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記されぬ勝者


《神核の番犬・改》の破壊によって、

ノルド帝国の侵攻作戦はついに完全崩壊した。


残存する魔導獣たちは自壊、

補給線は断たれ、軍全体に撤退命令が下される。


空と地を焦がした戦いは終わりを迎え、

島には、静かな風が戻っていた。


だがその勝利を、讃える者はなかった。


無線封鎖解除、そして通達

島の本部に、久方ぶりの通信が入ったのは、

《番犬・改》崩壊のわずか三日後だった。


「こちら王都本営。停戦命令が正式に調印された。

直ちに武装解除を進め、ノルド帝国・エルフ族との交渉に備えよ」


淡々とした、冷たい声だった。


副官が呆然と呟いた。


「まるで、何も起こらなかったかのような……」


オルデンはただ、黙って受信機を見つめ、

静かに命じる。


「武装解除を始めよ。

ただし、“魂”まで手放すな」


撤収と沈黙

その日から、島の守備隊は解体に向けた作業に入った。

砲座は封じられ、結界は解除され、

戦い抜いた兵たちは本国へと順に送還された。


だが帰還先で、彼らを待っていたのは――

栄光ではなく、沈黙だった。


語られぬ戦い

この島で何があったのか、

本国の記録には“敵軍の撤退”としか書かれていなかった。


イケナの魔法も、

騎士団の飛行作戦も、

砲撃隊の死闘も――


**「存在しなかったこと」**にされた。


ある者は口を閉じ、

ある者は叫び、

ある者は故郷に戻り静かに農具を握った。


ヒメカもまた、封印の地に一人残され、

誰に語られることもない“祈り”を続けていた。

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