終焉再び、魂の刃
《神核の番犬・改》が進軍を開始したその瞬間、
戦場にいた誰もが理解した。
――これは、生きて帰れぬ戦いだ。
空を覆う魔力の奔流。
大地を揺るがすたびに、兵の顔が歪む。
それでも、誰一人として退こうとはしなかった。
騎士団、最後の迎撃線へ
「砲座、装填急げ! 長距離では意味をなさない、至近距離で撃ち込め!」
「《漆の翼》、番犬の背部へ回りこめ! 核が再構成されているはず!」
レイファを先頭に、七人の飛行魔法騎士は、
まるで自らの命を火に投げ入れるように、空を裂いた。
魔導砲が唸りを上げ、
砲火と魔力の閃光が島を覆う。
それでも――
《番犬・改》は止まらない。
むしろ、食らうほどに進化を始めていた。
「やっぱり……このままじゃ……!」
聖域、目覚めの時
そのとき、巫女ヒメカは島の聖域にひとり、
術式を完成させつつあった。
「イケナ様……私は、怖いです。
でも、あなたが見せてくれた背中が……
今もこの島を守ってくれています」
手には、魔法式が刻まれた“魂渡の水晶”。
そこに込められたのは、
イケナが最期に残した魔力と記憶。
「魂渡の印、起動。
降りてください……終焉の光よ」
七つの魔方陣が宙に浮かび、
水晶が砕ける。
その瞬間、島中に響く声――
「……もう一度だけだぞ。今度こそ、本当に眠るからな」
それは、確かにイケナの声だった。
終焉再演:断界超穿
島の空に浮かぶ七層魔法陣が、ひとつに重なる。
兵たちはそれを見上げ、誰もが目を見張る。
「……あれは……イケナ様の、魔法……!?」
空を裂くように現れた一条の光、
その名を再び刻む。
“断界超穿――終焉光刃”
《神核の番犬・改》の胴体を貫き、
再構成された魔核すらも砕き散らした。
衝撃と閃光。
地鳴りと崩壊。
魔獣は断末魔すらあげず、
沈黙のまま、崩れ落ちた。
記憶のなかの英雄
聖域の地に、ヒメカは膝をつく。
その手に残されたのは、砕けた水晶のかけらだけだった。
兵たちが、静かに頭を下げる。
誰もが知っていた。
これが、“もう一度だけの奇跡”であったことを。
オルデンは天を仰ぎ、
静かに目を閉じた。
「ありがとう、イケナ。
君の魔法が、再びこの島を護った」




