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第六十六話 名無しの猟犬

シル・バレット回想。


 シル・バレット。


 元の名は忘れ、もう記憶の隅にもない。


 名がないのは可哀想だと、シルお嬢様が付けてくれた名が愛称シルバーとお嬢様自身の名と第一印象が銃弾からなのかシル・バレット。


 最初は… 「はぁ?」と思ったが。


 兵器として… お嬢様自身を殺していたかもしれない相手に、情けで付けてくれたとしても... 胸が暖かくなる感覚は今でも思い出す。


 生き残った… 俺達に生きる意味をくれた社長には… 頭が一生上がらない。


 元々殺す予定の相手に思うことではない…。 


 47番。それが俺が覚えている一番古い名前。


 古すぎて… 思い出したくもないとある男との人体改造の日々。


 傷が癒えて時間もだいぶ経ったが時々夢に見るほどの原初との出会いに比べればマシに思える。


 幸か不幸か今では計れないが、こうして今も長生き出来ているのは… まぁ… 良かったと思える。

 

 あの最悪な男の最後に原初と言う吸血鬼の化物に会ったことに比べたら… 今がどれほど幸福か余計に身に染みる。 

 

 毎日が死にたい、生きることを望めない日々を俺達に与え… 毎日誰か一人が必ず帰ってこない日々。


あの男は原初に強く執着していたが恐怖を与える男がどれほど執着しても手に入れられない完璧な生命力と恐怖すら感じるが散々見てきた目をしていた。


 とても疲れた目で男体から離れた首を持ち握りつぶす最後を夢に見る日が必ず月1で来る。


 あの目を俺はよく知っている。


 死ねない人間が絶望してみせる目。


 何度も足掻いて諦めきれない生への渇望があっても... それから逃げる者の眼だ。


 死んでいた原初の目は最後まで死んでいた。テープが擦りきれるまで何度も夢で見て… 願望混じりで変わってしまっていたのかもしれないが… 泣いていた気もする。


 せめて、一つでも感情を見せてほしい俺の願望だったかもしれない涙を流していた気もする。


 知っている俺は、次は自分と… 思い喉を改造により強化された爪で切っても... 頭を壁に打ち付け潰しても... 何をしても死ねない人達を何度も、化物に変わる事の恐怖も… 死んでいった人達の顔も名前も... 最後はそれだけ残ったが… まだ覚えている。


 だから涙は願望だきっと少しだけ夢だから願望が混じっただけであの原初は仲間の原初を殺した本物の化物だ。


 時々現れては消える男になぜか協力していた原初と最後まで名も知れない男を殺し終えてか直ぐ消えて帰ったが俺は今でも思い出すことがあるほど恐怖で身動き出来なかった。


 首を見て恐怖したのではない、血の流れを感じられない化物が現れて数秒で何か男が落ち着いた様子で話していたが容赦なく殺したことに恐怖したのではない。


 血なんか今さら見飽きている、匂いも何度も嗅いだ…。


 あれだけ恐怖していた男があっさりと殺された事に安堵するよりも... 名も知らない原初に恐怖していた。


 次は自分だと思えたが、男の死体の横で立っていた別の原初を殺した。


「はぁはぁ――」荒くなる呼吸。


「死んだのか…?」


 ゆっくりとこちらに視線を移しこちらに歩みを進める原初。


 原初は帰る前に言った。


「首謀者は殺した… 後は好きに生きろ」


 言い終えると姿を消し死体が二つ残った。


 何を言っているのか理解出来ずにいると俺は傾く視界に気づいても遅く気を失い目が覚めると綺麗なベットの上ではなく... 簡易的に用意された布がしかれた地面に寝かされていた。


 生き残った仲間が俺を移動させて寝かせたと理解する。


 だけど... 足は動かなかった。


 起きあがることが出来ない。


 何が起こったか気持ちの整理に11年かかった。


 吸血鬼と俺らを戦わせて吸血鬼を殺そうしていた男の計画は… 一人の化物の出現により無駄に終わった。


 まだ協会が出来る前で… 魔力持ちの連中が魔術師と呼ばれる前だから… こういう人間も多かれ少なかれ居たと納得することにした。


 男にとって… 俺らは現代では魔術と呼ばれる" 魔力 "から生まれる奇跡を魔力を持たない人間にも使える様に改造するために魔術師よりも数の多い俺らを実験動物に使っていたのだろう。


 " 姿形は人間である必要がある "化物を殺す為に弱い人間を強くしている気でいたのだろう。


 頭を切られ潰され死んでしまったから分からないままだが。


 改造の際に体に切られることもあったが液体を体内に流した後はさらに重く永遠と思える苦痛だった…。


 どう拐ったのかは分からないが… 男が強く軽蔑する吸血鬼の親玉 "原初" を連れて現れた時は驚きはしなかった。


 怪物であると知らないのもあったが、何も感じられないかった。


 原初は聞いていた吸血鬼との話とは結び付くことはないほど大人しく... 化物と言うには華奢な体と幼い子供の姿をしていた。


「初めまして」と礼儀正しく挨拶をしてきた時は何かの冗談なのかと…。


 性別不明な子供姿で現れた。


「はじめまして、私の眷属と殺し合いをしてくれる人間さん達?」


 何を言っているのか分からなかった。


「私はね、とても楽しみにしています! だから… 今日は楽しみすぎて見に来ました」


 周りはそれに驚くものもいたが、男は... ニタニタと笑いいつもと変わらず番号を呼んでは部屋に呼ぶ。


「私は運が良い…。いや、神が私に力を貸してくださっている! 例え悪魔と言えど… その力は人間にも使えると思わないか47番?」


「…早く終わらせてくれ」


 心構えは既に済んでいるため、早く終わることを願った。


 新鮮な血だと… 男は赤い血が入った注射器を刺し体内に流される。流された血は苦痛以外何も感じられないほどだった。


「まさか、悪魔の方から協力をしてくれるとは… フフフ。おぉ神よ、ありがとうございます! 私はあなた様に感謝します。これで人間の限界を超えたハイヒューマンが創れる…。あぁ慈悲深き神の心を少しでも愚かな悪魔どもにも分け与えたいものです…」


 祈る様な目で俺を見ていた、苦しみに耐える俺を他所に他の事を考えている目で... 神様と、うわ言のように言い付ける。


原初(あくま)の血は悪魔を産む…。だが… サンプルさえ取ればフフフ… 後は神に授けられし我が力で悪魔の力のみ抽出すれば良い… 体内の血が乾くまで続く再生と血を武器にして戦う人間にはない力をおまえ達に授けよう…。喜べ老いることも朽ちることもない…食事は血では無く肉も木の実も食える様に出来る我が力の偉大さに歓喜して戦え!」


 肉体強化は戦士を創るためではなく... 体内に原初の血を流し耐えさせる為の改造だと知った。


 初めは、200近くいた人間も... 改造により半分になり、原初の血を体内に流したことで…残り20人になった。


 そして、戦いは始まった。


 負けもない勝利もない。世界一無駄な戦いは男の連れた原初と違い、新たな原初の登場により一瞬で終えた。


 長かったような短かったような…毎日同じことの連続で記憶に留まらない戦いはあっさりと終わった。


 だが…原初の別次元の強さは記憶から消えることは今後一生無い。


 その後、居場所も生き方も分からず、何のために戦っていたのかすら分からない吸血鬼との戦いで...数は減ったが生き残りの隊長含めて俺らを、社長は吸血鬼だったが迎え入れてくれたことにはもちろん感謝している。


 だから…許せなかった。


 後悔が肌に付く様に、熱を持ち自身への怒りが沸き立つ。


 どうして…あの日、シルお嬢様達の初めてのお使い達成記念パーティー中に俺は目を一瞬でも離してしまった…。

 渡したお金を目的の物と別の物を買ったルナお嬢様と違い偉業成したシルお嬢様のパーティーで嬉しさのあまり隙を作ってしまったのだと思う。


 隊長や社長は俺を責めてはこない…。その優しさなのか、ただ社長のいつもの娘を信じる気持ちからなのか… 分からないが、俺は顔が無くなるくらい殴られ腹に穴が空いても良いから。


 俺を… 責めてほしかった。


 そんな時に、社長から居場所が分かったと言われ… 隊長に言われて部屋で休暇をとっていたが、飛ぶ勢いで着替え、社長のいる部屋に向かった。


 部屋の扉を開けると、そこには俺の元隊長であるロウがいた。服装こそいつもと変わらず綺麗なままだが、以前より髪の量が減った様に感じる。


 娘として育てたルナお嬢様の事を心配しての事だろう。


「ゴホン… 休暇の者もいたが、良く来てくれた!」


 社長は、笑顔だったが、ロウ元隊長は落ち着かない様子だ。


「いえ! 我々は社長達のためにこの命を尽くすと誓いました! 休んでいる暇など我々にはありません…!」


「シルバー… 私の娘を頼んだ」


 うつむき、目を合わせる余裕がないほど掠れ小さく聞こえたロウ元隊長の声。


「…私の娘は優秀だが、まだ少し経験の浅い子供だ。扱いには十分気を付けてくれ」


 逆に社長の声はいつもと変わらず、娘を信じる気持ちからなのか自信に満ちているように感じる。


「はい、必ずここにいる全員で、何があろうと必ずシルお嬢様達を無傷で連れて帰ると… シルお嬢様が付けてくれたこの名に懸けて誓います!」


 準備などで色々とあったが、目立つため飛行等では行かず近くまで船で向かい途中で船を降り海を泳ぎ指示された場所に向かった。


 指示されたそこは、以前から協会の所有地であり… 協会が関わっているとその時は思ったが… 後からお嬢様達から聞いた話で違う事が分った。


 邪魔者がいたが、無事お嬢様達を連れて帰えることに成功した俺達は直ぐ様二人をベットに寝かせ起きるのを待った。 


 そして、お嬢様達は無事何事もなく目を覚ました。


 お嬢様達が目を覚まし後に報告で聞いた時は、驚きのあまり椅子から落ちてしまったが…。


 500年姿を見せなかったあの日最後の吸血鬼との戦いで見た原初が再び世に現れたと渡れた報告書で読んだ時は再度驚いて渇き笑いと瞬きを忘れて報告書の文字を何度も何度も一文字一文字読んで… 脳に情報をいれようとした。


 だが、俺の脳はそれを拒否するように、頭痛と鼻血を出して俺は倒れた。


 拐われ…無事協会の研究所から連れて帰ってきたと思ったが… まただ。


 また、原初が何か関わっている。


 お嬢様達のご親友兼、ルナお嬢様の婚約者(仮)のあの眷属… 社長からの命令さえ無ければ殺していたかもしれない。


 分かっている、これは俺が至らない事から来た心のただの八つ当たりだ。だが、原初の眷属であるあの気持ちの悪い男タナカ・マサト。


 原初と繋がりがあるアイツは… 気に食わない、原初からあの原初に良く似た生き人形まで貰って俺を殺しに来る。


 弱いと分かるほど吸血鬼の血の匂いも気配も無いヤツが知らん顔で俺を殺しに来る...。


 クソ…。


 なぜ… 原初が今になって世に出る…。世に出たことでお嬢様達が危険な目に会うと言うのに…。


 あの、眷属だけでも殺しておきたい。


 原初は…吸血鬼以上に化物で原初に心など無い。


 500年前から眷属を連れず、眷属を作ることを避けていたあの化物が眷属を作るほど原初は何を考えいる。


 500年前、両陣営の大将を殺して終わらせた… 金と銀の光を纏う原初により俺の意味の無い戦いは終わった。


 だが… 俺は知った、この世には吸血鬼以上に恐ろしい者がいる。戦いですらない残虐さと苛烈さで蹂躙する化物がいると…。


 吸血鬼の血の吸う行為に嫌悪してた自身の脳が新しく作り替えられるような新鮮さと戦場に現れてものの数秒で死体を吹き飛ばし大将の首を引きちぎり返り血を浴びる少女の姿が狂わせる。


 トラウマなんだろう。原初の血の匂いを覚え、姿を絵に描けと言われれば寸分違わず描けるほどに覚えた俺にとって原初ほど近づきたくない化物はいない。


 おかげで原初以外で怖がる事は無くなった。


 怖いから、近づけたくない、お嬢様達を不幸にはさせたくない。


 恩義から、誠心誠意十四年間守ってきた。


 時が経てば愛に変わり、家族の様に愛していると伝えは出来ないが、そう思っている。


 自ら原初に近づくと言うのなら私は、命令があろうと… お嬢様達を今度こそ必ず守りきる。


 必要なら、命に変えても…。


 揺れる車の中でシル・バレットは牙を研ぐ様に離れた向かいの席に座る原初ミル眷属であるマサトを睨む。


 分かっている、恨む事は違うと… だが、原初に関わる全ての者がお嬢様達に近づく事は許せない。


 ――――――――――――――――――――――――


 マサトは視線に気づいていたが、怖さや先程のホテル内での兼もあり… 相手を刺激しないよう目を合わせることが出来なかった。


 なぜそこまで、恨むのか聞きたくはあった。


 が、しかし怖くて聞けなかった。


 揺れる車の中、七人と車の上に座るメリーさんを乗せた車は着々と目的地に向かっていた。


 車が走り、二時間ほど経つ。走り目的地に近づくに連れて胸の中でザワザワとくすぐられるような気分の悪さを感じる。


 同時に来る熱で乾いた地面に落ちる水のような乾いた悲しさからか胸をギュウっと締め付けられる。


 変な気ぶんだ。


 さっきまで睨まれて怖かったのに、段々と悲しくて痛くて… 嬉しい気持ちが同居している。


 " 怖い " はずなのに…どうしてだろう…。


 嬉しいって気持ちなのに悲しくなるんだろう。



「…大丈夫!?」


「…へ?」


 ルクリカが正人の目から流れる紅い血の涙に気づく。


「…目から、血が!?」


「…血? あ、ホントだ…」


 正人は腕で目を擦り、血の涙が服に付くがそれはパラパラと蒸発ではなく粉となり無に還る。


「血が…」


 正人は最初は自身の血であると一瞬忘れ改めて腕を見て思い出す自身の血であると。消える血を見て驚きはしたが心が空になるような気持ちになった。


「大丈夫マサトさん? 授業で目が乾燥しすぎた?」


「すみません、心配かけて。僕は平気なので続けてください…もっと学びたいんです吸血鬼の事…」


「本当に大丈夫っすか?」


 ルクリカの隣に座るロシュアンが心配そうに正人を見てくる。


「ハンカチいります?」


「ロシュアン、そこは目薬でしょ! 後輩なんだから気くらい使えるようになりなさい!」


「え! 目薬っすか? それなら確か…二番の胸のポッケに…」


 胸のポッケから目薬を取り出そうとするロシュアン。


「僕は本当に平気なので…」


「だめっす! 目は繊細なんですから... ちゃんと目薬を! はい、先輩! そこの男に目薬を!」


「ラジャー! 任せろ後輩! おとなしくしなさい」


 腕と肩を拘束され、正人に無理やり目薬をしようとするルクリカ。


「そんな、無理やりするなら自分で...!」


「…おとなしくしろ、目薬が狂うだろ?」


 一滴の目薬が目に落ちる。


「ぐっ!」


「はい、もう片方も…ね?」


「貸してください!」


 正人は腕の拘束を解き目薬を奪う。


「自分で、できますから...」


 そう言い、もう片方の目に目薬を落とし目薬をロシュアンに返す。


 車は目的地に向かい続ける。


 最後まで読んでいただきありがとうございます。


 まだまだ先は長い予定です。終わりばかり気にして道が出来てないので少しづつ作っていきます。


 やりたいようにこれからも書き続けます!。


 感想もお待ちしております。


 評価やブックマークも面白いと思っていただければよろしくお願いいたします。

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