表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
【悲報】東京のJK、妖精と青春中に“想いのスキル”発動したので恋愛とバトル開始します。-シーズン1-  作者: 新発田 怜
1章 - Kapitel Ⅰ - 学園と日常 編

この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

31/99

第31話:陽菜と蓮……それぞれの選択②

 陽菜の”バイバイ”はあまりにも明るくて、あまりにも痛かった。


 言葉に詰まったまま立ち尽くす蓮の前で、陽菜はくるりと背を向ける。

 その背中は小さく見えた。けれど、揺らがない意志の輪郭が、夕焼けに染められていた。

 蓮は、歯を食いしばった。


「……ふざけんなよ……」


 低く、搾り出すような声だった。

 誰に向けて言ったのか、自分でもわからなかった。陽菜か、自分か、それとも運命そのものか。


「俺がどれだけ……お前を想ってるかなんて、知らねえんだろ……!」


 でも、陽菜は、振り返らなかった。

 ただ、ゆっくりと前を向きなおし、小さく呟いた。


「知ってるよ。だから、逃げるんだよ、ウチは……」


 エレナが、ブランコの手すりから静かに離れ、陽菜の隣に並んだ。

 どこか悲しげな瞳で蓮を見つめながら、けれど何も言わなかった。


 公園を出ると、エレナは陽菜に声を掛けた。


「……本当に、これでよかったの?」


 陽菜は少しうつむいていたが、やがて顔を上げ、小さく笑った。


「うん……ウチは、エレナと一緒がいいもん」


 その声は揺れていなかった。

 でも、陽菜が振り向いてエレナの顔を見た瞬間──


 頬に、ぽろりと涙が伝った。


「……っ……!」


 こらえきれずに、陽菜は大粒の涙をこぼしながら歩き出した。

 声を出すこともできずに、ただ、嗚咽しながら前を向いて歩く。


 エレナは何も言わなかった。

 ただ、そっと陽菜のそばに寄り添い、その肩に静かに手を添えた。


「……ウチ、これでよかったんだよな……」


 小さく、誰に向けるでもなくこぼれた言葉。


 ──そのときだった。

 後ろから、ふいに強く抱きしめられた。

 驚いて振り返る間もなく、陽菜はその体温に気づいた。


「……泣くなら。バイバイとか言うなよ、バカが」


 その声に、陽菜の肩が小さく震える。


「蓮……」


 そう呼びかけようとした瞬間、蓮が言葉を遮った。


「黙って聞け」


 その声音はいつもより低くて、でもまっすぐだった。


「俺は……お前を嫁さんにするって、決めてんだよ」


「だから守るのは当然だろ。巻き込まれるとか関係ねぇ。覚悟ぐらい、もうできてる」


 陽菜は小さく息を吸い、言葉を探す。


「……でも、ウチ……」


 その先を、蓮の声が遮った。


「“でも”は禁止。お前が泣くのも、笑うのも、全部俺がそばで見るって決めた」


「それが俺のわがままで、お前の選択肢を奪うことになるなら——全部恨め。それでも、離れない」


 陽菜は、胸が熱くなるのを感じた。

 言い返そうとしたけれど、言葉が喉の奥でほどけていく。


 蓮は陽菜の左手を取り、先ほど返された小さな銀のリングを、そっと指に通した。


「よし。安物だけど、婚約成立な。エレナ、証人な!」


 蓮はエレナに振り向いて言った。


「えっ……わ、わたし!? えー、こういうのってもっとちゃんとした場所で……」


「文句言うな。お前しか証人いねぇだろ」


 陽菜も思わず口を挟む。


「え? 蓮、エレナのこと……まだ見えてんの?」


 蓮は当然だとばかりに返す。


「前に言ったろ。見えてるって。さっきブランコにいたのも知ってるし、今もそこにいるのもわかるわ。バーカ!」


 それを聞いたエレナは、ぱぁっと笑顔になった。


「おお!蓮、偉い!!」


 嬉しそうに蓮の頭をなでなですると、蓮は少し照れながらも、ちゃんと頭を差し出して応える。


「エレナが撫でてるのも、ちゃんと見えてるからな」


「マジ……やっば」


 陽菜は、ぽかんとした顔で呟く。

 蓮は、そんな陽菜の頭を撫でて、くるりと背を向けた。


「じゃ、今日は帰る。でも覚えとけよ。もう“婚約済”だからな。覚悟しとけ、陽菜」


 そう言い残して、走り去っていく。

 しばらくその背を見送っていた陽菜は、気づけば先ほどまでの涙が乾いていた。


「な、なんなんアイツ……」


 ぽつりとこぼすと、隣でエレナが肩を揺らしてゲラゲラ笑い出す。


「陽菜と蓮の“想い”はね、全然消えてなかったってこと」


 陽菜はエレナに聞いた。


「じゃー、これってどういうこと?」


「つまり、お別れ失敗だねぇ~」


 満面の笑みでエレナは答えた。

 陽菜はため息をつきながらも、指輪を見てほんの少しだけ笑った。


 それは、終わりではなかった。ただ、ふたりの物語の“章が変わった”というだけだった。


 ------


 帰宅すると、リビングのソファでくつろいでいた結衣に、運悪く見つかってしまった。

 視線が陽菜の左手に吸い寄せられ、次の瞬間には目がきらきらと輝く。


「え、なにそれ!? 蓮君から!? それもう結婚指輪じゃーん!!」


「ち、違……」


 否定の言葉を出しかけたが、その声は結衣の勢いにあっさりかき消される。


「やだやだ、見せて見せて!サイズぴったりじゃん~。うわ、これ絶対プロポーズだって!やばっ!」


 その横で、エレナが口元を押さえながら、にやりと付け加える。


「うんうん。婚約成立って蓮いってたよぉ~」


「だから違うってば!」


 必死に否定する陽菜をよそに、結衣は


「おめでと~!」


 と両手でぱちぱち拍手をする。


 そのニヤニヤ顔と祝福?の声に、しばらく戦意をそがれっぱなしだった。


 でも、部屋に戻ってから、エレナの頭にげんこつグリグリだけはしっかりお見舞いしておいた──。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
ツギクルバナー
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ