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誇りの選択 炎は命ずるに非ず──戦うか否かは、貴殿らに委ねる

霧が、ついに音を立て始めた。

北方霊脈塔が再度共鳴し、ノルド帝国の魔導艦艇が島の結界に干渉し始めたのは、その日の昼前だった。


ノルドは“無言の宣戦”を選んだ。

不可侵条約を明文化するでもなく、突如として霧の奥に“火”を帯びた雷を放ち始めたのだ。


魔導警戒網が赤く染まり、島全体が緊張の色に包まれる。

司令部には前線部隊と魔導班、霊巫女、予備兵を含む将兵が集められた。

前例のない非常集会だった。


そして、その壇上にジェネラル・オルデンが立った。


演説:将軍の呼びかけ

「皆……よく集まってくれた」


オルデンの声は決して大きくない。

だが、言葉が霧の奥にまで届くような、深い響きを持っていた。


「私は、命令を下すためにここに立っているのではない」


兵たちが顔を上げる。

セイラン、イケナ、ヒメカ、飛行魔騎士団。すべての目が一点に集まる。


「この島は、本国から見放された。

不可侵条約を信じた者たちは、敵が来ないと断じ、補給を打ち切った。

――それが、現実だ」


言葉は淡々としている。だが兵たちの胸に、静かに火が灯っていく。


「だが、敵は来た。ノルド帝国は霧を裂き、魔導の雷を以て結界に触れてきた。

ならば我らは、この瞬間に問われている。

戦うか、逃げるか、黙って消えるか、声を上げるか」


間。


「この戦いに、勝利勲章も、歴史の称賛もない。

名前は残らず、戦果は隠されるだろう。

だが……この地を、ここに生きた人々を、“生き延びさせること”はできる」


沈黙の中、オルデンの目が全員を見渡す。


「これは命令ではない。

これは、“誇り”を問う呼びかけだ。

戦うか否かは、各人に任せる。

装備を取る者は、私の元へ。

取らぬ者は、そのまま残れ。

どちらも、咎めはしない」


そう言い残し、オルデンは背を向け、無言で壇を降りた。


騎士団の決断

最初に動いたのは、騎士団長セイランだった。


「……剣を抜く。騎士とは、そのために剣を持つものだ」


そう言って立ち上がり、腰の“封剣”を静かに抜く。

音が、司令部全体に響いた。


続いてイケナ・ダイス。


「燃やしてやるさ。霧ごと、敵ごと、自分の罪ごと。

こんな時に燃えなきゃ、男じゃねえ」


飛行魔騎士たちが立ち上がり、短く礼をとる。


「空を守ります。地が焼かれても、上から見る者がいれば、終わりじゃない」


そして、巫女ヒメカが結界から静かに歩き出た。


「霊たちは、ここに残れと告げています。

ならば、私はここに残ります」


ひとり、またひとりと、志ある者たちが立ち上がっていく。

“命じられたから”ではなく、“自分で選んだ”のだ。

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