数の暴力、迫る影
空が再び曇り、地が揺れた。
ノルド帝国──
その主戦力は「質の高い兵」と「魔力兵装」だけではない。
何よりも恐ろしいのは、**“終わらない物量”**だった。
──エルフ重装部隊、第二波・三波・四波──
島の北端には既に六千を超える兵が上陸していた。
押し返される戦場
イケナ率いる魔導部隊の活躍により、第一波を殲滅。
さらに第二波の中核を撃破したものの──
「こいつら……数が、終わらない……!」
「後衛からまた来る! 魔導機兵だ!」
戦場を挟んで、明らかに押し返されていく感覚があった。
兵数、補給、武装、魔力支援、あらゆる面で人間側は後れを取っていた。
それでも、イケナの杖が再び振り下ろされる。
イケナ、指揮官を狙う
「敵の核を叩く。逃がすな」
イケナは全魔導視覚を展開し、指揮官クラスのエルフを視認。
即座に術式を組み上げ、空間跳躍+貫通魔法を用いて距離を無視する。
「──断界穿衝」
空を裂いて放たれた一条の紅光が、
戦列の後方にいた高位魔導士長“カヴァリール”の胸を貫いた。
「ぐ……っ、この、程度……!」
「“この程度”なら、何人も消してやる」
イケナは魔力強化した脚で飛翔し、次の標的“戦槌のヴァイゼル”、
“雷槍のノゥム”を立て続けに粉砕した。
指揮官を次々に失った前線のエルフ兵は、数で優位に立ちながらも一時混乱をきたす。
それでも、潮は引かない
しかし、それでも──
「指揮官がやられても、奴らは止まらん……!」
「魔導兵器だけで突っ込んできやがる……っ!」
イケナの背後の部隊にも疲弊が見え始めていた。
数は尽きず、魔力は削られ、そして“何か”が戦場に流れ込んできていた。
オルデンが塔の上からその“違和感”に気づく。
「……風が、変わったな。
術式が歪む……?」
イケナもまた、空気の粘りに気づき、呟いた。
「まさか、あれを使うのか……」
次回予告
次回【第二章―七:封魔の結界、静寂の幕】
エルフ軍が展開したのは、**大陸魔術でも禁術に近い「封魔結界」**だった。
発動と共に、人間側の魔導兵たちは術式を発動できなくなり、魔法の支援も封じられる。
頼みの綱であったイケナの力すら、次第に弱体化していく──。
魔法なき人間たちに、絶望の波が迫る。




