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【悲報】東京のJK、妖精と青春中に“想いのスキル”発動したので恋愛とバトル開始します。-シーズン1-  作者: 新発田 怜
2章 - Kapitel Ⅱ - 陽菜と九尾の狐 編

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第13話:九尾とは一体……?

陽菜、エレナ、彩華は尾を振るうのをやめた玉藻と、再び正面から向き合う形となった。


「ねぇ? アンタの欠片と本体はウチの味方なのに、なんでアンタだけウチを狙うの?」


 陽菜の問いかけに、玉藻は静かに応えた。


「長き時を経れば、同じ存在であっても考えは分かれる……それだけのことよ」


 そう告げるうちに、玉藻の身体は徐々に薄れ、輪郭が揺らぎ始めた。


「……ふっ、時間切れか」


 その変化を見て、彩華が呻くように呟いた。


「やっぱり……そろそろ限界みたいね」


 玉藻はゆるやかに頷く。


「そのようだ。ならば、次こそ決着をつけようぞ」


 陽菜が鋭い眼差しで告げる。


「今度は、ウチたちがアンタのところに行く」


 エレナも力強く頷いた。


「うん。……欠片がそう言ってる」


 玉藻は最後に、薄く愉しげな笑みを浮かべる。


「よかろう。わらわは待っているぞ」


「……わらわの気が変わらぬうちに来るがよい」


そう言うと、陽菜は腕を組んで言い放った。


「まずはバイトして……それからだ」


 玉藻はくつくつと笑い、愉快そうに答える。


「人の子は不便じゃのぅ。まぁよい」


 そして視線を彩華に移し、言葉を重ねる。


「陰陽道の娘……占術を精進いたせ。是雄も喜ぶであろう。そなたが辿る道が、いずれわらわに届くかもしれぬ……」


 それが嘲笑なのか、あるいは励ましなのか、言葉だけが反響していた。

 その言葉は、彩華の胸に妙な重みを残す。


 やがて、空を覆っていた帳が裂けるようにほどけ、歪んでいた世界がゆるやかに現実の色を取り戻す。


 ──想願空虚は終わりを告げた。


 三人は陽菜の部屋に立っていた。

 静まり返った空気が、さっきまでの激闘が幻だったかのように錯覚させる。


 陽菜は胸の奥に引っかかる言葉を思い出した。


(……気が変わらぬうちにって……どういう意味なんだろ……)


 思案を振り払うように、陽菜は仲間に駆け寄る。


「エレナ! 彩華!! 大丈夫!?」


 エレナがぱっと笑顔を見せる。


「全然、大丈夫だよ」


 彩華も頷きながら返す。


「あたしも平気。それより……アンタこそ大丈夫?」


 はっとしてエレナが声を上げた。


「陽菜! さっき、怪我してたよね!? 傷は……!」


 陽菜は思わず自分の腕に目を落とす。

 つい先ほど赤い光弾に掠られたはずの場所──そこには跡形もない。


「……あれ? 消えてる……?」


 そう、想願空虚から戻った三人の身体は、まるで何事もなかったかのように無傷だった。

 その光景を確認しながら、彩華が低く吐き捨てるように言った。


「……味な真似をしてくれるわね、まったく」


 彩華の吐き捨てるような言葉に、部屋の空気が少しだけ重たく沈んだ。

 エレナが眉をひそめて続ける。


「……あれって、やっぱり本気じゃなかったんだよね。わたしたちを倒す気なら、とっくに終わってた」


 陽菜は頷きながらも、どこか釈然としない表情を浮かべた。


「たしかに……。試された、って感じだった。ウチらの力を確かめてた……そんな気がする」


 その口調には苛立ちの奥に、どこか認めざるを得ない色も混じっていた。

 玉藻が放った力の強さ。それが本物であることを、三人とも痛いほど理解していたからだ。


 エレナがふと目を伏せ、小さな声で言う。


「でも……“本体”は嬉しそうだった。玉藻ともう一度会えって、そう言ってる」


 陽菜もそれに応じた。


「ウチの”欠片”も同じだった。戦いの最中も、”欠片”は玉藻と対話しているようだった……」


「玉藻の気が変わったのかもしれない……。だから”気が変わらないうちに来い”と言ったのかも」


 彩華は腕を組んで、鋭い視線を宙に投げた。


「だとしたら、なおさら腹が立つわ。あたしたちを駒みたいに扱って、勝手に値踏みして……」


 陽菜はふたりを見回し、ぎゅっと拳を握りしめた。


「……こんどはウチから出向いてやる。そこで決着をつける」


 彩華が深く息を吐き、口の端をわずかに上げる。


「言うじゃない。……勝つのは、あたしたちの方よ」


 エレナも静かに頷いた。


「うん。……きっと、それが“欠片”の願いなんだと思う」


 陽菜が小さく付け加える。


「それに……エレナの出生についても、ちゃんと聞かないと」


 その言葉に、エレナは顔を伏せた。


「わたし……知りたくない……」


 陽菜は黙ったまま、ただ彼女を見守る。

 しばらくの沈黙の後、彩華が静かに口を開く。


「エレナ……この先も、一緒にいる以上、多分、知らなきゃいけないことだと思う」


「じゃないと……エレナも、陽菜も、先に進めない」


 エレナは小さく息をつき、頷く。


「……分かった。……ちゃんと、向き合う……」


 陽菜は微笑みながら手を伸ばした。


「うん、一緒に……だよ」


 彩華もふたりを見守り、静かに微笑んだ。

 三人の間に、少しだけ落ち着いた空気が流れる。


 ふと、陽菜が口を開いた。


「ところで、彩華……どうやって家に入ってきたの?」


 彩華は肩をすくめ、淡々と言った。


「ああ、親父にお願いして、術で鍵を開けてもらって、それで私の存在を消してもらったの」


「だから、陽菜のお父さんとお母さんは、あたしが今ここに居るの知らないのよ」


 陽菜は思わずツッコミを入れる。


「……”ああ”じゃねーよ! 住居侵入罪だろっ!」


「さては、ウチの乳液とか、どさくさに紛れて盗む気だったんじゃねーだろーな?」


 彩華が肩をすくめて言い返す。


「いらねーわ! “中の下”が使う安物乳液なんかっ!」


 すると陽菜も黙っていられず、声を荒げた。


「テメーまた言いやがったな。ここ来るんなら、マイクロエッセンス一緒に持ってこいや! クソが!」


 再び火花を散らす陽菜と彩華のやり取りを見て、エレナはやれやれと肩をすくめた。


「……もう、ふたりとも、落ち着きなよ……」


 三人の間に、少しだけ穏やかで賑やかな空気が戻った。


--------


幻術と想願空虚から出た玉藻は、那須の夜空を、ただ一人、静かに仰いでいた。


「なるほど。(かたち)が拘るわけだ」


そう言いながら、自身の手を見つめ、ゆるく拳を握った。


「その言や良し。ならば次は、この目にて定めさせてもらうとしようぞ」


しばしの沈黙の後、玉藻はふと小首をかしげ、ぽつりと呟いた。


「ところで……“ばいと”とは、いかなる術の名ぞ?」


月光に照らされたその横顔は、気高くもあり、どこか可笑しさも含んでいた──。


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