第六十九話 鬼と吸血鬼と生き人形
シルバーさんの通信機からピッと音が鳴る。シルバーさんが音がなった瞬間目にも止まらない速さで耳元に通信機を当てる。
「はい、こちらシルバー。はぁ? 待ってください! どういう… 待って隊長! 待っ…! 切るなウィルさん!!!」
ピッと再び音が鳴る。どうやら通信が切れたらしい。
「チッ!」
バン!!! と車のドアを開け外に飛び出すシルバーさん。
「何が… 待ってシルバーさん!」
正人もシルバーの後を追い寝ているメリーさんを背負い外に再び出るが、遅れて出たからかシルバーの姿は何処にも無かった。
「…いったい何処に。…?」
微かに残る血の匂い。
「…よし行くか」
シルバーさんは、慌てた様子で出ていった。何かあったんだ。急いで探して理由を聞かないと。
「…あっちか」
微かに残る血の匂いを頼りに知らない土地を走る。グングンと速度を増す足に爽快感を覚えつつ、匂いを嗅ぐ。
クンクン。
「…はぁ、はぁ。だいぶ遠くに来たけどシルバーさん何処だ。ん…? これは…血?」
チリチリと燃えカスのように宙に消える血を見つけた。
まだ新しいからか消えてない。シルバーさんは、近いのか。
道路を走り、壁を走りながら下ったり、血の匂いを追う事にもだいぶ慣れた頃匂いが強くなってきた。
強くなる匂いのする方に歩み、近くにいることが分かった。
だんだんと匂いの元に近付いているからか血の匂いが濃くなる。
先程の車内では、気にもならなかった匂いをここまで集中して血の匂いを嗅いだせいか、喉が痛い。
正人は、匂いを追い辺りを探すと、前に倒れて眠るシルバーを見つけた。
正人は、シルバーを見つけたは良いが現在地が何処か分からず車までの道が分からずにいた。
…何か戻る方法は。メリーさんに聞く? いや…スマホじゃないんだから。
「お困りのご様子ですね。正人ボーイ」
「あーちょっと車の位置を分からないんだ。…二八さんならこういう時どうする?」
正人は、突如現れた二八に聞く。
「私ですか? 私は… 普通にお兄ちゃん、いえ隊長を呼びます。何処に居ても呼べば来ますからホント頼りになりますいつも…」
「え、薙が…。そう言う所あったんだ。案外兄妹には優しいブラコンなの…」
「ブラコンとは失礼な家族想いのファミコンです!」
「ちょ…ハハ。 ファミコンは、ゲーム機でしょ…」
「え? ファミコンってゲーム機何ですか? 知ってましたハジメちゃん、ファミコンはゲーム機らしいですよ!」
「…いい加減止めないこのノリ。あんたも変だよ気でも狂ってるのか!?」
「…え? だって二人は僕が産み出した幻覚じゃないの…」
「ハハハ! 正人さん、幻覚を作れるほど友達居なかったんですか… ヒ~腹痛い... 私の手触れます?」
正人は指先で軽く幻覚と疑う二八の手を突っつく。
「良くできた幻覚だな… ん? え! わぁ!」
正人は、気づいた二人が実物であると。
「やっと気づいた。もう疲れる帰りたい、薙お兄ちゃんと結婚したい…」
「はいはい、そういうぶっ混んだ発言は粛清対象なので斬首ですよ…」
「え? ほ、本物…」
正人は、腰が抜ける。
「グヘ!?」
腰が抜け、尻餅を着いた衝撃で正人の頭と背負ってたメリーさんの頭がぶつかる。その後、正人は背負う手を離しメリーさんは地面に頭をぶつけた。
「ん… 痛い。ここ何処です?」
「どうして二人がここに...」
「色々と切羽詰まってるので説明は移動中にでも! ほら懐かしの車内移動ですよぉ」
二八が指を指す方向に道路が見えた、そこに日本で見覚えのある黒い車が止まっていた。
「気付かなかった…」
「ほら、腰抜かしてないでそこの倒れている人を運ぶの手伝って! ほら1~2~1~2!」
「立つの手伝います?」
ハジメが手を差し出す。
「あ、ありがとうっ…て!? え? はぁ!?」
「あっいけね。力入れすぎた… すみませんね」
正人の体はハジメの手を掴みながら釣り上げられた魚のように宙を浮きハジメの手に抱えられる。
「よっと…。ふぅ、同じ鬼仲間として許してね?」
「お、鬼?」
「おい、小娘… 丁重に扱え…。 あと早くおろせ」
「おー怖い怖い。古くから付き人怒らすべからずと言いますから...。まぁ付き人の各や性格で主の人柄が決まると… フッ…」
ハジメは、メリーさんを見て鼻で笑いながら正人をソッとおろす。
「…! フッ。命拾いしましたね小娘。正人さんが居なければ粉々にして魚の餌でしたよ…」
「つまり殺せたと…私を。小さな者ほど大きく見せたがる。蟻ん子が鬼様を殺せるとでも…」
「…はいはい、喧嘩腰はそこまでにしてさっさと移動しましょう。ハジメちゃんも... 久しぶりの外ではしゃぐ気持ちは分かるけど旅行じゃないんだから... 大人しく...ね?」
「…はいはい。薙お兄ちゃんには内緒でお願い」
「ハジメちゃんはいつからアホに…。私の視界でもう薙隊長には筒抜けですので」
「…え?」
「…では、ハジメちゃんを置いて行きましょうか」
「いや、何処に… まさか... またあの部屋に監禁…」
「まぁまぁ悪いようにはしませんので行きますよ!」
腕を掴まれ無理やり乗せられる車内。
「い、嫌だ! 監禁だけは!」
「しませんよ。あとあれ監禁じゃなくて保護だったんですよ。正人さんは原初を救える特効ですから丁重な拘束でした… まぁ、後から聞いた私から見ても少し、ほんの少しやり過ぎかなって思いましたが…」
ドンと引かれた腕で無理やり車内に乗せられる。
シルバーさんも強引に乗せられていた。
「ゴホ…」と微かに咳をする。
「怪我人なんだから優しくしろ!」
「大丈夫ですよ。丈夫ですから彼は」
運転席に二八、助手席にハジメが座る。車は発進する。
「ふぅ... ここまで来るのかなり大変だったんですから。事態は急展開の連続と街中での大怪獣バトルさながらの崩壊であの人が動くのも近い所まで来てます」
「さっきの爆発も...それが関係しているの?」
「…良いですか正人さん。貴方が頼りなんです。男子たるもの一度は思うでしょう世界を救いたい。ヒーローになりたいと。貴方は原初にとってのヒーローだったんです。貴方しか救えないとフラン様は言いました。貴方が原初を救うと、あとついでに… 笹原さんも...」
「…え? あの人まさか捕まったの!?」
「はい…前に言った事が原因で... 現在本部地下で臭い飯です…。やっぱり、原初の無断外出が不味かったのでしょう…」
「…ごめん、僕のせいで色々と話が逸れた。それでミルに会えるの」
「…今のままじゃ会えません。まずは本部に行きましょう」
速度を増す車に軽く酔いそうになる。
「ん? 酔った顔しているけど… 酔い止めいる?」
「あ、えとハジメさんでしたっけ… ありがとうございます」
「"さん"とか止めてハジメちゃんって呼んで。はい、酔い止め。水いる?」
「ありがとうございます」
「お礼とか良いよ、同じ鬼仲間だし助け合わないと。君みたな弱い子ほど助けないと…」
「は、はぁ? 鬼仲間って、ハジメさんも吸血鬼なんですか?」
「だから、ハジメさんじゃなくてハジメちゃんって呼んで!」
「あ、すみません。ハジメ… ちゃんは吸血鬼なんですか?」
「いや違うよ? 私は日本に住む鬼神の末裔の家計。東北のど田舎でひっそりと暮らすオニだよ鬼」
「鬼って角の? 赤や青の泣いたり宝を集めたりする鬼?」
「う~ん、かなり違う。昔話に出る鬼とは別。本物だよ私は、角は…無いけど」
ハジメは頭を撫でる仕草をする。
「私や薙お兄ちゃんは詳しい場所は言えないけど東北のど田舎にある鈴宮の本家で育てられたの…。薙お兄ちゃんは私達本家の人間を守る刀として 私は本家の支える柱の一人として…。薙お兄ちゃんは本家の人間じゃないからずっとは一緒とはいかなかったけどあの頃が一番楽しかったなぁ。それに今もだけどすごくかっこ良かった…フフ」
「そう…ですか」
「それに薙お兄ちゃんにね可愛い妹が…!」
「ハジメ様。これ以上俺の事を話すのは止めてください...」
二八から聞こえる薙の声。
「そうだったね。聞こえるって言ってたね。二八ちゃんも薙お兄ちゃんの操る人形の一つだったね」
「…」
「どう? そろそろ終わりそう? 薙お兄ちゃんの屋敷が人形屋敷だってこっちでは噂になっているんだよ。私へと頼みも二八ちゃんに任せて本人は任務とか…会うの楽しみにしてたんだよ私は…」
「すみません。ですがこれは俺が... 妹のためにできる事なので...これ以上の詮索などは止めてください。後日また俺が直接お礼しに向かいますので… 忙しい中来てくれてありがとうございます…」
「良いよ、私は薙お兄ちゃんが大好きだからね。…分かった。これ以上は準当主から何も聞かない… けどハジメちゃんとしては、止めてくださいと一言言っておく…。成功にしろ失敗にしろ琥珀ちゃんは...喜ばないよ」
「分かってます。では… ご内密に。お前も忘れろ田中正人聞かぬが仏。お前には関係の無い話だ」
「…分かった」
二八は泣いていた。が涙を拭き涙を止める。薙にも色々とあるらしい。
「まったく… 死んだら祟るよ私は…」
車は気付けば以前逃げる際に見た建物前に止まっていた。
「あれ、いつの間に…」
「緊急事態なので基地の方から迎えに来たのでしょう」
「基地が...動く?」
訳の分からないことだ。
固そうな門が開き正面から入る。
「安心してください。今度は酷い目には合いません」
「…ありがとう」
僕の不安を消すために言った事に感謝を伝えた後車は停車する。
迎えの人達が数名現れ、車のドアを開ける。
「どうも…」
軽くお礼を言ったが無反応。人形のように思える冷たい表情だった。
「こちらへ、あのお方がお待ちです」
車を出ると前回見る暇の無かった空をが眩しいほどの太陽と青空と心地好い風を感じる。
楽園と言う言葉しか浮かばない完璧な環境と綺麗な建物が並ぶ空間に息を飲む。
「…」
「正人さん、置いていかれますよ」
「あ、待って!」
シルバーさんが協会の人達に担架で何処かに運ばれている。
「気になっている暇は無いですよ、大丈夫ですから血が足りない人は療養所に運ばれただけです」
「ほら行きますよ」と言いながらまたも腕を掴み引っ張られる。
引っ張られながら建物内を見て綺麗で見惚れていると、ある部屋で止まる。
そこは入る時も思ったが城のような大扉に豪華な装飾が使われた扉の前だった。
「はぁ… 緊張する。よし!」
扉を開ける二八。
「来たか…。フッどうやら眷属はまだ現状の理解が足らないようだ」
「失礼します! 田中正人を連れて参りました!」
「ご苦労様、日本から来てもらって早々にこのような面倒事続きで疲れただろう。椅子に座り休みながら茶でも飲みなさい」
何処からかゾロゾロと人が集まり一瞬でお茶会が開かれていた。
そして去っていく人達。
「では…始めようかお前とワタシで世界平和のための話し合いを…」
紅茶を注ぐ音、甘い菓子の匂い。それよりも気になる女性の姿をした化物の気配に体が溶けそうだ。
最後まで読んでいただきありがとうございます。
ゆっくりやっていきます。完結はまだ先の先ですが頑張ります!。
現在、シルバーさんは血の追加中。薙くんは日本での任務中。
鬼とか言っても本編にはあまり関係の無い話ですのでなぜ人間が吸血鬼と戦えるかの理由くらいに思っててください。
鬼神様の補足として、一応人間です。怪力で人間にはない者が見え物を浮かせたりなど普通の人間には出来ない不思議な力が使えた人間が死んだ後子孫達に鬼神として祭られてその子孫にも不思議な力が使える。って設定です、詳しい部分は省きました。
その子孫には、本家と分家に分け本家の人間と本家が選んだ分家の人間がお見合い結婚して繋いでいました。
その分家、戦いや本家を守る守り刀としての分家の一つ刀の一族、杜宮家。
他に複数ありますが、本編には出てきません。
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