神核の番犬、再誕
人間たちの死力を尽くした防衛線。
黒き翼の騎士団と魔導砲の連携により、
進軍してきた魔導獣の大半が撃破された。
兵たちに、安堵と疲労の気配が漂う。
だがそれは、
嵐の前の――静けさに過ぎなかった。
ノルド帝国・禁忌の研究塔
戦場より遠く離れたノルド帝国領内。
巨大な魔導研究塔の地下で、
エルフたちがとある“儀式”を完了させつつあった。
「解析終了。……“神核の番犬”、再構成完了」
かつてイケナによって葬られた、
神造魔獣《神核の番犬》の残骸。
その肉片、砕けた魔核、死にきらなかった魂核。
それらを魔導融合術で再編成し、
さらに外装を“霊獣の骸”で強化した結果――
新たな破壊兵器が生まれた。
その名も、
《神核の番犬・改》
咆哮一つで雷雲を呼び、
魔力を喰らって成長する、進化型の魔導獣。
「……もはや、誰の声も届かぬ。
戦などではなく、“一掃”だ」
エルフの指揮官ファリシェルは静かに命じた。
「放て。“島”を喰らえ」
霧の彼方より響く声
数時間後。
霧の濃さが異様に増した戦場で、
先行部隊の観測士が耳を疑った。
「……おい……この音……」
地響きとも雷鳴ともつかぬ唸り。
空が反転するような魔力の震え。
その正体を見た者は、
思わず武器を落とし、地に膝をついた。
「まさか……また、あれが……!」
視界の彼方に見えたのは、
より巨大化し、魔力の靄を纏った魔獣――
《神核の番犬・改》の姿だった。
総軍への警鐘
観測報告を受けたジェネラル・オルデンは、
ただちに全軍へ通達を出す。
「全前線兵へ。直ちに第三防衛線へ後退。
《神核の番犬》が再出現。これより、最終迎撃態勢に入る」
副官が声を詰まらせる。
「まさか、再び奴が……!? イケナ様の犠牲が……!」
「否。あれは“別物”だ。
そして、イケナの意思を継ぐのは我らだ」
兵たちは皆、覚悟を決めた表情で頷いた。
封印、解かれる
その時。
島の最奥、古い聖域にて。
長らく封じられていた“ある魔法装置”が、
突如として脈動を始めた。
巫女ヒメカがそれを感じ取る。
「これは……あの時、イケナ様が私にだけ教えてくれた……
最後の魔法、“魂渡の印”……!」
それは、死者の残した魔力と記憶を媒介に、
“もう一度だけ”術を再現する、禁呪。
イケナの“最後の魔法”が、
再び使われる時が来た。




