

 エレナは咄嗟に口を押さえ、涙を浮かべる。


「陽菜……じゃない」


 その反応もあってか、陽菜はスプリガンの頭に手をかざすのをやめた。

 しかしスプリガンは白目を剥いて、意識を失っている。


「ちっ、つまらない」


 陽菜は次に男たちに視線を向け、スプリガンの身体を乱暴に放り投げた。

 地面に叩きつけられたスプリガンを、蓮がとっさに抱きかかえる。

 スプリガンの上半身の切り口からは、黒い光が粒子となって舞い上がり、周囲に儚く散っている。


「お待たせ。さて……最初に死ぬのは誰?」


 男たちは一斉に後ずさる。

 すると陽菜は口角を吊り上げ、挑発的に言い放った。


「もし勝てたら、ウチの身体、好きにしていいよ。動画に撮ってもいいしさ」


 蓮が怒鳴る。


「いい加減にしろ! 陽菜!!」


「黙れ!」


 陽菜の一喝に、蓮は絶句した。


(完全に呑まれている……どうすれば……)


 今の陽菜は、もはや“想い”に完全に支配されていた。


 陽菜は意に介さず、男たちに向かって口を開く。


「どうした? 男が五人もいて、ビビってんの? 勝てるかもしれないのに……試してみろよ。クソども」


「てめぇ……いい加減にしろ!」


 一人の男が怒声と共に突進する。


「あははははは!」


 陽菜は声を出して大笑いすると、男に向かって手をかざした。

 その刹那、男の動きがピタリと止まり、地面に膝をついて胸を押さえた。


「ぐぁぁぁぁあ!!」


 他の男たちも驚きの声を上げる。


「どうした!」


「む……胸が……苦しい……」


 男は胸を押さえ、呻き声を漏らす。全身から脂汗が吹き出し、呼吸も荒い。


「てめー、な、何しやがった……!」


 周囲の男たちが一斉に声を荒げる。


 陽菜は不敵な笑みで応えた。


「この手のひらに、ソイツの心臓があるんだよ」


 陽菜の手のひらには黒い炎のような揺らめきがあった。


 蓮もエレナも、目を見開き、体が固まった。

 ただ息をのむだけで、言葉にならない驚きが、二人を圧倒していた。


 そして陽菜は、唇の端をきゅっと上げ、不敵な笑みを浮かべながら言った。


「この心臓を……ぎゅーーーっと♪」


 そう言うと、徐々に握り締める。


「ぐぁぎゃぁぁぁぁ!!」


 男の、まるでこの世のものとは思えない叫び声が辺りに響き渡った。

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