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砲声、島を渡る

イケナが結界の一角を破壊した数刻後、戦場には再び魔力が流れ始めた。


まだ全域に回復はしていない。

だが──それでも“希望”は動き出していた。


その兆しにいち早く反応したのは、

かつてオルデンが本国の解体命令に背いて密かに整備していた長距離魔導砲部隊だった。


遠距離砲、再起動

「ジェネラル! 魔力流が最低限、再供給されました!」


「……よし。“焔槍一号”、点火準備。目標、北西域──敵本土艦隊陣地」


魔導技師たちが一斉に走り出し、

山頂に偽装された砲台が、沈黙を破って回転を始める。


焔槍一号えんそういちごう――通称“アグニの腕”

人類側の最大出力魔導砲。

大戦末期に投入されたが、敗戦と同時に“廃棄”を命じられた兵器。


だが、オルデンは言っていた。


「使われぬままの矛は、磨いておくものだ。

そうしてこそ、“備え”になる」


ノルド帝国の砲撃

ちょうどその頃、ノルド帝国も動いていた。


「この距離なら、我がノルド本土より、砲撃が届く。

島ごと焼き払え」


霧の向こう、遥か本土から魔導砲弾が島へと撃ち込まれた。


それは、結界の再建が間に合わぬ今、直撃すれば島の半分を吹き飛ばしかねない威力だった。


島の兵たちが避難する間もなく、

砲声が空を裂く──!


しかし、その弾道を塞ぐように、島の高台からもう一条の光が放たれた。


“アグニの腕”、発射

「──撃て!!」


オルデンの号令と共に、

全身の結界膜を震わせるような魔力の奔流が、焔槍砲から解き放たれた。


巨大な紅蓮の矢が空を切り、

ノルドから放たれた砲撃と衝突。


空が震え、霧が割れ、

二つの帝国の“意志”が空中でぶつかり合う。


「弾道、遮断成功! ノルド砲弾、軌道変更しました!」


爆風の中、兵たちが歓声を上げた。


第二射、報復

「よし……ならば、こちらも打って出る」


オルデンは冷静に次弾の指示を下す。


「次の目標座標は、敵の補給艦陣地。

──送れ、“目覚めの一撃”を」


第二射が放たれ、数十キロ彼方のノルドの後方海上補給陣に直撃。

エルフの補給船団に大損害を与える。


ノルド側の指揮官たちが動揺する中、

島の兵たちに希望が戻っていた。


戦場の声

「やった……! あんな遠くまで届く砲が……!」


「ジェネラル……あんた、最初からこれを……!」


ヒメカが涙を浮かべながら言う。


「……あなた、ずっと……ずっとこの瞬間のために……」


オルデンは静かに答える。


「備えなき者は、未来を守れぬ。

この砲は“命令”で動くのではない。

“選ばれた覚悟”で撃たれるものだ」

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