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【悲報】東京のJK、妖精と青春中に“想いのスキル”発動したので恋愛とバトル開始します。-シーズン1-  作者: 新発田 怜
2章 - Kapitel Ⅱ - 陽菜と九尾の狐 編

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第7話:女子トークはガチで痛い

 それは、陽菜、エレナ、彩華の三人のテンション爆上げ?の話し声だった。


「ちょっ! マジ!? エレナのめっちゃやわらかい!! ポヨンポヨンだよ!!」


「彩華~っ、そんな触り方くすぐったいよ~♪」


「エレナ、ウチのよりデカすぎだろーが!」


「わたしの姿見たんだから、ふたりとも愛し合うところ見せてよ~♪」


「うんうん。見せる見せる! なんならエレナも参加していいから!」


「ほんと!? 彩華、約束だよ~♪」


 キャッキャと笑いながらはしゃぐ三人。

 そして、その声を、隣の部屋で蓮と竜司が聞かされていた。


 それは彩華の提案で始まった、“エレナの男子禁制ボディチェック”。

 理由など特にない。ただ、陽菜と彩華の好奇心の産物だった。


 だが、聞かされるだけの男ふたりにとっては拷問に等しい。

 隣の部屋のソファに並んで座りながら、蓮と竜司は額に汗を浮かべ、親指を噛んで足をせわしなく貧乏揺すりしている。


 ──頼む、見せろ! 少しでいい…… 


 心の声がシンクロするほどに、彼らの理性は限界に近づいていた。


 それでも、会話は続く。


「うわ~、まじ!? めっちゃ綺麗、すごい……」


「彩華! どこ見てんの~?」


「いや、だって……これ子供とか産めるの? って気になっちゃってさ」


「ウチにはわからんけど、どう? 彩華にはわかる?」


「うーん……“想い”の存在だからね~? でも……やれるかも」


「えっ……わ、わたし……そんなの知らないよ~!」


「陽菜も、マジマジ見ないでよぉー。あっ! ちょ、ちょっと彩華ぁぁぁ!」


 蓮と竜司は、とうとう限界を迎えていた。

 ふたりはソファから同時に立ち上がり、無言のまま視線を交わす。


 竜司が蓮に向かって言う。


「……悪いのは三人だ。オレたちは被害者。これ以上は拷問だ!」


 蓮が力強く呼応する。


「おう!」


 異様な熱気を帯びながら、ふたりは力強くうなずき合い、がっしりと握手を交わした。

 その様子は、まるでスポ根友情ドラマのワンシーンさながらだ。

 

 そして次の瞬間、なぜか訓練された忍者のように、音も気配も消して隣室へと移動していった。


 ドアノブに手をかける直前、竜司が囁く。


「……開けたら最後、もう戻れないぞ」


「構うか! 俺は真実が知りたい!」


 カチリ──

 緊張感をもって回されたノブの音が、やけに大きく響いた。


 その瞬間、スタンガンのような強烈なしびれがふたりを襲う。

 彩華が男子ふたりを部屋に入れないよう、軽い結界を敷いていたのだ。


 「ぎゃあああああ!!」


 叫ぶふたり。白目を剥き、泡を吹き、目はグルグルと回っている。


 ──そしてドアは全開のまま。


 陽菜と彩華は腕を組んで気絶しているふたりを見下ろした。


「……蓮のド変態!!」


「竜司のアホバカマヌケ!!」


 エレナはとっさに洋服で前を隠す仕草をしていた。


 バッシィィン!

 勢いよく閉められたドアが、まるで追い打ちの鉄槌のように鳴り響いた。


 ──白目を剥いたままの竜司が、かすかに口を動かしていた。


「し……しどい……」


 それは、男子を代表した竜司の渾身の気絶間際の叫びだった。


「ん~~、かわいそうだから、蓮と竜司も見せてあげればよかったかな~」


 ……シーン。


 その言葉が、倒れたふたりの耳に届くことはなかった。



 --------



 気が付けば夜になっていた。

 彩華たちとの作戦会議と、エレナのボディチェックを終えた陽菜、エレナ、そして蓮の三人は、帰路についていた。

 エレナはいまも人間の姿のままだ。


 陽菜が心配そうに尋ねる。


「蓮、大丈夫?」


 蓮は軽く笑って答える。


「ポヨンポヨンの件?」


 陽菜が眉をひそめ、ツッコミを入れる。


「ちげーわ! 変態!! そっちじゃなくて……九尾の狐の件!」


 陽菜のツッコミに、蓮は力強く頷く。


「大丈夫だ! 俺はお前を守る!!」


 その自信に満ちた言葉に、陽菜はそっと蓮の胸元に顔を寄せる。


「ごめん。危険な目に合わせて……ありがとう」


 そのとき──


「おーい!!」


 背後から走ってくる声。振り返ると、竜司が駆け寄ってきていた。


「竜司さん?」


「竜司?」


 三人は足を止める。


「悪いね。お邪魔しちゃって……。蓮すまんけど、陽菜ちゃんとエレナちゃん、ちょっと借りてもいい? 彩華のことで……」


 蓮はうなずく。


「いいよ。じゃあ、俺は先に帰るわ!」


「……うん」


 陽菜は小さく頷き、蓮を見送った。


(キスしたかったな……)


 心の中でぽつりとつぶやく陽菜に、エレナは微笑みを向けた。

 もちろん、陽菜の胸中を理解しているようだった。


 竜司が申し訳なさそうに頭を掻く。


「ごめんね。邪魔しちゃって。でも、伝えたいことがどーしてもあって……」


 エレナが首をかしげる。


「どうしたの?」


 すると、竜司は真剣な眼差しをふたりに向けた。


「これからも、あいつと……彩華と仲良くしてあげてほしいって」


 竜司は続けた。


「あいつさ、術が使えるだろ? だから昔から気味悪がられて、友達って呼べる相手がいなかったんだ。口も悪いし、ムカつくこともあると思う。でも……本当に、ふたりのことを友人だと思ってる」


 陽菜は胸を張って答えた。


「問題ナッシング。アイツとはこれからも沢山言い合いするので」


「ほんとだよね」


 エレナがクスクス笑いながら言う。


「陽菜も、彩華の前だと気を使ってないもんねー」


「フッ……たしかにそうかもだね」


 陽菜は肩をすくめて笑うと、竜司は安心したように微笑んだ。


「エレナちゃんも、よろしく頼むね」


「うんうん! わたしも全然問題ナッシング~♪」


 エレナも明るく答え、三人は顔を見合わせて笑い合った。

 だが、竜司は次の瞬間、さらりと爆弾を落とす。


「あと、エレナちゃんって……ポヨンポヨンなの?」


 陽菜が即座にツッコむ。


「なるほど。あとで彩華に言っておきますね」


 エレナも、ニコニコして付け加える。


「うんうん。わたしも彩華に言っとくねー」


「ちょ、それだけは内緒にして!」


 竜司は慌てて頭を掻き、ふたりはクスクスと笑った。


「竜司さん、彩華のこと教えてくれてありがとうございます」


 陽菜が礼を言うと、竜司は親指を立ててニカッと笑った。


「それと! 敬語はなしで頼む! そっちのほうが絶対いい!」


 そう叫んで、竜司は夜道を駆け戻っていった。


 陽菜とエレナは、そんな竜司の背中を見送りながら笑みを交わす。

 夜風は少し冷たかったが、どこか心地よい余韻を残していた。


 ──だが、


 まだ誰も気づいていなかった。


 彩華の家系に伝わる占術は、すでに九尾の狐に読み解かれていたことを。そして、九尾の狐は静かに確実に、目前にまで迫っていたことを──。


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