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【悲報】東京のJK、妖精と青春中に“想いのスキル”発動したので恋愛とバトル開始します。-シーズン1-  作者: 新発田 怜
1章 - Kapitel Ⅰ - 学園と日常 編

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第38話:演劇部に臨時で雇われました②

 演劇部の練習も終わり、陽菜と梨紗は近くのハンバーガーショップに腰を落ち着けていた。

 トレイの上には、ポテトとドリンク。陽菜の隣のテーブルには、梨紗には見えないエレナが足をぶらぶらさせながら座っている。


「……ねぇ梨紗。ウチ、なんでよりによって演劇なんかやらなきゃいけないの?」


 ストローを噛みながら、陽菜はジト目で梨紗を睨む。


「なんでって……文化祭、部員足りないんだもん。陽菜ならきっと舞台映えるし」


 梨紗は悪びれもせず、ポテトをひょいと口に運ぶ。


「映えとかガチでどーでもいい! そもそもウチは帰宅部だよ!? 放課後は自由時間って決まってんの!」


 陽菜の抗議にも、梨紗は平然と肩をすくめる。


「でもさ、陽菜がいないと成立しないんだよ。しかも、シナリオも陽菜に書いてほしいし」


 陽菜は両手で頭を押さえながら言った。


「……そう、それもよ! なんでそんな二役しないといかんのだ!」


「っていうか、香澄は逃げやがって……」


 両手で頭を押さえたまま、陽菜は半ば叫ぶように声をあげた。

 香澄は所属しているバトミントン部の出し物で参加できない。


 すると隣で、エレナがキラキラした目で言った。


「でも陽菜ならできるって! かわいい衣装着て、みんなの前でセリフ言って、最後は拍手喝采~!」


「拍手はいらん! ウチは静かに文化祭を過ごしたいんだから!」


「……陽菜、誰と話してるの?」


 梨紗が怪訝そうに首を傾げる。


「あ、いや、こっちの話!」


 慌ててごまかすが、エレナは手を口に当ててニヤニヤしている。


「とにかく、梨紗。ウチは脚本家でも役者でもない。なのにいきなり“主役&脚本”とか無理ゲーだろ。せめて片方にしてくれっつーの」


「いや、それは……ダメ」


 梨紗はにっこり笑い、あっさり却下する。


 陽菜は机に額を押しつけ、うめき声を漏らした。


「……完全にハメられた……」


 エレナが隣でくすくす笑いながら囁く。


「でもさ、陽菜。部室で見たあの色……気にならない?」


 陽菜は顔を上げ、エレナにだけわずかに視線を向ける。

 紫がかった黒の五色──あの得体の知れない想いの気配。

 やりたくもない舞台だけど、それを放っておくのも気味が悪い。


「……しゃーない。やるだけやって、さっさと終わらせる」


 そう吐き捨てるように言い、陽菜はドリンクをひと口すすった。


「ありがとう!」


 梨紗は満面の笑みを浮かべ、エレナは嬉しそうに両手を打ち鳴らした。


「なんか喜んでるけど……シナリオは梨紗も手伝ってよ!」


「うん! 手伝う!!」


 陽菜がそう言うと、梨紗はなぜか大喜びした。


 梨紗はさらに話を付け加える。


「あ! あと、“陽菜が出るなら私も”って子がいたみたい」


 その言葉に陽菜は驚いた。


「マジで? でもウチ、そんなヤツ知らないよ」


 梨紗は少し戸惑いながら答えた。


「マジ? あのメガネかけた子みたいだけど……知らない人なのか……」


 その言葉を聞いて、陽菜とエレナは目を合わせた。


(紫がかった黒の想いを持つ女……何を企んでいるのか……)


 陽菜は心の中でそう呟いた。

 ふと見れば、エレナも同じ思いを抱いているようだ。

 二人は無言で頷き合った。


 しかし、その視線の先で、梨紗はその女に対してどこか不安と嫉妬の入り混じった感情を抱いていた。


 それからしばらくの間、陽菜、エレナ、梨紗の三人は演劇部のシナリオ構成と修正に没頭した。


 実は当初、可能であれば蓮にも参加してもらえたら……という案もあったが、梨紗はそれをきっぱりと拒否した。

 どうしても、このシナリオは陽菜と自分の二人で仕上げたいという強い思いがあったのだ。


 初めはざっくりとしたあらすじだけだったシナリオも、何度も書き直し、加筆し、細部まで練り上げていく。

 三人は互いに意見を出し合い、キャラクターの感情の動きやシーンのつながり、台詞の自然さにまでこだわりを持った。

 もちろん、梨紗にエレナは見えないので、エレナの案は陽菜が代弁する。


 陽菜は特に、自分の父・康太の実体験や想い出をもとに物語の芯を作り上げる。

 それは、陽菜にとっても特別なテーマであった。


 日を重ねるごとにシナリオは完成度を高め、最終的には約20分の短編演劇として仕上がった。


 題名は【少女と妖精の90日間】


 この物語は、妖精と少女が出会い、共に過ごした短い時間の中で互いの想いを育み、そして別れを迎えるまでを描いている。

 主人公の愛情や成長、そして別れの切なさを織り交ぜた作品となった。


 ──そして、これは即時採用となった。

 演劇部の顧問の先生は、陽菜たちの熱意と完成度の高さに感心し、ためらうことなくシナリオを採用したのだ。


 しかし、陽菜の胸中は複雑だった。

 主役を演じることへの不安、シナリオを自分が書き上げた責任感、そしてあの紫がかった黒の五色を放つ女子生徒の気配が頭から離れなかった。


「でも、ここまで来たらやるしかない……」


 陽菜はエレナと目を合わせると、小さく決意を呟いた。


 そして、配役が発表される──




 陽菜──主人公の友達A




 梨紗──主人公の友達B




「主人公の友達Aって……主役ちゃうんかい! なんでじゃコルァァァ!!」


 その知らせを聞いた瞬間、陽菜の心の叫びは誰にも届かず、虚しく教室中に響き渡った。

 隣でエレナは腕を組み、目を見開いて大声で叫んだ……。



 結論。陽菜、爆死。


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