表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

16/31

イケナ、空を焦がす

戦場の空気が、一瞬にして変わった。


霧の中から現れたのは、灰色のローブを纏い、銀の杖を握る一人の青年──

イケナ・アルゼルグ、

かつてエルフ魔導戦団を単騎で殲滅した“呪炎の魔導将”にして、ジェネラル・オルデンが極秘裏に温存していた切り札である。


その背後には、選りすぐられた三十名の精鋭魔導兵。

全員が帝国魔術院最高位に匹敵する魔導ランクを持ち、

本来なら本国防衛に配属されていた者たちだった。


天を断つ一撃

「ここが、来るべき地だったようだな」


イケナは一歩前に出て、エルフの第二陣が押し寄せる谷に向かって杖を掲げた。


「空よ、割れろ」


その瞬間、大気が震えた。


灰色の霧を切り裂いて、

轟く雷鳴が、天より燃える柱となって降り注いだ。


──“焦天断雷しょうてんだんらい”。


数百の雷槍が束となり、戦場を走るエルフの重装歩兵を焼き払い、

大地ごと数百メートルを抉り、地形を変えるほどの“魔の斬撃”が走った。


「……こんな魔法、人間が扱えるはずが……!」


敵指揮官の口が、乾いたまま開いた。


精鋭部隊の猛攻

続いてイケナの背後の魔導兵たちが展開する。


「霧散らし陣、展開! 斉射用意!」


「三番班、転移阻害魔法、起動! 四番、火線遮断!」


「魔力線上昇! 重力強化、敵装甲を沈めろ!」


三十の精鋭が三十通りの魔法を同時に展開し、

雷・火・風・重力・空間と、五系統魔法が連携しながら次々と敵を蹂躙していった。


焦るエルフ軍

「これは想定外だ……! 人間が、ここまでの魔法を……!」


退避壕から観察していたノルド帝国の魔導司令、ルヴェールは歯を食いしばる。


「……いや、これは“奇襲”だ。まだ負けたわけじゃない」


彼の視線は、遠方から到着した“後衛補給団”の兵たちに向いていた。

武器も新型、魔力供給装置も最新型。

さらに、まだ後方には一万の兵が控えている。


「この勝利は一時の幻。

数と質、兵站と魔具、すべてにおいて我らが上だ。

次は──我々が潰す番だ」


最後に

戦いの後、イケナはオルデンと短く言葉を交わした。


「どうだ?」


「……足止めにはなった。しかし、勝ったわけじゃない」


「だろうな。

俺たちは勝利じゃなく、“意味のある時間”を稼いでるだけだ。

でも、それでいい。

“命をつないだ”ことに、意味がある」


オルデンは、静かに頷いた。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ