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【悲報】東京のJK、妖精と青春中に“想いのスキル”発動したので恋愛とバトル開始します。-シーズン1-  作者: 新発田 怜
1章 - Kapitel Ⅰ - 学園と日常 編

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第40話:スプリガン②

 白球が空気を裂き、耳をつんざく音とともに迫る。


「危ない!」


 蓮は陽菜とエレナを庇うように飛び込み、三人は転がりながら地面を離れた。

 直後、着弾地点が閃光と衝撃で抉れ、草原に黒焦げの穴が開く。


 スプリガンが口の端を吊り上げた。


「いい反応ですねぇ。じゃあ、もっと速くいくので」


 足元から黒い影が溢れ、蛇の群れのようにうねりながら三人へ襲いかかる。


「っ……!」


 エレナは素早く身をひねり宙でかわす。

 陽菜と蓮も地面を蹴って跳躍するが、影はその場をすり抜けても形を変えて空中まで追ってくる。

 想願空虚では物理法則など存在せず、人間も高く跳躍できるが影も同様だ。


「デスる前にぶっ潰す!」


 陽菜が手をかざすと、白い帯が三本、矢のように飛び出す。

 それぞれが影に巻き付き、陽菜はもちろん、エレナと蓮に迫っていた影までも縛りつけた。


「ほほう……でも、どこまで耐えられるか試してみるので」


 スプリガンそう言うと、新たな影が陽菜の足元に走り、着地の瞬間を狙って足首に絡みついた。

 影は瞬く間に彼女の体へと巻き付き、身動きを封じる。


「陽菜!」


 エレナが駆け寄るが、今度は彼女の足元から別の影が伸び、同じように絡め取ってきた。

 二人とも鉄鎖のような影に縛られ、地面へ押し倒される。


 スプリガンは一歩も動かず、ニヤリと笑う。


「いい顔になってきましたねぇ……そろそろ終わりですか?」


 挑発する声に、蓮が歯を食いしばり前へ飛び出した。

 そのままスプリガンへ体当たりする。宙に浮いていたスプリガンが予想外の衝撃でふらついた。


「……あら、元気な人間もいるじゃないですか」


 次の瞬間、蓮は影に絡め取られ、勢いよく振り飛ばされた。

 地面に叩きつけられ、土埃が舞う。


「蓮!!」


 陽菜とエレナが同時に叫ぶ。


「……いてて……大丈夫だ」


 蓮は苦笑しながらも立ち上がろうとする。


 陽菜の瞳に炎が灯った。


「よくも……うちの大事なダーリンを!」


 彼女は白い刃を呼び出し、絡みつく影を一気に切り裂く。

 影は霧のように消え、陽菜は自由を取り戻した。


 立ち上がると、胸の奥が淡く玉虫色に輝く。


(……この光……まさか……想いの欠片……?)


 心の奥から、確かに誰かの声が響いた。


「……よし、わかった」


 陽菜は小さく答えると走り出し、スプリガンに向かってジャンプする。


 スプリガンが目を見開く。


「あ、あの光は……九尾の欠片……!」


 さらに陽菜は、倒れかけた蓮の尻を踏み台にして再び跳び上がった。


「うげっ!? お、俺を踏み台にしやがった!!」


 蓮の抗議を無視し、陽菜はさらに高くジャンプした。

 すると陽菜の足先が玉虫色に輝きだす。


 スプリガンは慌てふためいた。


「ひえぇぇ! 避けられないので!!」


 そのまま、玉虫色に輝く陽菜の足がスプリガンに向かっていく。


「かわいい美人な陽菜ちゃんの、ジェットストリームキィィック!」


 輝く足がスプリガンの胸を捉えた瞬間、乾いた破裂音とともに眩い閃光が弾けた。

 爆発のような衝撃と、土煙が地面から噴き上がり視界を奪った。

 足元の地面は深く抉れ、ひび割れた亀裂が放射状に伸びている。


 同時に、エレナと蓮を縛りつけていた影が音もなく霧散した。


 エレナと蓮が、陽菜のもとへ駆け寄った。


「大丈夫?」


 陽菜が二人に声をかける。


「大丈夫だ、お前は?」


 蓮が息を整えながら応じる。


「陽菜こそ、大丈夫?」


 エレナも心配そうに尋ねる。


 陽菜は二人に頷き、穏やかな笑みとともに大丈夫な胸の内を伝えた。


 足元に目をやると、スプリガンは目をグルグル回しながらあおむけで伸びていた。

 怪我はなさそうだが、さすがに驚いた様子は隠せていない。


 蓮は無意識に、陽菜とエレナの胸元に視線を向けた。

 ふたりの胸は淡く玉虫色に光を帯び、戦闘の余韻と相まって柔らかく輝いていた。


 蓮はふたりにその輝きを聞いた。


「それは……?」


 陽菜が小さく頷きながら答える


「たぶん、例の想いの欠片が反応したんだと思う。声が聞こえたんだよ」


 エレナも同じく頷き、言葉を添えた。


「うん。わたしにも話かけてきたんだよ」


 そんななか、スプリガンが気が付いた。

 陽菜はまるで猫のように、スプリガンを掴んだ。


「いやはや、参りましたので」


 スプリガンがそう呟くと、陽菜の手のひらから青白く光る玉が出現した。

 陽菜は不気味に、しかし優しく微笑みながらスプリガンに言う。


「欠片が教えてくれたの。これを当てると、あなたのような妖は消えちゃうみたいだよ」


 だが次の瞬間、陽菜の表情が鋭く変わった。


「使い方も教えてもらったんだ。 ……なぁ? この意味、わかるか? クソ妖精」


 陽菜は蓮とエレナに向かって低く告げる。


「この、クソサイドテールブサイク妖精……どう料理してやろうか?」


 スプリガンは頭を掻きながら、焦った笑みを浮かべる。


「たしかに……おっしゃる通りで。ですので……」


「……今日はこの辺で失礼します。また遊びましょう~」


 そう言うと、ふわりと掴んでいた手から消えた。

 陽菜は慌てて声を張る。


「ちょ、おい! 逃げるな!!」


「またこんどで~」


 消えゆくスプリガンの声だけが残響した。

 その直後、想願空虚は霧が晴れるように消え去り、三人は現実世界へと戻ってきた。


 すぐ横には、気を失った神村が倒れている。


 エレナが眉をひそめて言った。


「この子、どうする?」


 蓮は少し困った顔で答える。


「とりあえず、パンツ履かせてあげて」


 そして、苦笑しながら付け加える。


「多分、俺はこの場に居ないほうがいいと思う。一旦、どこかに隠れてるわ」


 陽菜が頷く。


「そだね。記憶が曖昧なら、そのほうがこの子にとってもいいだろうし」


 少し間を置き、陽菜は真剣な目で蓮を見た。


「……蓮。身を挺して助けてくれて、ありがと」


 蓮は耳をかきながら、照れくさそうに言う。


「彼氏だからな」


 そう言って、蓮は軽く手を振りながら教室へ戻っていった。

 陽菜はその背中を見送り、ふっと優しく微笑んだ。


 しばらくすると、エレナが神村の下着を履かせて戻ってきた。


「陽菜、たいへんだよ!!」


「ん?どしたの?」


 エレナが突然、とんでもないことを口にした。


「この子、ちゃんとお手入れしてた!!」


 陽菜の顔にピキッと怒りマークが浮かぶ。


「ウチだってちゃんと手入れしてるわっ! ちょっと最近サボり気味なだけだ!!」


 エレナがジト目で陽菜を見つめる。


「ちゃんと蓮からの誘いに対応できるようにしないとだよ~」


 陽菜の眉がピクンと跳ね、頬がカッと熱くなる。


「うっさい!この変態エロ妖精!!」


 そう言いながら、心の中では密かに思っていた。


(沙耶さんと、彩華に聞いてみよっかな……)

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