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【悲報】東京のJK、妖精と青春中に“想いのスキル”発動したので恋愛とバトル開始します。-シーズン1-  作者: 新発田 怜
1章 - Kapitel Ⅰ - 学園と日常 編

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第21話:絶賛乙女心中です

 陽菜が家の前に着いたちょうどそのとき。

 タイミングよく、向こうの角から蓮が歩いてくるのが見えた。


「……あ」


 思わず立ち止まった陽菜に、蓮もすぐ気づいた。合流したふたりの間に、少しの沈黙が落ちる。

 そのまま並んで歩き、公園のベンチに腰を下ろした。陽菜は嬉しいはずなのに、なんだかぎこちない。


 そんな空気をふわっと和らげたのは、蓮の一言だった。


「マジで心配した。……元気そうでよかった」


 それは、飾らない、まっすぐな言葉だった。

 陽菜は照れくさそうに鼻先を指でこすりながら、ぽつりと呟いた。


「いや……なんていうか……ちょっと、話しづらくて……」


 その声には、言い訳じゃない、素直な本音がにじんでいた。


「……そりゃ、そうだよな」


 蓮の返事は、責めるでも、詮索するでもなく、ただ優しかった。

 その言葉に、陽菜は思わず顔を上げる。


「でも、連絡なかったのがスマホの水没じゃないってのは、今のでわかった」


「ウチが、んなポンコツな言い訳するねーだろ。てか、スマホ連絡通じたし」


 陽菜は思わず小声で突っ込むが、その口調にはさっきまでのぎこちなさがほんの少し和らいでいた。

 蓮は、そんな陽菜を見て、言葉を選びながらゆっくりと続ける。


「……でも、マジな話、今日こうして会えたから、ちょっと安心したぞ」


 陽菜は視線を落とし、小さく息を吐く。


「……ほんと、ごめん。迷惑かけたし、助けてもらったのに、自分のことばっかで……」


 その言葉の途中、蓮は陽菜の頭をそっと抱き寄せた。彼女の額が自然と蓮の胸に触れ、優しく頭を撫でられる。

 陽菜はそのまま目を閉じた。


「……あのとき、どうしてウチがヤバいってわかったん?」


「……響いた。たぶん、エレナが教えてくれたんだと思う」


 陽菜は微笑んで答えた。


「そっか、エレナ……ありがと」


 それを聞いたエレナは、得意げに腰に手を当て、ふんっと鼻を鳴らした。


 蓮は少し照れくさそうに言葉を続ける。


「……だから、俺はまだ陽菜の彼氏としては未完成。これから完璧にならないとな」


 その言葉に、陽菜はふんわりと笑って頷いた。

 が、その直後──


「うん……って、ん? あれ……? ちょっと待って……ウチら、付き合ってたっけ……?」


「あれ?……ちがうよね……ウチ……検討中じゃったんだよじゃね……」


 陽菜は突然混乱しはじめ、言葉を探してしどろもどろに自問自答を繰り返す。

 顔は見る見るうちに真っ赤になっていた。


 エレナはそんな陽菜の様子を見て、手を後ろに組み、微笑みながらくすくす笑っている。


 そのとき、蓮がまっすぐな声で言った。


「じゃあ、俺が言う。……お前の彼氏になるから」


 そう言って、そっと陽菜の手を握る。

 陽菜は一瞬驚いたように目を見開いたが、すぐにその手を握り返し、優しく答えた。


「うん……でも、頑張りすぎると疲れて“デスっちゃう”よ」


 蓮が笑いながら頷いたあと、少しもじもじとしながらポケットに手を入れた。

 そして、取り出されたのは、小さな白い箱だった。


「……あのさ、実はこれ……」


 そう言って蓮がふたを開けると、中には細い銀のリングが一つ、静かに光っていた。

 陽菜の心臓が一気に跳ね上がる。


「え……な、なにこれ……? どしたん……」


 目を丸くした陽菜に、蓮は少し照れたように笑った。


「いや、あんとき、これ買いに行ってたんだ。おまえ、ちょっと前に誕生日だったろ?」


「でも、誕生日のときはまだ、おまえが“陽菜”だって気づいてなかったから……だいぶ遅れたけど、おめでとう」


 陽菜は言葉が出なかった。


「……っ」


 ゆっくりと箱からリングを取り出して、そっと右手の薬指にはめてみる。

 ほんのりひんやりした金属が、肌にふれる感覚。

 でも、それ以上に、胸の奥がふわっと熱くなる。


「サイズ、大丈夫そうか?」


「うん……ぴったり……」


 陽菜がそう呟くと、蓮はほっとしたように目を細めた。


「一応、おそろいだから」


 そう言って、蓮は自分の右手も見せる。

 そこには、同じデザインのシンプルなリングが光っていた。


 陽菜はぱっと顔をそむけた。頬がぽわっと熱を持ち、耳の先まで真っ赤になっているのが自分でもわかる。


「なんか、こう……こんな展開……脳が……バグるんだけど……!」


 ぽつぽつと口にしながらも、陽菜の表情はどこかうれしそうで、くすぐったそうで。

 目元もほんのり潤んでいた。

 そして、そっと手をかざし、右手の薬指のリングを眺める。


「……ありがとう、蓮。ほんとに」


 その声は、自然とこぼれ落ちた。

 蓮は気恥ずかしそうに目をそらしながら、ぼそっと言った。


「……いや、礼言われると逆に照れるから……」


 二人の間に、甘くて静かな空気が流れる。

 今の陽菜は、まさに“乙女心”ど真ん中だった。


 そんなふたりを、少し離れた場所からエレナがニコニコ見守っていた。


「いや~青春ですねぇ~」


「見てたんかい!」


 陽菜が思わず突っ込むと、エレナはニヤニヤしていた。


「んふふ、ふたりとも、お似合いだよ~。 陽菜、ついに恋人同士だね」


 陽菜は耳まで真っ赤にして、なぜか全力で否定した。


「いや、違うし! まだ、ちげーかったりしたんだし!!」


 自分でも、何言ってるのかわけがわからなくなっていた。

 何を言ってるのか、自分でもわからなくなっていた。


 蓮はぽかんと目を丸くしていた。


「……エレナ?」


 次の瞬間、蓮の視線は、はっきりとエレナを捉えていた。

 青い髪に、淡く光をまとった妖精の少女・エレナ


「また見えたのか……?」


「おう、がっつり見えてる」


 エレナは、宙にふわりと浮かびながら、ふたりに微笑みかけていた。


「ふたりの想いが、ちゃんとまっすぐにつながってる証拠だよ」


 エレナは微笑みながら言った。


 蓮と陽菜が見つめ合う。

 蓮がそっと手を伸ばし、陽菜の頬に触れる。


 キスをしようとする蓮に、陽菜も目を閉じて応える。

 その瞬間、陽菜は片手でエレナの顔をそっとふさいだ。


 けれどエレナも、自分の手で目を覆っていた。


 だが、ふたりの唇が触れようとした、そのとき──


「見つけたわ!!」


 鋭い声とともに、ひとりの女性がふたりの前に現れた。

 それは、以前、学校の食堂に現れた雨宮彩華だった。


「蓮! 離れて。そいつは鬼……”妖”なのよ!!」


 陽菜は目を見開いた。

 その瞬間、彩華の身体から、青い“想いの揺らぎ”が立ちのぼるのがはっきりと見えた。


「エレナ……共感覚ってやつで、ウチにも見えたわ」


 エレナも真剣な表情で頷いた。


「うん……これは、ただの嫉妬とかじゃない。何か……もっと違うものを感じる」


 ──あのとき彼女が現れたのは、ただ蓮が好きで、その邪魔をするためじゃない。


 陽菜もエレナも、それだけではない“何か”を本能的に感じ取っていた──。

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