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第六十八話 迷い後

 穴の空いた天井から射すわずかな光、薄暗い車内。


 どうにか落ち着くことが出来た僕。


 横で僕の顔色を伺うメリーさん。


 伺う気持ちが前に出ているからか… 体が前に出て頭を僕の頭にぶつけそうになっている。


「…あの。僕はもう平気ですから... その、一度離れてくれると嬉しいです…」


「…? …! 分かりました! 外にいる男を殺せば…」


「はあ…!?」


 飛び出そうしているからか武器を壁に向かって構える。構えた方向にでもシルバーさんがいるのだろうが…。


「メリーさんは何でそう殺すばかりの考えになるの!?」


「いえ、正人さんのために邪魔者は早めに排除して当初の目的をと…」


「当初の目的って…」


 僕は、何を言っているのか分からなかった。


 止めるために腕を掴み羽交い締めにするがびくともせず細身の体からは想像もしない力だった。


「ま、まさか…! 聞いていたの… さっきの話を…」


 意外にも、こういう時の脳の処理速度はいつもの百倍高まり、わずかな情報から謎の閃きと共に答えは一つに集約した。


「はい! ですから… 邪魔な監視者を殺して… 一緒に行きましょう! だから離して下さい怪我しますよ?」


「ぐっ! ダメだ。殺しは無しだ!」


「…! 殺しちゃダメなん… ですか!?」


 動きはやっと止まり… 止められた気がしない尻もちを着く。


「ですが! マサトさんをバカにされたままだと… 私の気がめちゃくちゃになって…」


「…それは。そう思ってくれるのは凄く嬉しいけど… ここで殺しあったとして誰も喜べない。もちろん僕も何も嬉しくないから止めてほしい…」


「マサトさん…。わ、ぐっ! 分かりました…! あの男を… もう殺そうとしません… とても不本意ですが... 我慢しましょう… マサトさんのためにも...」


「…そ、そんなに辛いことなの… 我満するほどの事…?」


 武器を体に納め立ったまま外を睨む。


 空気が揺れる。空気が揺れているからかメリーさんが二重に見える。


 車内も揺れ始め…。


 いや... これは本当に車内か…。


 確かめるために車の外に出ようとする。


「…待ってください、今は外に出ない方が良いですマサトさん…。ここで座って待ちましょう」


「え… どうしたのメリーさん? さっきと言っていることが...ちが――」


 ドッ…………! カーーーン! 揺れから遅れて聞こえた。音が… 明らかに危険だと思える何かが遠くで爆発した音が聞こえた。


 それと同時に車内は激しく揺れる。 


「な、何が起こ... 起こっている!?」


 車が倒れた。


 それほどの揺れが起こったって事なのか。


「…メリーさん、無事?」


「はい、ですが... やはり外は出ない方が良い。ここで私と共に終わるまで待ちましょう…」


「ぐっ! 倒れた時に足を挟んだみたいだ…」


 椅子に挟んだ足は折れていた。


 折れた骨が足の肉を突き刺し血が垂れてくる。


「動かないでください」


 メリーさんが椅子を足を避けて切る。


 抜けた足が治癒していくのが分かる。


「ぐっ!」


「痛みますか足?」


「大丈夫…。今はそれよりも外の様子を見に行きたい…」


 足は確かにまだ治りきって無いからか骨と骨の間に痛みがあるけど、耐えられる。


 直ぐに消える痛みよりも今は今すぐにでも外が気になった。


「ダメです…! 行っちゃ――」


「…ごめん。少しだけだから。外の様子を確かめたらすぐ帰ってくる」


 僕は、弱く止める手がどんな気持ちだったか分からないが… 外に出るため倒れた車の扉を開ける。


「ぐっ!」

   

 外と車内との光の落差に目を細め目に向けて腕で影を作る。


 車のドアを閉める。意外にもメリーさんが着いて来なかった。手を引き車に戻そうと… 罪悪感と何故か車を出た先程から嫌な予感がする。虫の知らせ… 知らない景色への不安からなのか、足を止めていた。


「…行こう」


 動くため、自身に言い聞かせる様に出た言葉。あと数秒止まっていたら一生動かないままだった気がする。


 それほど、車の外は爆発音とは違うとても嫌な気配がした。


 目が光に慣れてきた頃に... 遠くで、とても遠くで爆発する何かが見えた。


 いや... あれは、人影… 人が遠くの街だろう建物が並ぶ場所で爆発の中何かと戦っている。


 それよりも僕の目はいつの間にか良く... いやこれも吸血化が進んだからだろう…。


 急激に進んでいる気がする。


 完全な吸血鬼になるタイムリミットが急激に進んでいる気がして手から冷や汗と共に喉をゴクリと鳴らす。


「なんだ… あれ…」


 僕は遠くで爆発するから目を離す事を忘れていた。


 だからか背後に迫る気配に気がつかなかった。



「避けろ…!」


「え…」


 シルバーさんの声で気づき、振り向く。


「見・つ・ケ・た…」


 今度は溶けてない。


 気が付かなかった。目の前に現れた化物… いやミルの姿をした何かに。


「マ… サト」


 思考が止めどなく流れ動きを止めた。


 頭が真っ白になると同時に一つの仮説… いや、ソレを見た事で脳から受信した嫌な予感から来る一つの事実に僕の考えを導きだした。


 何となく、ただ今までの僕が知る経緯からもっともあり得てはいけない事だ。


 (ミルに何かあった…)


 その"言葉"が脳の処理を詰まらせ体を止めた。


「ミルに… まさか!」


「ココにイタンダ… やっと見つけた。マサ、ト…」


 とても饒舌で声もミル。僕はそれをよく知っている...。

 だから分かる、これはミルではないと。


 ミルが僕の目の前でこんな笑って今。現れるわけが無い。


 夢か? いや、現実だ。足の痛みが現実だと教えてくれた。


 シルバーさんには目もくれず僕に一直線に飛びかかるミルの体には痛々しい穴が空いていた。


 穴から血が動く度に吹き出し、ミルの口からも垂れていた。


「ミ、ル…?」


 反射的に名前を呼ぶ僕。


 僕は動くことが出来なかった。


 出きるわけがない、ミルを目の前にして… 今の僕が動けるわけがない。


 体は反射的に、受け止め抱き締められるように広げていた。


広げた手は閉じることはなく、体に触れた瞬間改めて感じた。本体ではないと。


 ミルは僕を抱き締める。愛おしいものを包む様に優しく…。


「…ごめんなさい。私はお前を… 眷属にして… ごめんなさい…」「ごめんなさい...」「許さないで…」「探さないで… 私から逃げて」


 そう言い塵となり消える。 

 

 なぜそれを今伝えたの…。その為だけに来たの?。


 分からない… 何が言いたかったのかミルが僕に何を伝えたいのか分からなかった。


 どうやら、損傷激しく消えたらしい。


 だけど... 僕の頭の中はずっとミル姿に焼き付けられた。


「チガウ、違う違う違う違う! ミルがそんなことをするはずがない…」


 正人は、血を流したシルバーに気づかないほど動揺していた。


「僕が助けなきゃ… 行かなきゃ… 何処に?」


 それは正人にとって僅かな希望を与え同時に自身の想定を越えた事に理解を出来てない事から来る動揺だった。


「…立て、一旦車に戻ってるぞ」


 シルバーさんが僕の腕を引き車に戻ると車を片手で起こし車内に僕事入る。


「生きてる… 良かった… 良かった… ごめんなさい...守ってあげられなくて。…ごめんなさい。ごめんなさい!」


 メリーさんが車の席に座っていた。正人とシルバーに気付き近づき正人をシルバーから受け取り椅子に座らせる。


「…マサトさん?」


「…ミル! 違う。ミルじゃない…」


「…やっぱり、来てたんですね。原初の使徒(分身体)が…」


「メリーさん。何処に行けばミルに会えますか…」


「…。行けば眷属である貴方でも確実に殺されますよ」


「…え。どうしてだよ。まさか! あのゼルって言う名の吸血鬼がまた!」


 ガタリと正人は椅子から勢い良く立ち上がる。その様子にメリーさんはビクリと驚く。


「…違います。貴方は、原初本人に... 殺されます」


「…嘘だ。ミルが僕を? 冗談言ってる暇は無いんだよメリーさん! 何処にミル居るか教えてよ! 早く、助けに行かなくちゃいけないんだろ!」


 正人はメリーさんの正面に立ち肩を掴みながらしゃがみ怒鳴る。


 正人は正気ではいられなかった。整理するほど溢れる記憶が感情を上下させた。


「落ち着け、お前に何が出来た。周りが見えてない今のお前じゃ石に躓いただけで死ぬぞ…」


 そう言い終えると、シルバーは自身の頭を正人の頭に頭突きする。


 正人は痛みと頭に来る振動に立ってられず尻餅を着くかと思ったが… メリーさんが受け止め腫れた頭を見てアワアワとする。


「あ…。ありが、とう…。あ、あの。ごめん…こんな形で謝るとか凄くメリーさんに対して失礼だけど謝らせてほしい。色々焦って言い過ぎて...ごめんなさい!」


「いえ謝る必要は...」


「凄く勝手な謝罪で...ホントごめん。今度もっとちゃんとした形で謝られせてほしい。僕の立場だと…観光とかは無理だけど…皆で買えったら必ず言葉だけじゃない心からの謝罪をさせてほしい」


「…良いんです。私は貴方を護るのが役目なのに… 先程は、動けず待つだけの置物でした。今もマサトさんを護るために本体との接触を避けたいという私の我が儘で動いています」


「一つ聞いて良い? どうして、ミルは僕を殺そうとするの…」


「…すみません。それは教えることは出来ません。話したとしても...マサトさんでも本体の考えに納得が出来ない。本体は今、とても不安定な存在へと変わろうとしています。この星を飲み込み一つとなり消えるほどの闇を広げながら…」


「…確かに、何一つ分からない事だらけだ僕には、何一つ確かめようとしなかった」


 会えた嬉しさ、何か掴めた嬉しさ、僕を遠ざける寂しさ、理由が分からない言葉。


 それらが正人の心を上下左右に揺らしていた。


 椅子に座り、気持ちに一息を入れる。


 何一つ休まらない。けど今は…。

 

 軽く深呼吸をしていると、鼻に嗅ぎなれた鉄の匂いが鼻に入る。


「あ… け… 怪我してるんですかシルバーさん…」


 血の匂いから察する、自身の怪我はほぼ完治しているのにシルバーの方から血の匂いがした。


 正人はこの時、気がついた。無数に引き裂かれたような傷が全身にある座席に座り血を流したシルバーに。


「どうせ直ぐに治る。お前も知っているはずだろ? 吸血鬼の再生能力…」


「…そう、でしたね… すみません。僕はまたシルバーさんに嫌われるような事を…」


 話す気は無かった。


 けど、何か他の事を考えたい。押し潰すようなこの心のヘドロを流せるほどの他の話題がほしい。


 苦しい… とても嫌な息苦しさだ。僕はミルの事で酷く動揺している。


 当たり前だ。そうなって… 当然だ。


 僕はミルを…。


「…原初はお前を探しているらしい。襲われた後もずっとうわ言の様にお前の名前を言っていたぞ…」


「…! そうなんですか…」


「…。死ぬならヤツの弱点でも今のうち話して死ね」


 僕の目を見て突き放すような喋りのシルバーさん。


「お前は眷属としてアイツの元に向かいたいらしいが… 向かう気なら殺す。お前が行けばより厄介になる… そんな気がして止まない」


「…なんですか。僕を厄介者と言いたいのですか…」


「元からそうだろ。お前は感謝や恩返しと言っていたが… 本当は、寄りかかる相手が欲しいだけだろ。一人で立てない厄介者… 偽者にビビる臆病なヤツだろうが」


「…分かっていますよ。僕がどれだけ弱いか僕が一番… 人間よりも死ににくいだけで吸血鬼相手には簡単に殺されてしまう一人じゃなにも出来ない… ただの痩せ我慢だって…!。だからなんですか… 人を助けちゃダメなんですか… 吸血鬼人じゃないって言うんですか…。よく知らない僕じゃ… ルーナ達や… ミルを助けちゃダメなんですか…」


「お前… 弱さに逃げてないか…。弱いから助けてと言わない。弱いから助けられて当たり前… ただ待って与えられる時を上を見て笑って待つ卑怯なヤツにしか… お前の話を聞いてから思った。俺にはお前がとても人を助けられるヤツには見えない」


「…それは、あなたの妄想です。僕の事が嫌いだからそう思いたいだけの…」


「そうかもしれない…。お前やお前の主である原初が嫌いな俺の… 妄想だ。だが、そう思うほど俺はお前ら原初が嫌いだ。どうしようもない、今にもナイフを投げるよりも早くお前の心臓をこの手で潰したいほどに... 嫌いなんだよ俺はお前の事が」


「…殺しますか、僕を… さっきみたいに寝ている間に…」


「…はぁ、なんだよ分かっているなら黙って死ね。喉を潰す前に舌を切るぞ…」


 シルバーさんはポケットからタバコを取り出し1本取り出し火をつけ吸う。


 車内はたちまち煙たくなる。


「…殺したいさ。今すぐにでも。だが、お前のガーディアンが邪魔するだろうがな… さすがに今の傷を治すのに血を使い過ぎて… お前一人なら殺せるが、殺す前に殺されて終わりだ…」


「…安心してください。メリーさんはもう二度とあなたを殺そうとしないはずです…。今は… また寝ていますが… たぶん、約束しましたから半殺しぐらいで止めるかもしれません…」


 隣で眠るメリーさんの頭が腕に当たる。


「…俺はお前を本気で殺したいと思っている。それが一番の最善だと信じいる。だが、なぜ俺はお前を殺せない…なぜだ。教えてくれ…」


「そんなこと僕に分かるわけがないでしょう。あなたが僕を殺したい理由が僕に…」


「俺もお前が何がしたいか分からない。だから今知ろうとしている所だ…。監視とは言ったが、本当はお前を殺すか迷っている。俺の判断は常に正しいのか… 原初に助けられた時から思うなぜ俺は殺されなかった、なぜ助けたのか… お前を通してなら分かる気がして命令があるからではあるが… 止める者もいない場合お前を殺せたが今も生かしている。なあ? 何で殺せない… 教えてくれ」


 前とは違い、冷静な目で僕を見てくるシルバーさん。

 そんなことを僕に聞かれても分かるはずか無い。本気で誰かを殺したいと思ったことなんて… 僕には無い。


「…知りません」


「…そうか」


 案外あっさりとした返しだった。怒って殴られると思ったけど…。


 意外な事が案外正常を取り戻せた。シルバーさんの本音なのか… その会話が気が逸れたからか先程よりも落ち着けた。


 まだ心残りはあるけど… それは本人を目の前にするまでだろう。


 とても怖い、会いたいのに会いたくない。矛盾して頭が痛い。

 それが悪い方向に進んでいるのではとまた不安にもなるが…。


 だからって… 何も知らないで終わりたくない。僕が出来ることをやって死のう。


 本当に、殺されてしまうのか僕は。


 ミルに殺されてしまうのだろうか…。


 爆発音はまだ遠くで聞こえるが、車内は落ちつきながらも緊張感ある空気が流れる。


 ミルを近くに感じる。


 最後の言葉から察せる事は少ないけど、それだけで十分に分かった。


 ただ遠い。矛盾だが、遠い。僕の手の届かない所に居るのは確かだと…分かった。


 僕はまだ知らない。ミルが僕の事を腹の底ではどう思っていたのか、話してほしい。無理にとは言わない… 知っておきたい僕の我が儘だが、助けるついでに…聞いておきたいことだ。 

 最後まで読んでいただきありがとうございます。


 ゆっくりと進んでいるからか書いている内にむず痒くなります。


 早く派手なシーンに移りたいのですが、下手ながらも良いものを書きたいなと思っています。


 感想お待ちしております。


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