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まわりくどい証明

作者: 角生

 私は今一つの証明を試みたい。それは私の周辺で起こった不可思議な現象についてである。最初に知人によって「君と良く似た人物を見かけた」との証言があった。それに続いて多くの知人が「私本人を見かけた」と証言を行なった。

 証言の一部を再現すると

「少し前に駅前で君を見た」

「今日の昼間、君が商店街を歩いていた」

「さっきまで近くの飲食店で君が食事をしていた」

 などである。

 多くの証言を検証すると、以下の事実が浮かび上がった。

 ・ここ二週間以内に

 ・私と極めて空間的に近い場所に

 ・私と極めて酷似した人物が出現した

 これについて私は当初『私に風貌が酷似した人物が、近くに転居してきた』との見解を持っていた。しかしこれについては「何度も見かけているが、どう見ても君本人としか思えない」との証言が多数あり、取り敢えず結論を留保した。

 それで私は二つの仮説を立てた。一つはドッペルゲンガー説であり、いま一つは私本人の二重人格説である。

 二重人格説はすぐに破綻した。それは同時に、二人が別々の場所で見かけられる事が複数回あった為である。例えば「五分ほど前に買い物している君がいた」との証言に対して一時間前より喫茶店で過ごしている私がいたりした。これについては私本人の記憶だけでなく、店主や店内の客も証言している。

 ドッペルゲンガー説については、補強する証言が多数あった。

「声をかけたが、気付かないようだった」

「手を振ったが、知らん振りされた」

 等々である。

 則ち、私と酷似した人物と会話した者が一人もいないのである。これだけ多くの目撃証言がありながら、会話した者が皆無なのは偶然と片付け難い。

 しかし残念ながらこの説も本日破綻してしまった。私自身がついにその人物と出会ったのである。

 自宅近くを歩いていると、向こうから「私」が歩いて来たのである。相手は私の事を全く気にせず通り過ぎて行った。その人物が私自身であり、ドッペルゲンガーではないと言える理由は『隣に交際中の彼女が居た』為である。正確に言えば、「私」と彼女は子供を真ん中にして、三人で手を繋いで歩いていたのである。


 私はここで大胆な仮説を思い付いた。

 ==その人物は「未来の私」なのではないか==




「それで」

 と彼女が言った。

 私は胸を張って言った。

「それを証明すべく、今すぐ君と結婚したい」




 私の証明はまだ成功していない。

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