空より来たる刃
神核の番犬の撃破と引き換えに、イケナは倒れた。
その犠牲は、島全体に重くのしかかっていた。
だがジェネラル・オルデンは、その沈黙を許さなかった。
「このまま“英雄の死”をただの犠牲にしてはならん。
次は──こちらの番だ」
オルデンが呼び出したのは、
かつて帝都防衛のため温存されていた、極秘部隊。
《第零空挺騎士団・漆の翼》
飛行魔法を会得した、たった七人の騎士。
その全員が単独で城を落とせると言われた伝説の精鋭たちである。
指令:補給基地・砲撃拠点の破壊
「目標は、ノルド帝国がこの島に展開している“海上補給基地”および“砲撃基地”。
補給線を断てば、いかに数で勝る奴らも継戦能力を失う」
ジェネラルの言葉に、漆の翼の副長、黒髪の騎士レイファが頷いた。
「了解。“羽を休める暇もない戦”の幕が上がるわけですね」
「……これは“仕返し”ではない。“誇り”のための一撃だ」
七人の騎士が、空へと舞い上がる。
黒い風のように、夜の帳に紛れて。
第零空挺騎士団の空襲
ノルド帝国の前線拠点は、
封魔結界の管理拠点でもあり、
長距離砲撃の起点でもあった。
そこに突如として襲いかかる七条の飛行影。
「空から敵影!? そんなはずは──」
「封魔空域に、飛んでいる!? 何者だ──!!?」
一人が雷の槍を背に纏い、
一人が幻影と共に敵陣へ突入する。
一人が宙で剣を交え、指揮塔を真っ二つに断つ。
「漆の翼、標的二、排除完了。次は弾薬庫、突入します」
「三番、燃料庫を魔導爆薬で破壊。炎上確認。──問題なし」
騎士たちは完璧な連携で動き、敵の防空陣形を一切許さなかった。
ノルド帝国、混乱
「まずいぞ! 空から来るなど、想定外だ!」
「砲台が燃えてる! 魔導弾薬庫が──っ!」
ノルド側の指揮官たちは一時混乱。
砲撃拠点の半数が壊滅し、
補給船の誘導ビーコンまでもが破壊された。
一夜にして、
「補給」「砲撃」「空間制御」
三つの主軸が破壊され、ノルド帝国の戦略が崩れかけていた。
帰還と報告
翌朝、七人の騎士は無傷で帰還した。
ただ一人、肩に傷を負いながら笑っていた副長レイファが、
オルデンに報告する。
「任務完了。敵の支配は、今夜を境に歪み始めるでしょう」
オルデンは静かに頷き、
兵たちに告げた。
「これが、我らの“夜明け”だ。
人の意地と空の矜持が、道を切り拓く」
次回予告
次回【第二章―十三:刻まれぬ勝利】では、
補給を断たれ、後退を余儀なくされるエルフ軍。
一方で、未だ動かぬ本国と、戦場に残る英雄たちの葛藤が描かれます。
この勝利が、歴史に残らぬことを誰もが知りながら、
それでも“守るべきもの”のために、彼らは戦い続ける。




