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【悲報】東京のJK、妖精と青春中に“想いのスキル”発動したので恋愛とバトル開始します。-シーズン1-  作者: 新発田 怜
2章 - Kapitel Ⅱ - 陽菜と九尾の狐 編

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第20話:リベンジ

 <大丈夫! 個人差はあるけど、すぐ慣れるわよ>


 こういう相談は、もっぱら沙耶に連絡することが多い。

 陽菜も、朝一からこんな連絡をしてしまった沙耶に対して申し訳なさを感じていた。でも、やはり先輩に聞くのが一番安心できる。


 そして昨日のことを思い出すと、陽菜は枕の中で思わずにやけ、クスクスと笑ってしまった。

 そんな姿をみてエレナが笑顔で言った。


「なんか、陽菜いいことあったみたいだね~」


「え~、そんなことないよ~」


 エレナも笑顔でからかう。


「蓮とあったんでしょ~?」


 次の瞬間、陽菜は真顔で釘を刺す。


「いい? お父ちゃんとお母さんには言わないでよ」


 エレナはそれを察したのか、口を手で押さえながら満面の笑顔で応えた。


「うんうん。わかった!!」


 とは言え、日常は変わらずだ。

 世界が急に変わったわけでもないし、自分が“女性”を纏った実感もまだない。

 ただ、少し違うのは──


(ちと、ヒリヒリするかも……)


 それも、沙耶曰く”時間が解決してくれる”とのことだ。


 そんな朝を過ごした陽菜とエレナは、学校へと出発した。

 だが、出かけ際に母・結衣が一言。


「陽菜……歩き方。気を付けて」


「え……」


 一瞬戸惑いながらも、心の中で呟く。


(女の勘って怖い……)


 そう思いつつも、陽菜もれっきとした女なのだが……。


 陽菜は、蓮との待ち合わせ場所に少し早めに来ていた。

 昨日、一緒に登校しようと陽菜が誘ったのだ。


 やがて蓮も、少し緊張した様子で待ち合わせ場所に現れる。


「お、おはよう……」


 ぎこちない挨拶に、普段の彼からは想像できない緊張感が存在している。


「蓮! おっす!!」


 むしろ陽菜の方がいつも通りで、元気いっぱいだ。

 それを見たエレナはクスクスと笑いを漏らす。


「エレナ、何笑ってるんだよ……」


 蓮が尋ねると、エレナはにやりと笑って答えた。


「蓮は臆病で、積極的じゃなかったからね~」


 蓮は顔を赤らめてムッとする。


「あああ! “陽菜は積極的に……”云々言おうとしてたのって、そういう意味だったのか!」


「だから、エレナが来なかったわけだな」


 陽菜も笑いながら応じる。


「うんうん。そりゃ、エレナの言う通りだね。でも、エレナが一役買ってたってわけか!」


 そう言うと、陽菜はいたずらっぽくエレナの頭をげんこつでグリグリした。

 グリグリされながらも、エレナは言い訳を口にする。


「だってー、なんか陽菜、積極的にアプローチしてるのに~」


 陽菜はクスクス笑いながら、蓮に向かって言った。


「でも、家に誘ったのは蓮だから、まぁー良しとしてあげよう」


 そして、蓮の肩を軽くポンと叩いた。


 三人はそのまま学校の門をくぐった。

 だが、その様子を遠くからじっと見つめる人物がいた。


 ──梨紗だった。


 無論、陽菜からはフラれていた。

 それでも未練は消えておらず、ふたりの楽しげな姿を見た梨紗は、拳をぎゅっと握った。


 そのとき、どこからともなく声がした。


「姐さん。この子にそんな姿、見せちゃあかわいそうですので」


 声の主は、梨紗の近くにいた、邪妖精・スプリガンであった。

 無論、梨紗には見えていない。


 スプリガンはクスクスと笑いながら、陽菜たちを見つめる。

 そして、低く不敵な声で告げた。


「姐さん。以前、手癖の悪い連中に襲われそうになったようで」


「そいつらが復讐しやすいよう、準備しましたので、遊びましょう」


 そう言い残すと、スプリガンは空気に溶け込むように姿を消した。


 ──そして放課後


 陽菜は、蓮の部活が終わるまで、一人で教室の机に頬杖をつき、ぼんやりと時間を過ごしていた。

 帰りも一緒に帰りたいと、あらかじめ蓮に伝えてあった。


 エレナは隣の机にうつ伏せに寝そべり、ひざを曲げたり伸ばしたりしていた。


 そんなとき、教室の扉が静かに開き、一人の姿が入ってきた。


 ──梨紗だった。


「陽菜……まだ帰らないの?」


 梨紗は少し気まずそうに、しかし誘うような声をかける。


「お、梨紗。うん。蓮と帰る約束しててね」


 陽菜は軽く頷きながら答えた。

 梨紗の家でのあの一件から、大きな変化は特にない。

 お互い、普通に会話を交わし、日常を過ごしている。少なくとも、陽菜にはそう思えた。


 だが、梨紗の瞳にはわずかに引っかかるものがあるようで、陽菜はそれを感じ取りながらも、深くは詮索しなかった。


「そっか……」


 そう言うと、梨紗はそっと近づき、頬杖をついていない陽菜の片手に触れた。


「ん?」


 陽菜が気づくと、ジト目で梨紗を見つめる。

 それに気づいた梨紗は、慌てて目をそらした。


「ま~だ、未練たらたらなの?」


 陽菜はジト目のまま、少し拗ねたように言った。


「えへへ……」


 梨紗は照れながら陽菜に向き直す。


「はぁ~……」


 大きくため息を吐き、陽菜は梨紗の手を軽く握った。


「手を握るくらいなら、いいよ」


「うん!」


 梨紗は素直に喜び、にっこりと笑った。


 ふと、陽菜が梨紗に問いかける。


「梨紗は、彼氏とか作らないん?」


 梨紗は少し考えてから答えた。


「うん、欲しいよ。でも、ウチのクラスの連中はね~……」


 陽菜は思わずクスクス笑う。


「確かに、それ言えてる」


 その答えに、陽菜は少し安心した。

 ──彼氏より自分を選ばれると、正直、困るのだから。


 そんななか、香澄も教室に入ってきた。


「お! ふたりとも居たんだ」


 梨紗ははっとして、陽菜の手からそっと手を離す。

 幸い、香澄は気づいていない様子だった。


 香澄は屈託のない笑顔で言う。


「帰ろうよ!」


 梨紗は頷き、バッグを手に取ると、香澄に向かって言った。


「陽菜は、北川先輩と帰るって!」


 そして、梨紗はそっと陽菜に囁く。


「握ってくれて、ありがと」


 そう言うと、ふたりは手を振って教室を離れた。


 エレナが静かに言った。


「梨紗ちゃん、陽菜に未練タラタラだね~」


 陽菜は少し苦笑いを浮かべて答えた。


「すごく優しくていい子なんだけどな~。彼氏ができるまでは、この調子かな……」


 そう呟くと、大きくため息を吐いた。


 蓮の部活が終わり、三人は校門を出て一緒に帰っていた。

 だが、角を曲がった瞬間、五人組の男たちに行く手を遮られる。


 その姿を見た瞬間、陽菜と蓮は瞬時に身構えた。

 エレナも、獣人化のタイミングを計りつつ、人間の姿になる準備を整えた。


 しかし、その前に、例のスプリガンが、涼やかな笑みを浮かべ立ちはだかった。

 無論、五人の男たちには見えていない。


「姐さん、遊びましょう」


「以前、襲われた人たちがリベンジにしたいようなので」


 スプリガンの声には、不敵な余裕と楽しげな響きが混ざっていた。


「くっ!」


 三人は同時に言った。


 男の一人が言う。


「うちの三人が以前、お世話になったんでな」


「おかげで柴田組にもえらい目にあって……仕返しさせてくれよ」


 蓮が叫んだ!


「ふたりとも逃げろ!!」


 蓮は前に飛び出した。拳を握り、男たちに立ち向かおうとする。

 だが、多勢に無勢。男たちは容易く蓮を囲む。

 一瞬の隙を狙って突進したはずが、彼の視界には次々と迫る影があった。


「ッ……!」


 蓮は体をひねってかわすも、隣の男の肘が肩に当たり、よろめく。

 さらにもう一人が足をかけ、倒れんばかりに押し込んでくる。


「てめーは、すっ込んでろ!!」


 一人の男が叫びながら拳を振り下ろす。

 蓮はその衝撃で道路に倒れ込むと、別の男がすかさず蹴りを叩き込んだ。


「蓮っ!!」


 陽菜が叫ぶと、かざした手と、背中から白い帯を展開した。

 拳を振るった男も、蹴りを入れた男も、吹き飛ばされて地面に倒れる。


「な……なんだ……!?」


 男たちは叫び、恐怖と驚きに凍りつく。

 陽菜は鋭い眼差しで彼らを睨みつけ、低く言い放つ。


「ウチのダーリンによくも……デスる前にぶっ潰す」


「いや……殺す!」


 その視線は、いつもの陽菜の柔らかさを捨てた、獲物を狙う獰猛なものだった──。

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