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血と誇りの防衛線──騎士団、霧を断つ

「霧が、開いた──!」


見張り台からの叫びと共に、島の北端に張られた薄い結界膜が、音もなく破れた。

ノルド帝国の第一波、魔導重装歩兵部隊が突入してきた。


敵はエルフの兵で構成され、全身に魔力装甲を纏った巨躯。

結界を裂いての上陸と同時に、魔法の矢、雷撃槍、地脈砲が島の森に降り注いだ。


だが、その霧の裂け目に、ひと筋の青い光が走った。


「────騎士団、突撃!」


剣を高く掲げたのは、騎士団長セイラン。

彼の命に従い、五十余名の騎士たちが一糸乱れず、剣を構えたまま前進する。


己の死を恐れぬ者たち

「この島は、魂の地だ! お前たち異民族に、指一本触れさせはせん!」


セイランの剣が魔導兵の頭部を斬り裂いた。

魔力装甲を貫くのは、千年の鍛錬による一太刀のみ。


「はぁあああああッ!!」


続く騎士たちが魔法と剣を組み合わせ、敵の先鋒を押し返す。

彼らは“戦って死ぬ”覚悟ではない。“生きて守る”ために死地に入っていた。


魔導砲が着弾し、何人もの騎士が霧に沈む。

だが、誰も退かない。誰一人として。


「弓隊、ここだ! 我らがこの線を守っているうちに、背後の霊巫女を退避させろ!」


「騎士団は時間を稼ぐ! ここを通したら、霊脈ごと潰される!」


オルデンは結界塔からその光景を見ていた。


「……あれが、“命じられずに戦う者たち”か」


その目には、ほんの一瞬だけ光が揺れていた。


セイラン、言葉なく──

数刻が過ぎ、敵の第一波がほぼ殲滅される。

だが、霧の向こうには第二波、第三波が控えている。


セイランは息を整え、返り血を浴びた剣を握り直した。


「……もう一波、来るな」


騎士たちは笑う。


「あと三波までは、立ってられます」


「いや、四波までならいけるかも」


「背中が守られてるうちは、足も動くよ」


彼らは冗談を交わしながら、前を向き続けた。

それは“逃げ場のない笑い”ではなく、誇りある者の微笑みだった。

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