再侵攻、死の潮流
ツラギの滑稽な幕引きから数日後――
霧の島に、再び空気の“重み”が戻ってきた。
島の兵たちは知っていた。
《神核の番犬》を倒したからといって、戦いは終わらない。
それは、あくまで序章だったのだ。
ノルド帝国、再動
霧の向こう、ノルド帝国の前線拠点。
そこに黒い影が蠢いていた。
魔導獣育成坑――
エルフ族が長い年月をかけて創り出した“兵器の胎内”。
「神核の番犬を喪失した……となれば、次の駒を動かすまで」
魔導将ファリシェルが言う。
「次は“数”だ。
抑制された力ではなく、
解き放たれた“死”そのものを送れ」
坑の封印が開かれた。
その奥から、数十体の魔導獣が這い出す。
牙、羽、鱗、毒、熱――
どれもが単独で町一つを壊滅させうる存在。
それが“群れ”を成していた。
島の観測塔
霧を監視する島の観測塔。
魔導測定官が震えながら報告する。
「き、北西霧層の密度が急上昇!
魔力反応、複数っ……この数……これは……!」
ジェネラル・オルデンは、すでに身を起こしていた。
「予想通りだ。奴らは、“次”を用意してくる。
だが我らも、“迎え撃つ力”を整えねばならん」
オルデンは、指揮幕に手を伸ばす。
「全軍に通達。
第二次防衛線に後退しつつ、魔導砲座を再配備。
騎士団は“決戦布陣”に移行せよ。
そして――“彼ら”にも声をかけろ」
兵士が、少し目を見開く。
「まさか……“あの”部隊を……?」
「今こそ、再び羽ばたいてもらう時だ。
あの黒き翼が、戦場を駆ける時が来た」
戦地への誓い
島の高地。
イケナの眠る場所に、ヒメカが祈りを捧げる。
「……お願いです。
あなたが命で止めた“災厄”を、
今度は皆で防ぎます。
だから、見ていてください……」
祈りの声が風に乗り、戦地へと届く。




