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【悲報】東京のJK、妖精と青春中に“想いのスキル”発動したので恋愛とバトル開始します。-シーズン1-  作者: 新発田 怜
1章 - Kapitel Ⅰ - 学園と日常 編

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第4話:幼馴染と再会

 昼休み。学校の購買でパンを買って食べた陽菜は、エレナと一緒に学校裏の芝生でまったりとしたひとときを過ごしていた。


 そんなときだった。


「陽菜、隣いいか?」


 不意に声をかけられ、陽菜は振り返った。

 下の名前を呼び捨てにされて、陽菜は不機嫌になった。


「ん? 誰ですか?」


 声の主は、北川蓮(きたがわれん)だった。身長一七三センチ。無駄のない細身の体は、立っているだけで端正な印象を与える。黒に近い濃い髪は短く整えられ、切れ長の茶色の瞳は冷ややかなほど澄んでいた。


「あーこいつか……なんか、ずいぶん気安くね?」


 陽菜は、隣に浮かんでいるエレナにこっそり言った。


「そりゃそうよ」


 エレナはくすっと笑って答える。


「どうぞ、ここ使ってください。私、戻りますので」


 陽菜はムスッとした表情のまま、そっけなくそう言って立ち上がると、蓮に場所を譲って教室へ戻ろうとした。

 自分の名前を、いきなり呼び捨てにされるのは苦手だ。特に、どこの誰かも曖昧な相手からだったら、なおさらである。


 サバサバした性格に見られがちだけど、実際には、人との距離感にはそれなりに気を配っている。言葉遣いが乱暴になることはあっても、知らない相手にはきちんと敬語で話すし、必要以上に踏み込むことはしない。


 だからこそ、逆に無遠慮に入り込まれると、反射的に引いてしまうのだ。


「ちょっと待ってくれって!」


「俺だよ、蓮! “幸田蓮(こうだれん)”だよ!!」


 陽菜は立ち止まり、振り向いた。


「ん? 幸田……幸田……」


「えええ!? 蓮!? ……あの蓮!?」


 ようやく記憶がよみがえった。それは、陽菜が小学校四年生のとき、彼女には、幼馴染の男の子がいたのだ。

 高校では、変な誤解を生むから、男子の顔をじっと見るなんてことはしない。


 だから今まで気づかなかったけれどよく見れば、あの頃と同じ面影がある。

 その顔立ちは、蓮に間違いない。


「あれ? でも今は“北川”って名前だったよね?」


「俺、両親事故で死んじゃったじゃん。そのあと引き取られた親戚の姓が”北川”なんだよ」


 蓮の言葉に、陽菜の胸の奥にあの日の記憶がふっとよみがえる。

 そうだ、あのとき──蓮の両親が亡くなって、突然引っ越してしまったんだ。


 蓮は陽菜にとって本格的な初恋相手。当時はスマホなんて持っておらず、連絡手段もない。

 その喪失感は、幼い陽菜にはあまりにも大きかった。


「そっか……ごめん」


 陽菜は、蓮に余計なことを思い出させてしまったかと思い、素直にそう言った。


 そして、ふと思い当たることがあった。


「……さては、エレナ知ってたな?」


「この間の食堂のとき、蓮のとこ行ってたよね?」


 こっそり問い詰めると、エレナは照れ笑いを浮かべた。


「バレちゃったか~。蓮の“想い”、ちょっとだけ見えちゃったんだよね」


 続けてエレナは言う。


「いや~、わたしは、もしかしたらって思ってたんだよ~」


 エレナは得意げに胸を張った。エレナと陽菜は五歳の時からの長い付き合いだ。

 当然エレナも当時の事情は知っている。


 陽菜は思わずジト目になる。


「だったら最初から言ってよ、バカ妖精!」


 そして、そのままエレナの頭にげんこつをグリグリ。


「いたたたた!」


 エレナは悶えるが、当然ながら、蓮には見えていない。陽菜が空中でグリグリしている姿を見て、蓮は少し戸惑い気味に声をかける。


「お、おい陽菜……どうした?」


「あっ、いや……なんでもないっ」


 陽菜は慌ててごまかした。


「でもさ、陽菜って昔からそういうとこあったよな。なんか、いつも近くに誰かがいるような……そんな感じ」


 蓮がどこか懐かしそうに言った。


「エレナだっけ? よく話してくれたよな、あの頃」


「……覚えててくれたんだ」


 それを聞いて陽菜は、ふっと気が抜けたように笑った。

 蓮にはエレナの姿は見えなかった。でも、陽菜はよく彼にエレナの話をしていた。


 エレナと一緒に体験した、不思議な出来事の数々。

 蓮もいつか、自分もその中に加わってみたいと思っていた。

 陽菜、そしてエレナと三人で、同じ“何か”を感じてみたかったのだ。


「でもさ、よくウチのこと分かったね?」


 陽菜がそう尋ねると、蓮は少し得意げに肩をすくめた。


「いや、たまたま誰かと話してるときに“佐藤陽菜”って名前が出てさ。ちょっと話聞いてたら、あれ? って思ってさ」


 陽菜は身を乗り出し、期待を込めて言った。


「それって……ウチが美人とか、そういう噂的な話かっ!?」


 両手で頬を押さえて、顔をほんのり赤らめる陽菜。

 一瞬だけ、自分が学園のマドンナになったような妄想にひたる。

 だが、蓮はバツが悪そうに頭を掻き、目をそらしながらボソッと答えた。


「……いや、“一人でブツブツ喋ってる変なやつがいる”って」


「……は?」


 陽菜の顔が固まった。

 エレナはそれを聞いて腹を抱えて笑っている。


「おい……そこは慰めるところだろ」


 陽菜はジト目でエレナを睨むが、エレナは全く動じずゲラゲラ笑い続ける。


「それでウチのこと、じーっと見てたわけ?」


 ため息まじりに陽菜が言うと、蓮は気まずそうに視線を泳がせた。


「……っていうか、蓮こそさ。成績優秀でスポーツも万能、モテモテって噂じゃん。彼女、何人いるのさ?」


 にやにやと陽菜がからかうと、蓮は少しだけ目をそらし、照れたような、それでいて遠くを見るような表情で答えた。


「いねーよ、そんなの。……それにさ、勉強も運動も、そうでもしないと、生きていける感じがしなかったっていうか……」


 その横顔を見つめながら、陽菜はそっと俯いた。


「……そっか」


 ぽつりと呟いた陽菜は、膝を抱えて静かに座り込んだ。

 その様子を見て、蓮も言葉を挟まず、隣に腰を下ろす。


「でもさ、それでもすごいと思うよ。努力でなんとかなる話じゃないし」


 陽菜は顔を上げて、にかっと笑った。


「で? 陽菜のほうはどうなの? 彼氏とか、いたりする?」


「いるわけねーじゃん。ヤリモクのウザいやつは時々寄ってくるけどさ」


「おいおい、俺も“ウザい”枠に入れられるのか?」


 蓮が苦笑まじりに言うと、陽菜は胸を張って大笑いした。


「蓮は大丈夫だ! 合格ーっ!」


 その笑顔に、蓮は少しだけ照れくさそうに目をそらした。


 そのとき──


「陽菜!」


 後ろから呼びかけてきたのは、クラスメイトの梨紗だった。


「うん、今行くー」


 陽菜は返事をして立ち上がる。

 そのとき、蓮がそっと手を伸ばし、声をかけた。


「なぁ、陽菜。…また話しかけてもいいか?」


 どこか不安げな表情でそう言う蓮に、陽菜は笑って答えた。


「何言ってんの、ウチらの仲でしょ? いっぱい声かけてよ。ウチも声かけるし」


 陽菜は笑みを浮かべで、蓮の胸に拳をコツンと当てた。

 その一言に、蓮は安心したように表情をゆるめた。


 陽菜と梨紗が並んで歩き出すと、梨紗がさっそく口を開いた。


「ねえ陽菜、今のって北川先輩じゃない? 付き合ってたとか?」


「だって“陽菜”って呼び捨てされてたし~?」


 にやにやと梨紗は顔を近づけてくる。


「はあ!? ちげーし!  幼なじみなだけだから」


 陽菜は即座に否定した。


「そうだったんだ~。ふーん、なるほどね~」


 梨紗はどこか意味ありげな笑みを浮かべて、隣でクスクス笑っていた。

 エレナもそれに乗るかたちでそのまま陽菜の耳元でささやいた。


「ねえねえ、陽菜は本当に“幼なじみなだけ”でいいの?」


 そういうと、陽菜の肩の上にふわっと寄りかかった──。

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